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国際情報
International information

「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。

知る学ぶ
Knowledge

日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。

笹川スポーツ研究助成 2019年度 優秀研究賞

笹川スポーツ研究助成は、わが国のスポーツ振興、ならびにスポーツ政策の形成に資する、優れた「人文・社会科学領域」の研究活動の支援および若手研究者の育成を目的として2011年度からスタートし、2019年度助成分をもちまして終了いたしました。

2019年度は、6名が優秀研究賞を受賞しました。例年は「研究奨励の会」にて、受賞者による研究成果発表会を行っておりましたが、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、中止することといたしました。そのため、受賞者のコメントとともに優秀研究をウェブサイトにてご紹介します。

2019年度笹川スポーツ研究助成の総評

選考委員長 山口 泰雄(神戸大学大学院名誉教授・流通科学大学特任教授)

「笹川スポーツ研究助成」は、スポーツの人文・社会科学領域の助成として2011年度にスタートしました。2019年度ではテーマ区分を新たにし、「スポーツによる地域活性化」「子ども・青少年のスポーツ振興」「スポーツ・身体活動の普及促進」に関する研究を募集したところ、一般研究138件、奨励研究131件、合計269件と、過去最多の申請がありました。

 2019年度の優秀研究賞のテーマをみると、一般研究では「災害時の公共スポーツ施設」「幼少期のラダー運動プログラム」「他者との交流頻度と運動実施」、奨励研究では「チャリティスポーツイベント」「劣等コンプレックスと運動有能感」「児童へのスタンディングデスクの影響」など、時代を反映した多様で実践的な内容が含まれています。

 これまでの採択者の皆さんには、研究成果の国内外での発表、学会誌・研究誌への積極的な投稿を期待しています。研究活動で得た知見が研究者や行政担当者、ステークホルダーの目に触れ、議論が始まり、スポーツにおけるハード・ソフト・ヒューマンのイノベーションが生まれることによって初めて、研究成果の社会貢献に繋がるからです。

本助成は、2019年度をもって募集が終わります。若手研究者の『希望の星』が消えるのは残念ですが、過去9年間の総計363件の研究成果は消えません。研究助成を受けた皆さんと研究成果が、これからのスポーツイノベーションの担い手になるでしょう。

2019年度笹川スポーツ研究助成 優秀研究賞

※所属・肩書は受賞時

優秀研究:醍醐 笑部氏

醍醐 笑部 氏

スポーツによる地域活性化
地域課題型チャリティスポーツイベントにおける基礎的研究

-アクターの把握と社会的インパクト評価の適応に向けて-
研究成果抄録

醍醐 笑部 (早稲田大学 助教)

この度は優秀研究賞を頂戴し光栄に思います。この場をお借りして調査にご協力くださった皆様、研究活動をサポートしてくれた仲間に心から感謝を申し上げます。研究蓄積の少ない日本のスポーツとチャリティの一端を正確に捉えることは、決して華やかな側面ばかりではありませんが、日本のチャリティ文化を変える着実な一歩になると考えています。そして目下コロナとの戦いは、スポーツにおける寄付やファンドレイズ、ギフティングに多くの課題が存在していることを浮き彫りにしました。私自身2度の採択をいただき、尊敬する先輩方、研究者仲間が名前を連ねた笹川スポーツ研究助成が幕を閉じてしまうのは本当に残念です。今回の受賞に深く感謝し、精進してまいります。


當山 貴弘 氏

當山 貴弘 氏

子ども・青少年のスポーツの振興
運動場面における劣等コンプレックスと運動有能感の因果関係の推定

研究成果抄録

當山 貴弘 (兵庫教育大学大学院 大学院修士課程)

この度は、2019年度笹川スポーツ研究助成優秀研究賞という評価をいただき、大変光栄に存じます。審査員の先生方、笹川スポーツ財団の皆様に深くお礼申し上げます。
本研究は、体育において劣等感を伴った回避的態度といわれている体育の劣等コンプレックスと運動に関わる有能感の因果関係について明らかにすることを目的とし、児童・生徒を対象に縦断的調査を実施致しました。本研究を遂行するにあたり、ご指導をいただきました中須賀巧先生(兵庫教育大学)、調査にご協力いただきました皆様に改めて感謝申し上げます。
今回の受賞を励みに、より一層研究活動に取り組んで参ります。最後になりますが、貴財団の益々のご発展を祈念いたします。

城所 哲宏 氏

城所 哲宏 氏

スポーツ・身体活動の普及促進
小学校学級における長期的なスタンディングデスクの導入が児童の座位活動パターンに及ぼす影響

研究成果抄録

城所 哲宏(国際基督教大学 特任講師)

この度はこのような栄誉ある賞をいただき大変光栄に思います。
私は、小学校学級に立位で学習ができる机(スタンディングデスク)を導入し、「身体を動かしながら学習する」仕掛けづくりに取り組んでいます。スタンディングデスクを導入したことにより、子どもたちからは「集中力が高まる」「移動がしやすくなり、友達とたくさん話せた」「眠気がなくなった」など、好意的な意見が多数上がりました。
現在、新型コロナウイルス感染拡大で、子どもの運動不足が深刻な社会問題になっています。「どんな学校環境が子どもの身体活動を高めるか?」この問いに対して科学的な根拠を提供できるよう、より一層、研究活動に邁進していきたいと思います。

秋吉 遼子 氏

秋吉 遼子 氏

スポーツによる地域活性化
災害時の公共スポーツ施設のあり方

-施設管理者の対応と指定管理者の選考・協定に着目して-
研究成果抄録

秋吉 遼子(東海大学 特任助教)

2019年度笹川スポーツ研究助成優秀研究賞を賜り、誠に光栄に存じます。笹川スポーツ財団、選考委員会、調査にご協力いただきました多くの方々、一般社団法人指定管理者協会に厚く御礼を申し上げます。本テーマで申請しようと思ったのは、2018年に地震、豪雨、台風等の自然災害が多発したためです。テレビに映る避難所となった公共スポーツ施設をみて、何かできることはないのかと模索しました。昨年度で笹川スポーツ研究助成の募集が終了してしまったことは残念でなりませんが、最終年度に助成していただいたからこそ、この研究を今後発展させ、社会課題の解決の一助となりたいと強く感じております。

宮口 和義 氏

宮口 和義 氏

子ども・青少年のスポーツの振興
幼少期に有効なラダー運動プログラムの開発

-今の子どもの調整力・運動有能感を高めるラダー運動の研究-
研究成果抄録

宮口 和義(石川県立大学 教授)

この度は、優秀研究賞という栄誉ある賞を頂き誠にありがとうございます。選考委員会の皆様ならびに財団関係者に厚く御礼を申し上げます。小学校で指導しながら研究データを収集していた2019年当時は、翌年、新型コロナで世の中の活動がこんなにもストップするとは思ってもいませんでした。子ども達も学校に行けず、思いっきり体を動かせずにいました。そんな時、このラダー動画が大変重宝したと聞いています。地元メディアでも大きく取り上げて頂きました。この研究を契機として、現在は「縄跳び動画」を子ども達、そして学校関係者に配信するプロジェクトを行っています。ここまで広がったのも財団のお陰です。心より感謝しております。

根本 裕太 氏

根本 裕太 氏

スポーツ・身体活動の普及促進
若年層から高年層を対象とした他者との交流頻度の変化が
運動実施頻度に与える影響

-3時点パネルデータに基づく分析-
研究成果抄録

根本 裕太(東京都健康長寿医療センター研究所 非常勤研究員)

このたびは優秀研究賞という栄えある賞を授与していただき、ありがとうございました。
受賞対象となった研究では、交流頻度と運動頻度との関連を3時点のパネルデータから検証しました。
その結果、交流頻度が多い者ほど運動頻度が多いことが示され、交流による運動頻度への影響は交流相手によって異なることが示唆されました。
本知見により身体的側面のみの運動啓発に頼ることなく、交流をきっかけとした新たな切り口から運動頻度を促進できる可能性が示されました。
今後の研究では地域介入研究に発展させ、身体活動の普及促進に貢献していきたいと考えております。