釜石といえば、ラグビー日本選手権7連覇を遂げた新日鉄釜石の本拠として知られる。間違いなく、ラグビーはまちの誇りである。被災地の復興のシンボルとしてW杯を誘致する。カネはないけれど大義がある。
もうひとつ、はた目には復興が進んでいるように映っても、まだ多くの人が仮設住宅で暮らしている。どうしても、「複雑な住民感情」への配慮もある。新日鉄釜石ラグビー部と、その流れをくむ釜石シーウェイブス(SW)で活躍した“レジェンド”、桜庭吉彦さん(釜石市ラグビー協会副会長)は言う。
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スポーツ政策研究所を組織し、Mission&Visionの達成に向けさまざまな研究調査活動を行います。客観的な分析・研究に基づく実現性のある政策提言につなげています。
自治体・スポーツ組織・企業・教育機関等と連携し、スポーツ推進計画の策定やスポーツ振興、地域課題の解決につながる取り組みを共同で実践しています。
「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。
日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。
釜石といえば、ラグビー日本選手権7連覇を遂げた新日鉄釜石の本拠として知られる。間違いなく、ラグビーはまちの誇りである。被災地の復興のシンボルとしてW杯を誘致する。カネはないけれど大義がある。
もうひとつ、はた目には復興が進んでいるように映っても、まだ多くの人が仮設住宅で暮らしている。どうしても、「複雑な住民感情」への配慮もある。新日鉄釜石ラグビー部と、その流れをくむ釜石シーウェイブス(SW)で活躍した“レジェンド”、桜庭吉彦さん(釜石市ラグビー協会副会長)は言う。
「たしかにひとつの目標に向かっていくチャンスだと思う。でも仮設住宅に入っている方が多くいらっしゃる中、誘致ばかりを声に出して言えない苦しみもあります…。ここで一歩、半歩踏み出し、一緒に(W杯誘致に向け)盛り上げていきたいのです」
そのジレンマはわかる。ただW杯が釜石にくれば、どれほどまちが活性化するか。元気になるか。2016年に岩手国体、20年には東京五輪パラリンピックもやってくる。
おそらく釜石がW杯会場となれば、この地がW杯のシンボルとなるのではないか。ラグビーW杯2019誘致推進室の増田久士さんは「生きるモチベーション」と表現した。
「目標がないと生きられないじゃないですか。ここでW杯の試合をやれば、オリンピックの時、釜石にくる人も増えるでしょう。チャレンジできるならチャレンジしよう。いま転換期。ターンオーバー(ボール奪取)して、どう攻めようかというところです」
同感である。夢がなければ生きられない。だから、「フィールド・オブ・ドリームス」の精神が大事なのである。W杯の会場決定は来年3月。開催地決定には、スタジアムだけでなく、宿泊施設や交通アクセスなど、さまざまな条件がチェックされることになる。
だが、より大事なことは、W杯を契機とし、どのようなまちづくりをするかということである。釜石をどうしたいのか。10年後、30年後を想定しているのかどうか、だ。
タウンミーティングには、女子ラグビーに励む15歳の畠山苗穂さんも参加した。ほおをちょっぴり赤く染め、こう言った。
「スポーツを通して、子どもから大人までからだを動かせる場所があったらいいな、と思います。釜石でワールドカップに接し、東京オリンピックに出場したい」
いいぞ、いいぞ。生きている人は意外とつよい。負げねっすよ、釜石なのだ。