少子高齢化や人口減少、過疎化、災害、ジェンダー平等、健康不安、共生社会の実現など、現代の日本は社会課題が山積しています。課題解決のため、まちづくり・地域活性化の必要性はさらに高まり、自治体のまちづくりは住環境の整備や交通インフラの改善、観光資源・自然景観の活用など多様化しています。
その中で、スポーツはどんな地域・社会課題を解決し、まちづくりを活性化できるのか?
笹川スポーツ財団は「スポーツによって長くアクティブに生きられる社会」の実現に向け、研究活動により得たエビデンスと仮説をもとに政策提言を行い、自治体や地域のスポーツ組織と共同でスポーツによるまちづくりを推進しています。スポーツがもたらす住民の“健幸”。スポーツの価値は計り知れません。自治体との共同事業、調査や首長対談などを通してのまちづくり事例を紹介します。
少子高齢化、人口減少で地域スポーツ振興の停滞が危惧される中、SSFは地域の既存スポーツ推進団体(体育協会、スポーツ推進委員など)を一元化することで、地域スポーツの課題「ヒト・モノ・カネ・情報」を集約し、地域スポーツを推進する「地域スポーツ運営組織(RSMO)」を提言しました。賛同いただいた角田市と2019年、かくだ版地域スポーツ運営組織「スポネットかくだ」を設立。「スポーツを通し明るく楽しく健康で活力あるまち(アクティブシティ)」の実現を目指します。
障害児・者のスポーツ機会を創出する共生のまちづくり/東京都障害者スポーツ協会
SSFは「障害者スポーツの日常化には、障害者専用スポーツ施設が拠点(ハブ)となり、近隣の公共スポーツ施設や地域のその他社会資源とのネットワーク化を進め、スポーツ参加の受け皿を増やすべき」と提唱してきました。東京都障害者スポーツ協会、江戸川区とともに、重度障害児を対象に施設ネットワーク化を社会実装するプログラムを実施。重度障害児のスポーツ機会は学校が中心でしたが、身近な場所でのスポーツ機会が増えることが期待されます。
官民連携・スポーツで地域課題を解決するアクティブなまちづくり/各自治体
アクティブシティ(AC)とは、『スポーツ・運動、健康づくり、まちづくりに関わる組織や人々が協働し、住民一人ひとりのウェルビーイングの向上を目指すとともに、スポーツの多様な価値を活用して地域の課題解決に取り組むまち』を意味します。自治体のスポーツ課題とまちづくりの課題の解決のため、「アクティブシティ推進プラットフォーム」「ACフェロー育成」「SSFアクティブチャレンジ」などの取り組みを進めてまいります。
スポーツコミッションによる地域活性化事例
地域スポーツ運営組織(RSMO)の母体組織や「ハイブリッド型事業体」になり得る組織として期待が高まるスポーツコミッションの整理を行いました。
▼由利本荘市スポーツ・ヘルスコミッション
VリーグやFリーグの公式戦を誘致に加え、大規模イベントや大会開催時の市特産品販売など地域活性化に努めています。またインターバル速歩を中心とした「健康の駅」事業など健康増進も推進。市民がスポーツに親しむ機会を増やし、ヘルスツーリズムの推進を図っています。
▼金沢文化スポーツコミッション
ユニークな取り組みとして「金沢市文化スポーツイベント誘致開催奨励金制度」があり、イベント誘致・開催を促進するために、地元団体には奨励金、主催団体には補助金を交付する制度で「第69回全日本弓道遠的選手権大会」で初活用。オープニングセレモニーで金沢の伝統芸能を披露したり、参加者の交流を図りました。
母親に頼らない、子どものスポーツを地域でサポート
笹川スポーツ財団では「小学生のスポーツ活動における保護者の関与・負担感に関する調査研究」を行い、子どものスポーツ活動で母親の負担が大きい構造であることなど、さまざまな課題を明らかにしてきました。少子化や家族のあり方の多様化が進む今、どのような家庭の子どもでもスポーツを楽しめる環境、サポート体制が求められ、子どものスポーツ離れを防ぐ社会づくりが重要です。
スポーツを通じた理想のまちづくり、スポーツの力で日本を元気に。住民の暮らしより良いものにするために、さまざまな取り組みを実践している全国の自治体首長や民間組織のリーダーと対談しています。