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「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。

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日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。

子ども・青少年のスポーツライフ・データ 2023

中高生の健康・活動ニーズから考える運動部活動の地域移行/メンタルヘルスなど
子ども・青少年のスポーツライフ・データ2023

 笹川スポーツ財団は、2年ごとにわが国の幼児から青少年までのスポーツの「実施頻度」や「実施時間」、「運動強度」などを調査し、現状を明らかにしてきました。

 本調査は、4~11歳(標本数:2,400人)と12~21歳(標本数:3,000人)の幼児から大学生・勤労者年代を対象とし、全国225地点より年齢別の人口構成比に近似するようサンプルを抽出しています(層化二段無作為抽出法)。調査では、調査員が各世帯を訪問し調査票を配布後、再度訪問し調査票を回収する「訪問留置法による質問紙調査(4~11歳では個別聴取法も併用)」を実施しています。

 最新の調査結果「子ども・青少年のスポーツライフ・データ 2023」(調査時期:2023年6月24日~7月21日)を、2024年3月29日に刊行いたしました(amazonブックストアなどで発売中)。「子ども・青少年のスポーツライフと健康」をテーマに、4~21歳の運動・スポーツの実施状況やメンタルヘルスのほか、取り組みが進む「運動部活動の地域移行」に関して、運動部活動の活動実態、生徒の健康認識や生活習慣などから地域移行のあり方を検討しています。

 今回の調査は新型コロナが5類に移行した後の2023年6~7月に実施された。コロナ禍を経て変化した子ども・青少年のスポーツライフや健康・生活習慣に加え、地域移行が進む運動部活動の活動実態を詳細に示すデータとなった。

 運動・スポーツの実施状況は、子ども・青少年ともに多少の増減はあったものの大きな変動はみられなかった。一方、種目別の実施率ではコロナ禍の影響による増減が確認され、青少年のスポーツ観戦率やスポーツボランティア実施率にも同様の傾向がみられた。また、運動部活動の活動状況においては、コロナ禍による活動制限が緩和された様子もうかがえるが、2017年からは減少傾向が続く。しかし、活動日数や時間は生徒の希望よりも多い状態であり、地域連携・地域移行を進めるうえで生徒のニーズを踏まえた取り組みが重要になるだろう。

 高頻度・高強度で運動・スポーツを実施する青少年ほど健康状態や生活習慣が良好であり、運動・スポーツを含む身体活動や睡眠などの生活行動の改善はメンタルヘルスの向上につながる。子ども・青少年の心身の健康維持・増進や生活習慣を整えることに対する運動・スポーツへの期待は大きい。子どもを取り巻く社会状況が変化する中、子ども・青少年が継続的に運動・スポーツに取り組める環境の整備が求められる。

【笹川スポーツ財団 スポーツ政策研究所 政策オフィサー 鈴木 貴大


主な調査結果 詳細

運動・スポーツ実施状況

■4~11歳:全体では大きな変化はみられなかったものの、高頻度群は微減 、低頻度群が微増の傾向

 4~11歳の運動・スポーツ実施頻度群の年次推移をみると、2023年調査の全体では「高頻度群」が43. 3% と最も高く、いずれの頻度群においても2019年調査から大きな変化はみられなかった。性別では女子の「非実施群」が3.5%(前回調査より1.1ポイント増加)、「低頻度群」が20.8%(前回調査より1.6ポイント増加)、高頻度群が39.4%(前回調査より5.1ポイント減少)となっている。

※非実施群「過去1年間にまったく運動・スポーツをしなかった」/低頻度群「運動頻度が年1回以上週3回未満」/中頻度群「運動頻度が週3回以上週7回未満」/高頻度群「運動頻度が週7回以上」

■過去1年間に「よく行った」運動・スポーツ種目は、水泳が2021年から4.1ポイント増加

 4~11歳の過去1年間に「よく行った」運動・スポーツ種目上位10種目である。「おにごっこ」が57. 2%で最も高く、「ドッジボール」32. 0%、「水泳(スイミング)」31. 4%であった。「水泳(スイミング)」の実施率は2021年から4. 1ポイント増加した。コロナ禍が落ち着き施設や用具を利用する種目への制限が緩和され、実施率が増えた種目がある一方、「なわとび(長なわとびを含む)」など、実施率が減少した種目も確認される。

【図表2】過去1年間に「よく行った」運動・スポーツ種目の年次推移(複数回答)

4~11歳
2019年(n=1,491) 2021年(n=1,449) 2023年(n=1,304)
順位 実施種目 実施率
(%)
順位 実施種目 実施率
(%)
順位 実施種目 実施率
(%)
1 おにごっこ 52.6 1 おにごっこ 57.3 1 おにごっこ 57.2
2 水泳(スイミング) 34.1 2 自転車あそび 30.3 2 ドッジボール 32.0
3 ドッジボール 29.0 3 なわとび(長なわとびを含む) 30.2 3 水泳(スイミング) 31.4
4 自転車あそび 27.6 4 ドッジボール 29.2 4 自転車あそび 29.4
5 サッカー 26.0 5 水泳(スイミング) 27.3 5 ぶらんこ 28.9
6 ぶらんこ 25.7 6 ぶらんこ 26.8 6 サッカー 25.4
7 なわとび(長なわとびを含む) 24.4 7 サッカー 22.5 なわとび(長なわとびを含む) 25.4
8 かけっこ 17.9 8 鉄棒 21.3 8 かくれんぼ 17.9
9 かくれんぼ 17.2 9 かくれんぼ 19.8 9 鉄棒 17.2
10 鉄棒 17.0 10 かけっこ 17.1 10 かけっこ 14.2

資料:笹川スポーツ財団「4~11歳のスポーツライフに関する調査」2023( P.66【表1-8】)

 

 

■12~21歳:2019年以降レベル4 の割合は減少傾向

 運動・スポーツ実施レベルの年次推移を示した。全体をみると、2023年調査では「レベル0」20. 7%、「レベル1」16. 0%、「レベル2」22. 3%、「レベル3」21. 4%、「レベル4」19. 6%であった。2019年以降レベル4 の割合は減少傾向にあり、レベル2やレベル3 の割合が微増している。

※「レベル0」この1年間にまったく運動・スポーツを行わなかった/「レベル1」年1回以上週1回未満(年間1~51回)/「レベル2」週1回以上5回未満(年間52~259回)/「レベル3」週5回以上(年間260回以上)/「レベル4」週5回以上、一日120分以上、運動強度「ややきつい」以上

健康・メンタルヘルス

■4~11歳の健康の自己評価:『健康状態はよい』85.6% ※2023年新調査項目

 4~11歳を対象に「あなたのいまの健康状態はいかがですか。」とたずねた。全体をみると「よい」69. 1%、「まあよい」16.5%、「ふつう」12.6%、「あまりよくない」1.9%で、「よくない」と回答した者はいなかった。「よい」と「まあよい」を合わせると(以下、『健康状態はよい』)、85.6%が自身の『健康状態はよい』と感じている。

 性別にみると「よい」は男子68.6%、女子69.6%であった。『健康状態はよい』の割合は男子85.4%、女子85.7%で、男女差はほとんどみられなかった。

■12~21歳の健康の自己評価:『健康である』76.8%

 12~21歳を対象に「あなたは、自分の健康についてどのように感じていますか。」とたずねた。全体をみると「とても健康であると思う」12.8%、「健康だと思う」64.0%、「あまり健康ではない」19.8%、「健康ではない」3.4%であった。「とても健康であると思う」と「健康だと思う」を合わせると76.8%が自身は『健康である』と感じていた。

 性別にみると「とても健康であると思う」は男子14.9%、女子10.7%であった。『健康である』の割合は男子77.8%、女子75.9%で、男女差はあまりみられなかった。

 

■青少年の生活行動とメンタルヘルスとの関連

 2016年にカナダは、子ども(5~17歳)における24時間行動ガイドラインを発表した(Tremblay et al., 2016)。子どもの健康状態を十分に把握するため、3つの生活行動「身体活動」「睡眠時間」「スクリーンタイム」の行動目標を組み込んだ。

身体活動: 1日60分以上の身体活動を5日以上で達成、5日未満で未達成
睡眠時間: 13歳以下は9~11時間、14歳~17歳は8~10時間、18歳以上は7~9時間で達成
スクリーンタイム:余暇時間における1週間平均の1日あたりの利用時間が2時間未満で達成

▼24時間行動ガイドラインの達成状況(3つの生活行動)とメンタルヘルスとの関連性を評価した。「すべて未達成」と比べ「いずれかひとつ達成する」ことはメンタルヘルスの向上につながり、複数の目標達成をすることでさらなる改善が見込めることが示唆された

▼中学校期、高校期の24時間行動ガイドライン達成状況をみると、いずれも「身体活動」の達成率が高い(中学校期:44.0%、高校期:39.3%)一方、「スクリーンタイム」の達成率は低い(中学校期:27.8%、高校期:19.7%)。「すべて未達成」は中学校期26.4%、高校期38.6%であった。中学校期・高校期は身体活動の達成率が最も高いため、最初のステップとして身体活動介入が効果的な可能性がある。学校期によって達成状況が異なるため、属性を考慮したうえで達成できそうな目標をひとつ決め実行することが、メンタルヘルス改善に向けて重要である。

【図表6】中学校期・高校期における24時間行動ガイドラインの達成状況

資料:笹川スポーツ財団「12~21歳のスポーツライフに関する調査」2023 (P.40【図C-4】より一部抜粋)

運動部活動

■運動部活動への加入率は、中学校期・高校期ともに減少傾向

 性別・学校期別の運動部活動への加入率を年次推移で示した。2015年からの推移をみると、中学校期、高校期の男女ともに運動部活動への加入率は減少傾向を示している。

 中学校期男子の加入率は、2015年から2021年にかけて70%台で推移してきたが、2023年は2021年から9. 9ポイント減少し64. 1%であった。女子の加入率は2015年に58. 4%であったが、徐々に減少し、2021年と2023年は49. 8%と50%を切った。

 高校期男子の加入率は、2017年に60. 7%と過去5回の調査で最も高い値を示したものの、2019年以降は減少を続け、2023年は52. 1%であった。女子は2015年から30%台で推移し、2021年に33. 5%と過去5回の調査で最も低い加入率を示した。

■運動部活動の地域移行に対する保護者の認知度は3割程度にとどまる

 12~21歳の回答者の保護者に対して「あなたは、今後、学校運動部活動を地域のスポーツクラブ等が担うようになることをご存じですか。」とたずねた。「内容までよく知っている」は中学校期5.3%、高校期3.7%。「内容までよく知っている」と「概要は知っている」を合わせた割合は中学校期37.2%、高校期31.2%であった。

■学校運動部活動の活動日数や時間は、生徒本人の希望より多い

 中学校期をみると、週あたりの活動日数の実際の活動状況(以下、実状)では「5日」が46.0%と最も高く、生徒本人の希望(以下、希望)も同様に「5日」が36.6%で最も高い。実状と希望の差をみると、「5日」は希望が9.4ポイント低いが、「6日」は4.3ポイント希望が高かった。土日の活動状況は実状も希望も「1日」の割合が最も高く70%を超える。実状と希望の差をみると、「0日」は希望が7.2ポイント高く、「2日」は希望が7.9ポイント低い。土日の活動状況は、今よりも活動日数を減らしたいと考える中学生が一定数いると推察できる。

 高校期では、週あたりの活動日数は「5日」が実状と希望ともに最も高く、それぞれ38.5%、35.6%であった。週あたりの活動日数の差をみると、「6日」は実状よりも希望が5.3ポイント、「7日」は5.5ポイント低かった。一方「3日」と「4日」は、いずれも希望が実状を上回り、高校期の週あたりの活動日数は実状が希望よりも多い傾向が確認できる。土日の活動状況は、「1日」の割合が最も高く、実状は53.4%、希望は61.6%であった。高校生の土日の活動日数は実状と希望に乖離がみられた。

 実際の活動状況と本人の希望との差は、中学校期、高校期ともに休日の活動状況において大きく、今よりも少ない日数や短い時間で活動したいという生徒の本音が垣間見えた。地域移行に向けた議論は、受け皿(管理団体・運営主体)や指導者の問題など、いわゆる枠組みの整備に関する内容が中心であり、生徒のニーズを取り入れる方策に係る議論は深くされてこなかったように思う。生徒自身が続けたいと思う運動部活動や地域クラブ活動の実現に向けて、生徒の運動部活動に対する志向や意識、ニーズをふまえた取り組みが求められる。

【図表9】運動部活動の実際の活動状況と本人の希望

図表9.運動部活動の実際の活動状況と本人の希望

資料:笹川スポーツ財団「12~21歳のスポーツライフに関する調査」2023(P.44【表D-1】より一部抜粋)

■運動・スポーツ実施と健康認識などのポジティブな関連は、運動・スポーツを行うクラブ等の場に関わりなく観察された

 中学校期と高校期の所属するスポーツクラブのタイプを4群に分類した。

学校部活動群:学校の運動部活動だけに所属(n=379)
学校外活動群:学校外のスポーツクラブ等だけに所属(n=73)
複合型活動群:学校部活動に加えて学校外のスポーツクラブ等にも所属(n=65)
無所属群:学校部活動にもその他のスポーツクラブ等にも所属しない(n=360)

 所属する中学校期・高校期の運動・スポーツクラブの4つのタイプと健康に関する項目とのクロス集計結果の一部を図表10に示した。運動不足感を「まったく感じない」や主観的健康感が「とても健康」の生徒の割合は、複合型活動群が最も高く、次いで学校外活動群、学校部活動群の順であったが、各群の間に健康に関する認識にそれほど深刻な違いは認められなかった。運動・スポーツ実施と健康認識などのポジティブな関連は、運動・スポーツを行うクラブ等の場に関わりなく観察された。学校内外にはかかわらず、クラブ等の場を準備することは中学生・高校生の健康との関わりからも重要なことだと思われ、部活動の地域移行によってそうした場が失われることは避けなければならない。

【図表10】所属するスポーツクラブのタイプと健康認識のクロス集計結果

所属するスポーツクラブのタイプと健康的生活習慣のクロス集計結果

資料:笹川スポーツ財団「12~21歳のスポーツライフに関する調査」2023(P.18【表1】より一部抜粋)

子ども・青少年のスポーツライフ・データ2023 調査概要

調査目的:本調査はわが国の子どもや青少年(4~21歳)の運動・スポーツ活動の実態を総合的に把握し、スポーツ・フォー・エブリワンの推進に役立つ基礎資料とすることを目的としている。

4~11歳のスポーツライフに関する調査 12~21歳のスポーツライフに関する調査
母集団 全国の市区町村に在住する4~11歳 全国の市区町村に在住する12~21歳
標本数 2,400人 3,000人
抽出方法 層化二段無作為抽出法
調査方法 訪問留置法による質問紙調査(4~11歳は個別聴取法併用)
調査時期 2023年6月24日~7月21日
有効回収数(率) 1,350(56. 3%) 1,495(49.8%)
主な調査項目 運動・スポーツ実施状況、運動・スポーツ施設、スポーツクラブ・運動部、習いごと、スポーツ観戦、スポーツボランティア、好きなスポーツ選手、健康認識・生活習慣、身体活動、個人属性 等

子ども・青少年のスポーツライフ・データ2023
4~21歳のスポーツライフに関する調査報告書

仕様
A4判(29.7x21.0)/220ページ
価格
定価4,180円(定価3,800円+税10%)
発売日
2024年3月29日
調査結果
1. 運動・スポーツ実施状況
2. スポーツ施設
3. スポーツクラブ・運動部
4. 運動・スポーツへの意識
5. スポーツ観戦
6. 好きなスポーツ選手
7. 習いごと
8. スポーツボランティア
9. 体格指数・健康認識
10. 身体活動・生活習慣
11. 家族と運動・スポーツ
販売
amazonブックストアkindle版など

SSFスポーツライフ調査委員会

委員長
高峰 修(明治大学 政治経済学部 教授)
委員
青野 博(公益財団法人 日本スポーツ協会 スポーツ科学研究室 室長代理)
大勝 志津穂(椙山女学園大学 人間関係学部 教授)
甲斐 裕子(公益財団法人 明治安田厚生事業団 体力医学研究所 副所長/上席研究員)
鎌田 真光(東京大学大学院 医学系研究科 講師)
城所 哲宏(日本体育大学 体育学部 准教授)
佐々木 玲子(慶應義塾大学 体育研究所 教授)
澤井 和彦(明治大学 商学部 准教授)
横田 匡俊(日本体育大学 スポーツマネジメント学部 教授)
吉田 智彦(笹川スポーツ財団 スポーツ政策研究所 シニア政策ディレクター)
(所属・肩書は刊行時)
笹川スポーツ財団
宮本 幸子(スポーツ政策研究所 政策ディレクター)
武長 理栄(同 シニア政策オフィサー)
松下 由季(同 シニア政策オフィサー)
水野 陽介(同 シニア政策オフィサー)
鈴木 貴大(同 政策オフィサー)
姜 泰安    (同 政策オフィサー)
データの使用申請

最新の調査をはじめ、過去のスポーツライフ・データのローデータ(クロス集計結果を含む)を提供しています。

活用例

  1. 政策立案:所属自治体と全国の比較や調査設計に活用(年齢や性別、地域ごとの特徴を把握)
  2. 研究:研究の導入部分の資料や仮説を立てる際に活用(現状の把握、問題提起、仮説、序論)
  3. ビジネス:商品企画や営業の場面で活用(市場調査、データの裏付け、潜在的なニーズの発見)
テーマ

スポーツライフ・データ

キーワード
年度

2023年度

担当研究者
共同研究者
  • 高峰 修 明治大学 政治経済学部 教授
  • 城所 哲宏 日本体育大学 体育学部 准教授