文部科学省の外局としてスポーツ庁が10月1日に設置された。初代長官には五輪金メダリストで日本水泳連盟会長だった鈴木大地氏が起用され、政策課、健康スポーツ課、競技スポーツ課、国際課、オリンピック・パラリンピック課の5課、職員約120人体制でスタートを切った。日本のスポーツ行政の司令塔としての役割が期待される。
- 調査・研究
© 2020 SASAKAWA SPORTS FOUNDATION
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スポーツ政策研究所を組織し、Mission&Visionの達成に向けさまざまな研究調査活動を行います。客観的な分析・研究に基づく実現性のある政策提言につなげています。
自治体・スポーツ組織・企業・教育機関等と連携し、スポーツ推進計画の策定やスポーツ振興、地域課題の解決につながる取り組みを共同で実践しています。
「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。
日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。
文部科学省の外局としてスポーツ庁が10月1日に設置された。初代長官には五輪金メダリストで日本水泳連盟会長だった鈴木大地氏が起用され、政策課、健康スポーツ課、競技スポーツ課、国際課、オリンピック・パラリンピック課の5課、職員約120人体制でスタートを切った。日本のスポーツ行政の司令塔としての役割が期待される。
国が担うスポーツ政策全体の現状を把握、整理することを目的に『わが国のスポーツ予算の検証』調査報告書を取りまとめた。
これまで国によるスポーツ関連事業を網羅的に把握した資料はほとんど存在しなかった。本調査では文部科学省が所管するスポーツ予算の公開資料等から、過去3年度分のスポーツ予算の全体像とスポーツ基本計画に対応した事業の実施状況を明らかにしている。
文科省は健康寿命を平均寿命に近づける社会づくりの施策「健康増進プロジェクト」を発表した。スポーツを通じて健康寿命を延ばすことで、個人の生活を豊かにし、年間40兆円を超える医療費の削減も目論む。文科省は約3,000人の職員に対し、1日800歩以上のウォーキングなど所定の運動をしてポイントを獲得すると、図書券などの景品がもらえる試みを試験的に実施した。
健康寿命の延伸を目標に掲げる自治体がチャレンジデーにエントリーする傾向が顕著となった。なかでも『スポーツ立県あきた』をスローガンに掲げる秋田県は、スポーツを活力と発展のシンボルと位置付け、史上初となる県内全25市町村でのチャレンジデーを実施した。前日には、「チャレンジデー2015あきた決起集会」が行われ、佐竹敬久秋田県知事をはじめ、県内全市町村長が出席。県内53.8万人がチャレンジデーに参加し、対戦成績は20勝5敗で、23市町村が実施した昨年(6勝17敗)より大幅に改善されるなど注目を集めた。
2020年東京大会の競技会場がおおむね決定した。当初は競技会場を半径8キロメートル圏内に収めるというプランだったが、財政的な理由で新たな建設が取りやめられるなど、いくつかの競技で会場の変更があり、競技会場が分散した。メインスタジアムとなる新国立競技場は紆余曲折の末、最終的に当初の建設計画を白紙撤回。ゼロから計画が見直されることになった。
本シンポジウムでは、シドニーとロンドンのレガシープランニングの概要と、大会後の施設利用の現状紹介によるナレッジシェアを通じ、2020年東京大会のレガシーのあり方について考えることを目的とした。シドニーとロンドンからオリンピック会場となった施設の担当者を招き、それぞれの大会での会場使用状況とその後の活用状況を報告いただいた。会場には多くの聴講者が詰めかけ、レガシーへの関心の高さがうかがえた。
日本財団が2020年東京パラリンピックの成功とパラスポーツの振興を目的としたパラリンピックサポートセンターを開設。同センターはパラスポーツ競技団体に対し、オフィスの提供や経理事務、通訳などの分野でバックアップを行っていく。日本財団は長く障害者支援活動を推進してきた実績があり、2年前にはパラリンピック研究会を立ち上げた。
SSFでは、平成24年度より3年間、文部科学省の障害者スポーツに関する調査を受託し、障害者のスポーツの実態について調査を実施した。その調査結果を、公益財団法人日本障がい者スポーツ協会が主催する「障がい者スポーツブロック連絡協議会」の基調講演において発表してきた。全国8ブロックで随時開催された協議会では、全国平均と各ブロックのデータを紹介し、その差分について、現場の声を踏まえた意見交換会を実施し、地域の障害者スポーツの実態把握に努めた。
テニスの錦織圭選手が2年連続でATPツアーファイナルに進出し、ラグビーワールドカップでは日本代表が優勝候補の一角である南アフリカを破るなど躍進を見せた。バドミントンでは男子の21歳、桃田賢斗と女子の20歳、奥原希望がスーパーシリーズ・ファイナルで優勝するなど若手選手の活躍が目立った。
文科省は、国際大会での日本選手の躍進と同様に2020年に向けてはIFでの日本人役員・委員の活動も重要と考え、2015年度より「国際情報戦略強化事業」を立ち上げ、IFでの日本人役員の倍増を目指している。SSFでも「中央競技団体現況調査」を通じIFにおける日本人役員・委員の数を調査・発表した。回答を得た67団体(1団体は未回答)のうち、IFにおける日本人役員数は66人だった。
10代を対象にした調査で1位、4~9歳を対象にした調査で2位となった錦織圭選手は、過去2回の調査(2011年・2013年)では5位以内に入っていなかった。今回の躍進は、昨今のグローバルな活躍とともに、多くのマスメディアが取り上げたことが、子どもたちにも影響していると考えられる。
2015年はスポーツ界が大きな飛躍を遂げる1年となると期待されていたが、実際には国際的にも国内的にも迷走し、その状態から脱皮する作業、そこからの成長に向かうための土台作りに追われた1年となった。
まずは国際スポーツ競技団体などが加盟する大組織、スポーツアコード(SA)の総会で、マリウス・ビゼールSA会長がIOCのトーマス・バッハ会長を前にIOC批判を展開し、IOCとSAの関係が悪化するという事態を招いた。この行動に対する各IFの反発は強く、最終的にビゼール会長は辞任表明に追い込まれ、関係修復に多くのエネルギーが費やされることになった。一方、FIFA(国際サッカー連盟)では汚職事件が明らかになり、ロシアの陸上選手に端を発した国ぐるみのドーピング問題は国際陸上競技連盟前会長の贈収賄問題にまで発展した。
国内では2020年東京オリンピック・パラリンピックのメインスタジアムとなる新国立競技場の建設計画が工費の問題などから白紙撤回された。五輪エンブレムの盗用疑惑も持ち上がり、応募から審査をやり直すという事態に追い込まれた。国内、国外を問わず、いずれの迷走も倫理観の欠如や、秩序の乱れが要因と言える。今後は組織のガバナンスを構築し直し、再びこのような事態を起こさない改革を望みたい。
一方、今年6月には、オリンピック・パラリンピック担当大臣が誕生し、10月1日にスポーツ庁が発足した。超高齢社会における健康長寿社会の実現など、スポーツを切り口とした社会課題の解決が期待されている。スポーツ庁がハブとなって各省庁と連携し、縦割り行政の壁を越えて実効性のあるスポーツ政策を実現していけるのか。2016年はその力が試される1年になるだろう。
2年前にパラリンピック研究会を立ち上げた日本財団は、2015年にパラリンピックサポートセンターを開設した。共生型社会の実現が謳われ、2020年に東京大会が開催されることもあり、社会貢献を考える企業の目がパラリンピックや障害者スポーツのサポートに向いている。サポートセンターがうまく機能し、2020年以降も障害者スポーツを支える文化が根付くよう期待したい。
トップ選手の活躍に目を向けると、この1年はニューフェイスが台頭した1年だった。テニスの錦織圭選手、ラグビーワールドカップで強豪、南アフリカを下した日本代表、バドミントンや卓球でも若い選手が国際大会で優勝した。プロアマを問わず、こうした選手たちの活躍は、興奮や感動をよぶだけではなく、国民のスポーツ参加や健康づくりにも好影響を与えるだろう。
2016年、Sport for Everyoneの実現を目指す笹川スポーツ財団の責務はますます大きくなる。
笹川スポーツ財団 専務理事 渡邉一利