笹川スポーツ財団(SSF)では、2023年11月24日(金)~12月6日(水)に、「あなたが選ぶ!2023年スポーツ重大ニュース&活躍したアスリート」のWEBアンケートを実施しました。ご協力いただきまして、誠にありがとうございました。
新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行し、徐々にコロナ禍前の日常に戻りつつある2023年。スポーツ大会・イベントでも声出し応援が解禁されました。多くの世界大会、2024年パリオリンピック・パラリンピック予選大会が開催され、日本代表チーム、日本人選手の活躍に、興奮、感動した方も多いことでしょう。
アンケートの結果でも、世界フィギュアスケート選手権での日本人選手の金メダル獲得、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)での日本代表の優勝、バレーボール男子日本代表、バスケットボール男子日本代表のパリ2024大会の出場権獲得などのニュースが上位に入りました。また、活躍した選手ではメジャーリーグ・エンゼルスの大谷翔平が3年連続で1位となりました。
あなたが選ぶ 2023年 スポーツ重大ニュース 投票結果
2023年3月に開催された世界フィギュアスケート選手権。日本勢は、宇野昌磨(左から3人目)、坂本花織(左から4人目)、三浦璃来・木原龍一ペア(左から4、6番目)がそれぞれ優勝した。写真:大内翔太/フォート・キシモト
あなたが選ぶ 2023年 活躍したアスリート 投票結果
WBC日本代表の優勝に大きく貢献しMVPを獲得。MLBア・リーグではアジア出身選手としては初のホームラン王、そして史上初の満票で2回目のMVPを獲得した大谷翔平。写真:スポニチ/アフロ
ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で、日本代表・侍ジャパンが3大会ぶり3回目の優勝を果たす。写真:AP/アフロ
1. スポーツの力で希望の光が大きく
2020年、未曽有の危機、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックにより、行動制限、マスク着用など私たちの生活は一変した。しかし、2023年2月、政府は新型コロナウイルス感染対策のマスク着用について、3月13日から個人の判断に委ねる方針を決めた。3月末に開幕したプロ野球では、4年ぶりに声出し応援が解禁された。徐々にコロナ禍前の日常生活が戻り小さな希望の光が灯されるなか、スポーツの力でさらに光が大きくなる出来事が起こった。新型コロナウイルス感染症の影響で、開催が2年延期されていた第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で、日本代表・侍ジャパンが3大会ぶり3回目の優勝を果たす。国内が大いに沸いた。
活気が戻ってきた日常だが、新型コロナウイルス感染症によりさまざまな影響を受けた。そのなかで、コロナ禍を経験した私たちの「スポーツライフ」には、どのような変化があったのか?
SSFは「スポーツライフに関する調査2022」の最新調査結果を発表。年1回以上の運動・スポーツ実施率は72.9%と前回調査(2020)から微減、直接観戦率は19.3%と調査以来最も低い水準であった。一方、インターネット観戦率は21.4%と前回調査より7.5ポイント増。また、ITやテクノロジーの活用(アプリ等の使用)で、運動やスポーツの実施頻度を増加させる可能性が示唆されるなど、コロナ禍が、私たちのスポーツライフに大きな影響と変化を及ぼしたことが分かった。
運動・スポーツ実施率の年次推移
笹川スポーツ財団「スポーツライフに関する調査」2022
2. 障害児・者のスポーツ参加 ~共生社会の実現に向けて~
WBC・侍ジャパンの優勝で歓喜に包まれた同時期、車いすテニス・四大大会で世界歴代最多50回の優勝を誇り、日本の障害者スポーツ界を牽引してきた国枝慎吾が、パラアスリートとして初の国民栄誉賞を受賞する。1月に現役引退を発表したが、東京2020大会の金メダル獲得は記憶に新しい。
その国枝氏に加え、全仏オープンで史上最年少優勝を果たし、世界ランキング1位になった小田凱人など、多くのパラアスリートの活躍で関心度が高くなった障害者スポーツ。昨年4月から始まった第3期スポーツ基本計画にも、東京2020大会のレガシーの一環として「スポーツを通じた共生社会の実現」が盛り込まれている。
1月に現役引退を発表し、3月にパラアスリート初の国民栄誉賞を受賞した国枝慎吾。写真:大内翔太/フォート・キシモト
【調査・研究】小学生のスポーツ活動における保護者の関与・負担感に関する調査研究2021(速報値)
SSFでは障害者のスポーツ参画を増やすために、地域の障害者スポーツセンターを中心に、周辺の障害者スポーツ専用・優先施設や公共スポーツ施設、福祉施設などとネットワーク化を進める提言(施設ネットワーク化)を行ってきた。実現に向け、東京都障害者スポーツ協会と共同研究を実施。障害者専用スポーツ施設のあり方を5つに定義し、施設における専門職が備えるべき能力を3つに整理した。施設ネットワーク化により、障害者が日常的に運動・スポーツに親しめる環境に近づいていく。
3. スポーツを「する・みる・ささえる」魅力を再確認
いまどきスポーツ大調査 FIVBワールドカップバレー2023
5月8日、新型コロナウイルス感染症の法律上の分類が季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行した。これによりイベントの観客数制限が撤廃され、コロナ禍前と同様、全てのスポーツ大会・イベントに足を運ぶことが可能となった。規模を問わず、全国津々浦々でこれまで中止や延期となっていた大会・イベントが開催され、スポーツを「する・みる・ささえる」魅力や楽しさを再確認できたのではないだろうか。
来年に迫ったパリ2024大会の予選も兼ねた世界大会が数多く行われ、国内でも開催された。9月には、バスケットボールのワールドカップ、10月にはバレーボールのパリ2024大会予選で、それぞれ日本代表がオリンピックの出場権を獲得した。特にバスケットボールの自力での出場権獲得は実に48年ぶりであった。
SSFでは、両大会への関心度を調査するためSNSでキャンペーンを実施。バスケットボールでは日本代表に期待することの1位は「優勝」、バレーボールではMVP選手の1位に「石川祐希」が輝くなど、多くの方々に参加いただいたき、興味深い結果が得られた。また、これまでの「スポーツライフに関する調査」から、各種目別の推計実施人口も発表。バスケットボールは237万人、バレーボールは217万人であった。
国内バスケットボール人口は237万人。「スポーツライフに関する調査報告書」(2000~2022)
多くの選手、チームが活躍する一方、今年もスポーツ界では、指導者による体罰やハラスメント、部員間のいじめ・暴力、違法薬物問題などの不祥事が起こってしまったのも事実だ。毎年のように不祥事が起こると、スポーツへの社会的信頼の低下が危惧される。スポーツの信頼回復、そして価値を高めていくことが重要であるが、9月に、スポーツ庁が「スポーツ団体ガバナンスコード」(中央競技団体向け)を、2019年の策定後、初めて改訂した。
ガバナンスコードを遵守すべき中央競技団体の現状はどのようになっているのか。
SSFは中央競技団体現況調査 2022の調査結果を発表。経営戦略策定、女性役員登用が進んでいることが明らかとなった。また、半数以上の団体が社会貢献活動に「取り組んでいる」と答え、中央競技団体の経営においても、社会課題の解決に資する事業展開を重視する姿勢が見受けられた。
中央競技団体現況調査 2022年度
5. 子どものスポーツを社会で“ささえる”
2023年は、長年の社会課題である少子化の解決に向けて大きな動きがあった。4月に子ども家庭庁が発足。岸田首相も「異次元の少子化対策」を打ち出すなど少子化対策が具体的に加速し、子どもを取り巻く環境の変化に期待が寄せられている。
スポーツ界では、公立中学校で運動部活動の地域移行がスタート。2025年度までに公立中学校の休日の運動部活動が、段階的に地域に移行していくことになり、地域スポーツの果たすべき役割が議論されている。
第3回無料セミナー「子どものスポーツ離れを食い止める ~保護者の負担がない少年野球チーム作りから学ぶ~
SSFでは、子どものスポーツ環境を独自の視点で研究している。子どものスポーツ活動における、保護者の関与、負担感を調査し、子どものスポーツ環境を「ささえる」体制の課題を明らかにしてきた。これまでの調査で、母親に依存している構造や、当番等の“大変なイメージ”で子どものスポーツ活動が敬遠されている可能性などが分かっている。これらの課題を多くの方々と共有し、解決策を模索するために、学識者と指導者を招いたセミナーを3回にわたり開催した。持続可能な子どものスポーツ環境を構築するには、保護者や指導者だけではなく、競技団体、地域、そして社会全体でささえていくことが必要不可欠だ。
6. スポーツによって長くアクティブに生きられる社会
高齢社会が進む日本において、健康寿命の延伸、健康増進に対する取り組みは大変重要である。厚生労働省は「第5次国民健康づくり(健康日本21(第三次))」を2024年度から開始することを発表した。生活習慣病の予防や食事、運動などに関する目標を掲げている。
「健康日本21」では、健康づくりのために「1日60分間の中高強度の身体活動の実施」を推奨しているが、国内では計測機器による身体活動量測定が十分に行われておらず、国民の身体活動の実態について完全には明らかになっていない現状がある。
国内の身体活動・スポーツ実施状況に関する明治安田厚生事業団との共同研究
SSFは明治安田厚生事業団と活動量計を用いた共同研究を開始。日常の身体活動が、健康状態やスポーツ実施、日常生活とどのような関係があるのかを検証し、より健やかなライフスタイルや社会環境のあり方を探る。また、健康無関心層のスポーツライフに関する調査も実施している。
今後はより一層、外部の研究機関や自治体と連携し、さまざまな知見を交えた質の高い研究調査活動を行い、スポーツによって長くアクティブに生きられる社会の実現を目指す。
調査概要
- 調査方法
- インターネット調査(SSFウェブサイト、Twitter、Facebook)
- 調査時期
- 2023年11月24日~12月6日
- 有効回答数
- 1,402票