求められるのは、スポーツ活動のあり方
笹川スポーツ財団では、2017年2月(2016年度)に実施した第1回調査に引き続き、2021年9月(2021年度)に、小学校1年生~6年生の第1子をもつ母親を対象とし、子どものスポーツ活動に対する保護者の関与の実態や意識を明らかにする調査を実施しました。
本調査結果では、子どものスポーツ活動(クラブ・教室等の団体に所属して行う活動)へは母親中心に関与している実態など、前回調査から大きな変化がないことが分かりました。また新たに、母親自身が子どもの頃からスポーツ活動における保護者の役割では、現在と同様に係や当番を担っていたのは母親が中心であったことも明らかとなりました。
調査結果のポイント
1. 子どものスポーツ活動への母親の負担感は、団体全体に関わる活動の負担が大きい
図表1は、子どものスポーツ活動への母親の負担感に関する、2016年度と2021年度の調査結果である。2021年度では、新たに加えた項目の負担感の高さが目立つ。「指導者や保護者の送迎をする」(66.7%)、「練習や大会等で、指導者・保護者の食事や飲み物を用意する」(64.4%)、「大会等で、保護者や関係者が観戦する場所を確保する」(62.0%)、「会員の集金や管理を行う」(59.0%)、「団体のメーリングリストやSNS・ホームページの管理を行う」(57.4%)が、全体の上位5つを占めている。団体全体に関わる活動は一部の人のみが行い、負担感は大きいことがわかる。
前回調査の項目で、5ポイント以上変化したものをみると、増えた項目は「弁当を作る」(6.4ポイント増)「クラブの練習の補助をする」(8.9ポイント増)「活動場所の手配や予約をする」(5.2ポイント増)、減った項目は「スポーツ用具を購入する」(5.2ポイント減)「クラブの練習の指導をする」(7.5ポイント減)であった。前回調査で負担感が高かかった項目は今回も高い傾向がみられた。
2. 子どものスポーツ活動への母親・父親の関与は、依然として母親中心の構造
■経年変化(2016年度と2021年度)
図表2において、子どものスポーツ活動への母親・父親の関与の経年変化をみると、母親・父親ともに「お子様の送迎をする」が増加し、「大会や試合に付き添う・応援をする」が減少するという共通の傾向がみられる。
一方で、「ユニフォームや練習着の洗濯をする」では約60ポイント、「お子様のスポーツ用具を購入する」では約40ポイント、「お子様の送迎をする」「クラブの練習の付き添い・見学をする」では約30ポイント、「お子様以外の送迎をする」「お子様以外の子どもの食事や飲み物を用意する」では約10ポイント、母親が父親を上回るなど、全体的に母親中心に関与している様子は前回と変わらなかった。
母親ではほかに、「クラブの練習以外の自主練習につきあう」「スポーツ用具を購入する」「活動種目のルールを勉強する」が増加、「弁当を作る」が減少していた。コロナ禍で長時間の活動や大会・イベントなどが難しくなり、大会や試合を応援したりする機会は減少したと考えられる。一方で、自主練習・ルールの勉強など、自分の子どもに直接かかわる行動は増えている。団体の活動が思うようにできない中で、個々の保護者が子どものスポーツ活動継続のために尽力していた様子がうかがえる。
■新調査項目(団体全体に関わる活動)
「指導者・保護者間の連絡や情報共有を行う」では母親17.1%>父親6.8%と、10ポイント以上の差があった。「指導者・保護者の食事や飲み物を用意する」「大会で、保護者や関係者が観戦する場所を確保する「団体のメーリングリストやSNS・ホームページの管理を行う」「会費の集金や管理を行う」の4項目は、いずれも母親が6~8%程度、父親が2~4%程度であった。また、「クラブの練習の指導をする」(母親8.3%、父親6.4%)「指導者や保護者の送迎をする」(同6.1%、5.5%)については、母親と父親でほとんど差はみられなかった。
図表2. 子どものスポーツ活動への母親・父親の関与
※小学生のスポーツ活動における保護者の関与・負担感に関する調査研究2021
注)子どもがスポーツ活動を行っている場合に尋ねている。
3. 母親自身が子どもの頃から、保護者の役割は母親が中心という構造
2016年度の母親に対するインタビュー調査のなかで、「子どものころ弟が野球をやっていた時に母親がかかりっきりだった」という声があがった。そこで、母親自身に子どもの頃を振り返ってもらい、本人やきょうだいがスポーツ活動をしていた場合の保護者の関与について尋ねた(図表3)。
全体では「保護者がコーチをする活動があった」は14.6%、「保護者が係や当番をする活動があった」は31.6%であった。「保護者がコーチをする活動」では、「父親がコーチをしたことがあった」6.5%>「母親がコーチをしたことがあった」1.5%と父親のほうが多く、「保護者が係や当番をする活動」では母親22.2%>父親7.4%と母親のほうが多かった。過去の振り返りとして尋ねているため限界はあるものの、子どもたちの祖父母世代から、指導以外の関与は母親が中心であるという構造には変化がない様子がうかがえる。
注)母親自身もしくはきょうだいが小学生の頃にスポーツ活動を行っていた場合に尋ねている。
無断転載、複製および転訳載を禁止します。引用の際は本書が出典であることを明記してください。
本事業は、ボートレースの交付金による日本財団の助成金を受けて実施しました。