新型コロナウイルスにより一度止まったスポーツ活動も再開し始めましたが、各国、各競技団体で、感染症対策などを踏まえながらスポーツ活動再開に向けたガイドラインを発表しています。笹川スポーツ財団では、国際的なスポーツ・フォー・オールの統括組織であるTAFISAやSSF海外研究員のネットワーク等を通じて、国内外のガイドラインを収集しています。
- 調査・研究
© 2020 SASAKAWA SPORTS FOUNDATION
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スポーツ政策研究所を組織し、Mission&Visionの達成に向けさまざまな研究調査活動を行います。客観的な分析・研究に基づく実現性のある政策提言につなげています。
自治体・スポーツ組織・企業・教育機関等と連携し、スポーツ推進計画の策定やスポーツ振興、地域課題の解決につながる取り組みを共同で実践しています。
「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。
日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。
新型コロナウイルスにより一度止まったスポーツ活動も再開し始めましたが、各国、各競技団体で、感染症対策などを踏まえながらスポーツ活動再開に向けたガイドラインを発表しています。笹川スポーツ財団では、国際的なスポーツ・フォー・オールの統括組織であるTAFISAやSSF海外研究員のネットワーク等を通じて、国内外のガイドラインを収集しています。
英国でスポーツを所管するデジタル・文化・メディア・スポーツ省(Department for Digital, Culture, Media & Sport : DCMS)は、ロックダウンの緩和に伴うスポーツ活動の再開に向けて、エリートスポーツと一般個人向けスポーツ・レクリエーションを分けてガイダンスを発表している。
エリートスポーツ向けには5月13日以降に下記の3つのガイダンスを順次発表しており、一般個人向けのスポーツ・レクリエーションについては6月1日に英国政府が屋外で同居人以外の者と5名まで(自分を含めて6名まで)の集合を認める緩和を発表したことに伴い、下記の3つのガイダンスを一斉に発表した。(今後政府の意向を踏まえて、追加・変更の可能性がある)
(エリートスポーツ向けガイダンス)
(一般個人向けガイダンス)
スポーツ関連の非省庁公的機関であるUKスポーツ(UK Sport)*1 やスポーツイングランド(Sport England)*2 はそれぞれのウェブサイト上で、上記の政府ガイダンスの紹介やガイダンスに関する質問集を掲載しており、ガイダンスの浸透を図っている。
またスポーツイングランドは政府ガイダンスの紹介以外にも、「ジョイン・ザ・ムーブメント(Join the Movement)」という新たなキャンペーンを国営宝くじの収益を使って展開しており、新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出制限が続く中で、どのように運動を継続して健康を保つかに関する様々なツールやアドバイスを提供している。
本ガイダンスは、DCMS、UKスポーツ、イングランド公衆衛生庁(Public Health England : PHE)、保健・公的介護省(Department of Health and Social Care)等の行政機関とオリンピック・パラリンピック競技や各プロスポーツ競技に関わる競技団体の代表者、医務官、選手会、施設運営者等が連携して策定している。
最終的に制限なしでの競技再開を目指す上で、DCMSは5段階のステージを踏むことを検討しており、現状ではステージ1から3までの3つのステージに関するガイダンスが公表されている。
本ガイダンスの対象となる「エリートアスリート」には下記の対象者が含まれている。
ステージ1から3までのそれぞれのガイダンスでは、トレーニングや試合を再開するにあたって、アスリートを含む全ての関係者が守らなければいけない要件を示している。
5月13日に発表されたステージ1のガイダンスにおいては、定められた施設における個人でのトレーニングの再開のみを認めており、トレーニング施設においてもチームメイトやスタッフからは常に対人距離を保つことを定めている。また設備・用具の消毒や施設入場前のスタッフやアスリートのスクリーニング等の要件が定められている。それぞれの要件は、競技団体、クラブ運営者、その他関連するサービス提供者に向けた要件と、エリートアスリートを受け入れるトレーニング施設の保有者や運営管理者に対する要件に分けて記載されている。
その後、5月25日に発表されたステージ2のガイダンスにおいては、定められた施設における少人数グループやチームでの練習と濃厚接触を含む練習を認めた。ただし、トレーニングの時間は最小限に留めることが求められ、トレーニング以外での共有施設(更衣室、カフェ、休憩所等)の利用は引き続き禁止とされた。本ガイダンスではステージ1で定められた要件に加えて、ステージ2で必要になる要件について記載している。
5月30日に公表され6月1日から有効になったステージ3のガイダンスでは、国内における無観客での試合開催を許可している。エリートスポーツの試合運営には競技団体や施設運営者に加えて、大会・試合の主催者、試合運営者、チーム・アスリート、サポートスタッフ、審判、運営スタッフ、ボランティア、委託事業者、サプライヤー、アンチドーピング関連スタッフ、メディカルスタッフ、メディア、放送事業者等、非常に多岐にわたる関係者が関与してくる。本ガイダンスでは、ガイダンスの前提となる最低限の基準、全体方針、具体的なガイダンスの三部に分けて、全ての関係者に対して周知徹底が必要な要件を示している。
英国政府は5月末にこれまでの制限を緩和して、6月1日以降は同居人以外でも5名まで(自分も含めると6名まで)なら屋外で集まっての活動を許可することを発表した。
これに伴い、DCMSは許可される活動内容やスポーツを再開する上で注意すべき点について、「一般個人向け」、「パーソナルトレーナー・コーチ向け」、「屋外スポーツ施設提供者向け」の3つに分けてガイダンスを発表した。
全てのガイダンスに共通する要素としては、上述の通り同居人以外では5名までの屋外での集まりが認められること(同居人については制限なし)、同居人以外と活動する際には2mの対人距離を常に確保すること、必要な衛生施策を実施すること等が挙げられている。
一般個人向けのガイダンスでは、6月1日以降に許可される活動とスポーツ・レクリエーションを行う上での注意点が記載されている。本ガイダンスでは政府が発表しているルールの下で、どのような活動が可能か、また緩和前からの変更点はどのようなものかを整理した上で、さらに具体的に、移動を伴う活動、新型コロナウイルス重症化のリスクが高いグループの扱い、子連れでの活動、スポーツ施設の再開、共用設備や用具の扱い、屋内施設や食堂等の扱い等について注意点を述べている。また後半部分では、陸上、釣り、ゴルフ等、競技ごとの補足事項について一覧化している。下記はガイダンスの一部例を抜粋している。
「人数制限と対人距離の確保について」(スポーツイングランド ウェブサイトより)
パーソナルトレーニング・コーチについても、屋外、同居人以外は5名まで(自分を含めて6名まで)、対人距離(常時2m)の確保という条件を満たせばサービス提供を再開できることとなった。補足情報として、人数制限や対人距離維持のルールを守った上であれば1日に複数の顧客(1回あたりは5名まで)を相手にすることも可能であることが記載されており、一方で屋内での活動は一切禁止、ガイダンスに則った衛生施策(用具の消毒や清掃、殺菌スプレーや手洗いの徹底等)の実施が必要であることが記載されている。
屋外スポーツ施設についても、一部の例外を除いて営業再開が可能となった。ただし、公営施設も含めて各施設の営業再開については、施設ごとに本ガイダンスやその他必要な基準を導入して、安全な運営が実行できることを確認した上で判断しなければならず、再開の時期については個々の施設で判断するものとしている。
本ガイダンスでは、営業再開に向けて施設提供者が守らなければいけない公衆衛生の基準、利用者に対するコミュニケーションの重要性、衛生施策の例、従業員や顧客の安全確保のための施策、飲食店や駐車場の再開等について記載している。以下にガイダンスの一部例を抜粋した。
「再開できる屋外施設と再開する場合の注意点」(スポーツイングランド ウェブサイトより)
スポーツイングランドは新型コロナウイルス感染拡大による政府の外出制限や対人距離確保の要請が続く中で、国民一人一人がどのように運動を継続して心身の健康を保つかに関する様々なアイディアを提供するために、3月26日から「ジョイン・ザ・ムーブメント(Join the movement)」という新たなキャンペーンを開始した。
本キャンペーンでは、特設サイトを立ち上げて、様々な情報やアドバイスを提供するだけではなく、SNSのハッシュタグを用意して、人々が自分のアイディアを投稿して広めることができるようにしている。
キャンペーン特設サイトでは、自宅待機や外出制限の中でも実行できる運動・スポーツに関するオンラインコンテンツやアプリへのリンク集、政府ガイダンスの最新情報、キャンペーン参加者向けのロゴや画像などの素材提供等を行っている。
またPHEは、大学や研究機関と連携して、本キャンペーンの一環として高齢者向けに家の中でもできる運動のガイダンスを開発して、「家でもアクティブに(Active at Home)」として、ウェブサイト上で発表するだけではなく、実際に25万部の印刷版を用意して各地域に配布した。
「ジョイン・ザ・ムーブメント」(スポーツイングランド ウェブサイト・公式SNSより)
「家でもアクティブに」(PHEウェブサイトより)
(本記事の内容は別途記載がない限り、2020年6月18日時点の情報に基づくものであり、その後情報の更新・変更が行われている場合がある)
【リンク先】(英語のみ)
Elite sport return to training guidance: Stage One
(英国政府ウェブサイトより)
https://www.gov.uk/government/publications/coronavirus-covid-19-guidance-on-phased-return-of-sport-and-recreation/elite-sport-return-to-training-guidance-step-one--2
Elite sport return to training guidance: Stage Two
(英国政府ウェブサイトより)
https://www.gov.uk/government/publications/coronavirus-covid-19-guidance-on-phased-return-of-sport-and-recreation/elite-sport-return-to-training-guidance-stage-two
Elite sport - return to domestic competition guidance
(英国政府ウェブサイトより)
https://www.gov.uk/government/publications/coronavirus-covid-19-guidance-on-phased-return-of-sport-and-recreation/elite-sport-return-to-domestic-competition-guidance
Guidance for the public on the phased return of outdoor sport and recreation in England
(英国政府ウェブサイトより)
https://www.gov.uk/government/publications/coronavirus-covid-19-guidance-on-phased-return-of-sport-and-recreation/guidance-for-the-public-on-the-phased-return-of-outdoor-sport-and-recreation
Guidance for personal trainers and coaches on the phased return of sport and recreation in England
(英国政府ウェブサイトより)
https://www.gov.uk/government/publications/coronavirus-covid-19-guidance-on-phased-return-of-sport-and-recreation/guidance-for-personal-trainers-and-coaches-on-the-phased-return-of-sport-and-recreation
Guidance for providers of outdoor facilities on the phased return of sport and recreation in England
(英国政府ウェブサイトより)
https://www.gov.uk/government/publications/coronavirus-covid-19-guidance-on-phased-return-of-sport-and-recreation/guidance-for-providers-of-outdoor-facilities-on-the-phased-return-of-sport-and-recreation
UK Sport COVID-19 Return to training & competition FAQs and others
(UKスポーツ ウェブサイトより)
https://www.uksport.gov.uk/coronavirus-response
Coronavirus: what happens next?
(スポーツイングランド ウェブサイトより)
https://www.sportengland.org/how-we-can-help/coronavirus/coronavirus-what-happens-next#your_questions_answered
Join the Movement(スポーツイングランド ウェブサイトより)
(スポーツイングランド ウェブサイトより)
https://www.sportengland.org/jointhemovement
Active at Home (PHE ウェブサイトより)
https://campaignresources.phe.gov.uk/resources/campaigns/50-resource-ordering/resources/5118
(2020年6月18日現在)
*1 英国におけるスポーツ関連の非省庁公的機関であり、オリンピック・パラリンピック競技での英国選手のメダル獲得増に貢献するために公的資金の戦略的な投資を行う等、エリートスポーツ政策を担っている
*2 英国におけるスポーツ関連の非省庁公的機関であり、イングランドにおける草の根スポーツの振興を担っている