新型コロナウイルスにより一度止まったスポーツ活動も再開し始めましたが、各国、各競技団体で、感染症対策などを踏まえながらスポーツ活動再開に向けたガイドラインを発表しています。笹川スポーツ財団では、国際的なスポーツ・フォー・オールの統括組織であるTAFISAやSSF海外研究員のネットワーク等を通じて、国内外のガイドラインを収集しています。
- 調査・研究
© 2020 SASAKAWA SPORTS FOUNDATION
© 2020 SASAKAWA SPORTS FOUNDATION
スポーツ政策研究所を組織し、Mission&Visionの達成に向けさまざまな研究調査活動を行います。客観的な分析・研究に基づく実現性のある政策提言につなげています。
自治体・スポーツ組織・企業・教育機関等と連携し、スポーツ推進計画の策定やスポーツ振興、地域課題の解決につながる取り組みを共同で実践しています。
「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。
日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。
新型コロナウイルスにより一度止まったスポーツ活動も再開し始めましたが、各国、各競技団体で、感染症対策などを踏まえながらスポーツ活動再開に向けたガイドラインを発表しています。笹川スポーツ財団では、国際的なスポーツ・フォー・オールの統括組織であるTAFISAやSSF海外研究員のネットワーク等を通じて、国内外のガイドラインを収集しています。
ドイツオリンピックスポーツ連盟(Deutscher Olympischer Sportbund:DOSB)※ は、4月28日付でスポーツクラブでのスポーツ活動再開に関する「10の原則」を発表した。これは、連邦全土にわたる国の感染予防方針に沿っている。そのため、州ごとに異なる感染予防措置や衛生規則に関係なく、十分な運動機会の提供方法に関する全国(統一)的な基礎を作り出している。
今後、さらなるDOSBの方針として、体育館及び室内競技場の利用や大会の運営に関するものが続く予定である。また、後に述べる競技団体によるスポーツ種目別の移行期間規則も、この10原則を補足している。
※DOSBとはドイツのスポーツにおける統括団体であり、2006年、当時のドイツスポーツ連盟とドイツオリンピック委員会が合併し、設立された。詳しくはこちらを参照。
参加者との間に最低1.5~2メートルの距離を保つことは、ウイルスが伝染する可能性を大幅に減少させることに役立つ。スポーツを行う際は動きがあるため、距離を十分に見積もる必要がある。入場待ちの行列による感染拡大に留意しながら、スポーツ施設への適切な立ち入り制限を行うべきである。
スポーツや運動は接触がない状態で実施されるべきである。握手、拍手、ハグ、グループで歓声を上げたり悼んだりすることは、どれも行うべきではない。例えばチームスポーツ種目においても、身体接触を伴う1対1の練習は行うべきではない。柔道やレスリングなど、1対1で行うスポーツ種目は個人でのトレーニングのみ行うことができる。
公共空間での新鮮な空気のもと、もしくは、公共・民間の屋外スポーツ施設でのスポーツや運動は、1.の距離規則の遵守を容易にし、持続的な換気により感染リスクを減少させる。当面の間は、伝統的な屋内スポーツ種目も試合やトレーニングは、屋外で行われるべきである。
頻繁に手を洗うこと、よく利用されるエリアやフロアの定期的な消毒、手袋の利用などは感染リスクを減らすことができる。その際、共有されているスポーツ用品の衛生対策および消毒措置は特に徹底して行われるべきである。いくつかのスポーツ種目においては、口や鼻を保護するマスクの利用が有効である。
体育館やスポーツクラブの更衣室やシャワー室の使用は当分の間休止する。スポーツ施設内の飲食店については、それぞれの州令により他の飲食店の営業再開が許可されない限り、社会や地域の状況に鑑み引き続き閉鎖される。
移行期間においては、トレーニングや試合のための車の相乗りは行うべきではない。同様に、ミニバンの使用も不適切である。さらに、スポーツ観戦やスポーツ大会への参加などを目的とした旅行も行うべきではない。
1.の距離規則を遵守するために、現時点ではスポーツクラブの社会的なイベントは実施すべきではない。これは、祝宴や集会の両方が該当する。連邦政府は、一時的にスポーツクラブに必要に応じて総会をデジタル方式で行うことを許可している。さらに、スポーツクラブにおける、観客を入れたいかなるイベントも禁止されている。一部の州では接触のないスポーツ種目での例外はあるが、当面の間スポーツ大会も許可されていない。
トレーニングの際、より小さなグループで行うことで、距離規則の遵守がより容易となる。なお、そのグループは常に同じメンバーで集まれることが最適である。それにより、感染のリスクが生じた場合でも、その影響や隔離措置の範囲を最小のグループにとどめられる。一部の州では、スポーツをする人ひとりにつき必要な広さについての方針を示している。
リスクグループ(高齢者や、基礎疾患などにより感染リスクの高い層)にとっても、スポーツへの参加は同じく重要な意味を持つ。この層の感染リスクを可能な限り最小限に抑えることは、なおさら重要である。個別トレーニングは一つの選択肢になりうる。
この項目は、特に人々の良識への呼びかけである。何らかの取り組みを行う際、そこに不安があり、想定しうるリスクへの対策に確信が持てない場合には、その取り組みをあきらめざるをえず、代わりに、リスクのない活動を検討しなければならない。
(2020年5月19日現在)
DOSBのウェブサイトでは、「今のフェアプレイとは…」と題して、この「10の原則」を掲載した画像がダウンロードできるようになっており、DOSB会員団体やスポーツクラブ会員への周知に努めている。
「10の原則」(出典:DOSBウェブサイト)
また、先に述べたように、各競技団体もスポーツ種目別の移行期間規則(Übergangsregeln)を示し、DOSBの「10の原則」を補足している。2020年5月20日時点で、62の競技団体などが策定した規則がDOSBのウェブサイトに公表されており、例えば、ドイツサッカー連盟(Deutscher Fußball-Bund:DFB)については、「ピッチへ戻る―クラブへの指針―」と題し、サッカー活動再開における基準や条件、推奨事項などが定められたパンフレットを作成している。
「ピッチへ戻る―クラブへの指針―」(出典:DOSBウェブサイト)
以下は、すでに移行期間規則を策定・公表している団体一覧である。
<団体一覧>
(2020年5月21日現在 62団体)
【参考】
ドイツは連邦国家であるため、国の基本方針に基づき、州政府がそれぞれ政策を決定する。スポーツ活動再開に関して、どの州がどのような方針をとっているかを下記の表のとおりまとめた。全16州のうちすべての州で、条件付きでのスポーツ活動再開を認めている。
州名(アルファベット順) | スポーツについて |
---|---|
バーデン-ビュルテンブルク | 身体接触がなく、屋外で行われるスポーツ(ゴルフや陸上競技、テニスなど)については許可される。屋外スポーツ施設は使用再開されるが、プールについては引き続き閉鎖。フィットネススタジオやダンススクールは6/1より再開。 |
バイエルン | 「接触がなく間隔をとった個人の」スポーツは再開可能。例:テニス、陸上競技、ゴルフ、セーリング、飛行スポーツなど。乗馬もホールで実施可能。 |
ベルリン | 5/15より、スポーツクラブは屋外でのコース運営再開可能。ベルリンにおける屋外プール、海水浴場は、5/25より条件付きで再開可能。 |
ブランデンブルク | 5/15より、スポーツクラブでのトレーニング再開が許可される。その際、大会や試合はなし、可能な限り接触もなし。 |
ブレーメン | 屋外での接触のないスポーツは許可されている。 |
ハンブルク | 屋外で個々で行われるスポーツ種目や、接触のない個人スポーツ、例えば陸上競技やテニスゴルフなどは許可されている。 |
ヘッセン | 5/9より、屋外やホールでの一般スポーツは認められている。シャワー室や洗濯室は使用不可。 5/15より、フィットネススタジオは再開するが、プールの再開は未定。 |
メクレンブルク-フォアポンメルン | 屋外でのスポーツは接触なしで再開可能。体育館は、5/15より再開する。ダンススクールも同様。プールは5/25より再開するが、浜辺はすでに開放されている。 |
ニーダーザクセン | テニスなどの余暇スポーツは、最低1.5mの間隔を保って行うことが可能。 |
ノルトライン-ヴェストファーレン | スポーツクラブは屋外でのトレーニングが再開可能。ヨガやフィットネススタジオ、ダンススクール、体育館の再開は厳格な条件のもと可能。屋外プールは5/20より適切な条件のもと再開できる。5/30よりすべてのスポーツ種目の実施が可能。子ども・青少年・アマチュアの大会も許可される。 |
ラインラント-プファルツ | 屋外での余暇・一般スポーツは再開可能だが、試合は不可。フィットネススタジオや体育館、ダンススクールでのスポーツは、5/27より再開可能。 |
ザールラント | 接触のないスポーツは屋外の場合許可される。 |
ザクセン | スポーツ施設は、屋内外ともに使用可能。フィットネススタジオ、ダンススクール、屋外プールは5/15より再開可能。 |
ザクセン-アンハルト | 5/28より、衛生規則のもとスポーツ活動やスポーツ施設の再開可能。 |
シュレズヴィヒ-ホルシュタイン | 陸上競技やテニス、ゴルフなどの接触のない個人で行うスポーツは再開可能。 5/18より、フィットネススタジオ再開可能。屋内での接触の少ないスポーツ種目についても活動可能。 |
チューリンゲン | 屋外で身体接触のない余暇スポーツは再開可能。 |
(2020年5月19日現在)