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「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。

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日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。

国際化が進む公立小学校における子どもの運動・スポーツ実態調査(速報値)

日本人と外国にルーツのある子どもの、遊ぶ場所や種目の違い

 笹川スポーツ財団では、2023年10月に、東京23区内にある公立A小学校(以下A小学校)の1~6年生の児童および保護者を対象とし、「国際化が進む公立小学校における子どもの運動・スポーツ実態調査」を同校との共同事業として実施しました。

 外国につながる(外国にルーツのある)子どもたちはふだんどのような運動・スポーツを経験しているのか。日本国内でスポーツを通じた国籍を超えた共生は実現されているのか。まずは日常生活における具体的な経験の把握を試みました。

 なお分析結果の説明においては、いずれかの保護者(ひとり親の場合も含む)の第一言語が「日本語以外」である場合を「移民」、すべての保護者(ひとり親の場合も含む)の第一言語が「日本語」の場合を「日本人」と表記していますが、あくまでも本調査における分析上の暫定的な定義として用いています。

■研究担当者コメント

 本調査は、アジア各国にルーツのある家庭の多い都内の公立小学校という一事例のみを対象にしているが、外国につながる子どもたちに焦点をあてたスポーツの研究が非常に少ない状況において、貴重な一歩を踏み出すことができたと考える。

 速報版では、区や学校の施設でより多く遊ぶ「日本人」とプライベートな空間でより多く遊ぶ「移民」、おにごっこやドッジボールを楽しむ「日本人」と少人数でも楽しめるバドミントンや自転車遊びの実施率が高い「移民」などの結果が注目される。言語の障壁に加えて種目への馴染みの有無や子ども同士の関係性、放課後の過ごし方に対する保護者の価値観などさまざまな要因は考えられるが、普段の過ごし方やコミュニティの違いがスポーツや運動遊びにも反映された結果と読み取れる。

 一方で、子どもが感じるスポーツの価値など、総じて評価の高い内容もみられる。今後「国際化が進む公立小学校」がさらに増加する時代に向けて、子どものスポーツの課題と可能性の両方をより明確に示すためにも、報告書発行に向けてさらなるデータ分析を進めたい。

  【笹川スポーツ財団 スポーツ政策研究所 政策ディレクター 宮本幸子


主な調査結果

1. 外国につながる子どもたちは、プライベートな空間でより遊ぶ傾向

 ふだん遊んでいる場所について、「よく遊ぶ」と「ときどき遊ぶ」場所の合計値を示した(図表1)。日本人では「公園」72.1%、「自分の家」66.2%、「区の集会所」60.3%の順に多く、移民では「自分の家」84.8%、「公園」および「図書館」54.5%と続く。両者の差をみると、「自分の家」「友だちの家」「図書館」「ご家族の勤め先」「学区内のお店」は、移民のほうが20ポイント前後高い。「ご家族の勤め先」は日本人が5.9%であるのに対して移民では3割に達し、家族が勤めるお店や事務所で時間を過ごす児童が多いことがわかる。

 反対に「公園」「A小の運動場や体育館」「区の集会所」「学童・放課後事業」では、日本人のほうが10ポイント以上高い。多くの日本人児童が遊ぶ公的な場所では、移民の児童が日本人ほどには遊んでいないという事実は、子どものスポーツや運動遊びの環境を考える上で重要な知見といえる。

2. 外国につながる子どもたちは、「ドッジボール」や「おにごっこ」の実施率が低い

 図表2は、子どもたちが学校の授業以外、休み時間や放課後など学校で行った遊びの内容を示す。「サッカー」のみ日本人17.6%<移民21.2%と、移民のほうがわずかに高いものの、それ以外の種目ではすべて日本人のほうが高い。特に差が大きいのは「野球・キャッチボール・ティーバット」(日本人26.5%>移民9.1%、以下同)、「ドッジボール」(64.7%>36.4%)、「おにごっこ」(67.6%>45.5%)で、20~30ポイント程度の開きがみられる。同じように学校で遊んでいてもその内容は異なり、多くの日本人児童に馴染みのあるドッジボールやおにごっこといった集団での遊びには積極的に参加していない移民の児童もいる様子がうかがえる。

 図表3は、学校以外の場(習いごとを含む)で行ったスポーツや運動遊びの内容を示す。日本人のほうが多いものには、「バスケットボール」(日本人17.6%>移民6.1%、以下同)「おにごっこ」(42.6%>30.3%)「水泳」(26.5%>18.2%)があげられる。ただし、図表2で示した学校で行ったスポーツや運動遊びに比べると差は小さい。 一方で、「サッカー」(14.7%<21.2%)「バドミントン」(11.8%<21.2%)は移民のほうが多い。また、「野球・キャッチボール・ティーバット」「卓球」「遊具」「自転車遊び」などではほとんど差がみられない。全体的に日本人と移民のスポーツや運動遊びの内容に大きな違いはないものの、比較的少人数で実施できる種目で移民の比率が高い傾向にある。

3. スポーツの価値を尋ねると、「日本人」「移民」ともにほとんどの児童が肯定

 「あなたがスポーツをしたら、次のことができると思いますか」という質問文を用いて、スポーツの価値についてたずねた(図表4)。日本人・移民ともに「体がじょうぶになる」(日本人86.8%、移民90.9%)、「楽しい時間を過ごすことができる」(日本人80.9%、移民72.7%)が高く、ほとんどの児童が肯定している。ほかの項目もおよそ日本人と移民の傾向は共通しているが、「友だちや仲間ができる」は日本人75.0%>移民60.6%と、約15ポイントの差がみられた。一方で「ほかの学校や地域の人たちと交流できる」「言葉が通じない人とも楽しめる」はいずれも移民は60.6%となり、日本人をわずかに上回る結果であった。

調査概要

調査名
国際化が進む公立小学校における子どもの運動・スポーツ実態調査
調査時期
2023年10月
調査方法
学校通しによる自記式調査
調査対象
東京23区内にある公立小学校(A小学校) 1~6年生の児童および保護者
回収状況
児童票 :228名(回収率99.1%)うち中国語回答12名、英語回答3名、ネパール語回答3名
保護者票 :222名(回収率96.5%)うち中国語回答31名、英語回答3名、ネパール語回答4名
主な調査項目
(児童)
全学年共通の項目:運動・スポーツが好きか/習いごと/生活習慣/遊ぶ場所
2年生以上に共通の項目:授業以外で行ったスポーツや運動遊び/運動有能感/好きなスポーツ/学校の授業/体育の単元/生活時間/体験・経験
4年生以上に共通の項目:スポーツの価値/学校生活/誰かと過ごす時間/得意なこと/保護者との会話/希望進学段階/将来展望/言語アイデンティティ
主な調査項目
(保護者)
子どもとのスポーツ・運動遊び/子どもの運動能力の認知/子どものスポーツへの期待/子どものスポーツに関する悩み/家庭にあるスポーツ用品/保護者のスポーツ実施頻度/保護者が子どもの頃の運動・スポーツ/保護者の好きなスポーツ/学校選択理由/学校満足度/学校からの連絡/育児や教育の相談先/教育戦略/希望進学段階/家庭の背景(子どもの出生国・日本在住歴、子どもが家庭で話す言語、保護者の第一言語・日本在住歴)

関連情報

テーマ

子どものスポーツ

キーワード
年度

2023年度

発行者

公益財団法人 笹川スポーツ財団

担当研究者