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「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。

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日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。

豊かで快適な「環境未来都市」 富山県富山市 前半

豊かで快適な「環境未来都市」 富山県富山市 コンパクトなまちづくりと斬新なアイデアで世代を超えたスポーツ振興を

2011年12月、富山市は“環境や超高齢化等に対応した新たなまちづくり”の実現に向け、国が指定する「環境未来都市」の一つに選定された。また、同年6月には生涯スポーツ社会の実現を目指す「富山市スポーツプラン」を策定。まちづくりから市民の健康づくりを推進し、生涯にわたって誰もがスポーツに親しむことができる、豊かな社会の実現を目指している。

富山県富山市のHPへ

市民のための環境整備

豊かなまちづくりを目指す

森雅志市長

渡邉 富山市は、平成20年に「環境モデル都市」、平成23年12月には「環境未来都市」に選定されました。
積極的なまちづくりに取り組んでいらっしゃいますね。

森 富山市では30年、40年後の変化を見据え、時代に評価されるようなまちづくりを目指しています。基本的には、まず公共交通の利便性を高めること、さらに拠点集中で中心部の魅力を高めることに重点を置き、まちづくりを進めています。

渡邉 そうしたまちづくりを目指す背景をお聞かせください。

森 地方都市は、これまで車に特化した社会を形成してきました。しかし、今後は急速に高齢化が進み、車型の社会では立ち行かなくなります。だからこそ、ヨーロッパの都市にみられるように、ライトレール(路面電車)や自転車の市民共同利用といった公共交通の充実を図り、車に頼れない人々も“歩いて快適に暮らすことができる都市空間”を整備することが重要だと考えています。

富山市環境モデル都市行動計画富山市環境未来都市計画

渡邉 高齢者にとっても暮らしやすいまちにしようと。

森 移動手段がないと、高齢者はどうしても引きこもりがちになり、足腰が弱くなったり、寝たきりになったりと、健康や生活の質にも大きく影響してしまいます。そこで、公共交通をより使いやすくし、中心部が賑わうコンパクトなまちをつくることで、どんどん外に出かけてもらいたいと考えています。

渡邉 健康長寿をサポートする。これからのまちづくりに必要な考え方だと思います。

森 また、中心部に活気がある都市空間は、若い世代にとっても魅力となります。そうすると、もう一つ大切なことは“スマートで文化性の高い”豊かな生活ができることなんですね。そこで、質の良いライフスタイルを実現できるよう、さまざまな取り組みを行っています。
例えば、街灯にハンギングフラワーを飾る、花束を持って電車に乗ると運賃が無料になる、コンサートの幕間にワインを提供する、そんなヨーロッパの都市を感じさせるような取り組みを多面的に行っています。こうした取り組みがまちのプロモーションにつながり、若者から高齢者まで、みんなが住みたくなる、訪れたくなる、そんなまちになればと考えています。

渡邉 時代の変化に合わせ、人の暮らしを豊かにするまちづくり。数十年後のまちの姿もまた、楽しみです。

地域密着型のスポーツ振興で、生涯スポーツを推進

渡邉 富山市は、市民のスポーツの振興も盛んですね。

森 富山市の大きな特長は、地域に密着した体育協会が熱心に活動していることにあります。
こうした地域の体育協会が市内にある21のスポーツクラブを担っていることもあり、競技選手ばかりでなく、市民全体がスポーツに参加する環境が自然にできているのだと思います。

渡邉 市民のスポーツ参加を促す、望ましい風土があるのですね。
スポーツの振興組織という点では、富山市では、当初は教育委員会にあったスポーツ課を市長部局(市民生活部)に移されました。これには、どういったお考えがあるのでしょうか。

森 教育委員会が所管していると、どうしても“学校でのスポーツ”という視点が強くなってしまいます。市民のスポーツ振興を目指すためには、学校だけでなく、地域活動や生涯学習といった要素も必要となるんですね。そうすると、やはり市長部局の方が地域に入っていきやすく事業の推進に適していると考え、こちらに移したという経緯があります。

渡邉 実際に移されて、現状はいかがでしょうか。

森 世代を超え、地域に根ざしたスポーツ振興を図るためには、これは良い判断だったと感じています。教育委員会ですと、スポーツを教育の一環として捉え、競技スポーツに比重を置きがちになります。生涯スポーツの振興や、高齢者が気軽に参加できるような運動を広めていくには、市長部局に移した方が断然スムーズです。競技スポーツの強化については、もともと各競技団体が主体となっていたので、スポーツ課が教育委員会であろうと市長部局であろうとあまり影響はありません。

渡邉 現在は、富山市と同様にスポーツを教育委員会から切り離し、観光や文化と合わせて部署を設置する地方自治体も増えつつあります。そういった意味では、市長部局への移行は、地域密着型のスポーツ振興という富山市の特性に適しているようですね。

森 地域の声をスピーディーに吸い上げることができる点も、大きなメリットです。富山市では、町内会の上に、さらに大きい組織として自治振興会があります。小学校区単位ごとの組織で、ゴミ収集ステーションの設置場所やスクールゾーンに関する決めごと、防犯活動などを取り仕切っています。スポーツ課が市長部局に入ったことで、自治振興会が清掃活動などと同じようにスポーツ活動を地域に取り入れることができます。

地域資源を活用し、市民が楽しむ多彩なスポーツイベントを

旧立山道ウオークウオーキングイベント

渡邉 市長ご自身には、どのようなスポーツ経験があるのでしょうか。

森 子どものころは運動音痴だと思っていて、あまりスポーツに熱心ではありませんでしたが、この年になっていろいろなスポーツを始め、今では登山やヨット、乗馬などを楽しんでいます。

渡邉 大人になって自由にスポーツを楽しむ。まさに生涯スポーツですね。

森 登山というと、富山市にはユニークな登山イベントがあることをご存知でしょうか。
市役所から立山頂上まで、2泊3日かけて歩く年に一度のイベントで、市の内外から毎年70名もの人が参加してくれます。

渡邉 富山市ならではの企画ですね。地域資源を良い形でスポーツ振興につなげていると思います。

森 この地域では、昔から「立山に登って初めて一人前の越中男児」と言われています。こうした文化を伝承する意味でも、参加する中学生にとっては大変良い経験になるのではないかと感じています。

渡邉 資料を拝見しましたが、富山市では登山だけでなく、ウオークラリーや「プラス1,000歩富山市民運動」など、市民が身近に楽しめるスポーツにも力を入れていらっしゃるようですね。

森 ウオーキングは年に9回ほど、四季折々に市内の身近な名所を楽しむウオーキングイベントを開催しています。春には桜を眺めながら、夏には水辺で涼みながら、といった魅力あるコース設定で、子どもから高齢者まで毎回多くの市民参加があります。また、これらのウオーキングをつなぐ「ウオークラリーとやま」というイベントもあり、9回のウオークのうち5回以上の参加でウオーキンググッズをプレゼントしています。こうした仕掛けが、多くの方の継続的な参加につながっているのではないかと考えています。

渡邉 ただ歩くことを推奨するのではなく、楽しみながらのイベントとして提案することで、参加のモチベーションも自然と上がるのではないでしょうか。

富山市健康プラン21

森 そうですね。市内には各地域にさまざまな見所があるので、そういった身近なスポットを再発見できるイベントとしても楽しんでいただいています。ウオーキングのコースや見所がわかる「ウオーキングマップin Toyama City」なども用意して、イベント開催時だけでなく、いつでも楽しみながら身体を動かすことができるよう工夫をしています。

渡邉 もう一つのウオーキング「プラス1,000歩富山市民運動」とはどういったものなのでしょう。

森 これは、市民の健康づくりを目指す「富山市健康プラン21」の一環で、日常の“歩く”をちょっと意識して増やすことで、健康づくりに役立つ身近なスポーツにしようという試みです。効果的で安全な歩き方を学ぶウオーキング講座や、チャレンジ申請をして1,000歩を目指す「プラス1,000歩チャレンジ」などを実施し、家族や友人と楽しみながら参加できる仕組みづくりを心がけています。

渡邉 誰もが無理なくできるウオーキングを日頃の生活から取り入れようという試みは、継続的なスポーツ参加につながると思います。特別なイベントはもちろん、こうした提案も大切ですね。

スポーツによるまちづくり