競技を継続するうえで苦労したことを聞いたところ、「費用がかかる」(64.0%)に次いで、「練習場所がない」(33.0%)、「コーチ、指導者の不足」(27.9%)、「仕事に支障が出る」(27.9%)が上位を占めていた。
練習場所については、技術練習、コンディショニングトレーニング共に、障害者スポーツセンター以外の「公共施設」を練習拠点とする回答が多かった(46.3%)。前回調査より大幅に利用が増えたのは、民間スポーツクラブで、前回調査が15.1%であったのに対し、本調査は44.1%であった。このように民間スポーツクラブの利用が高まっている一方で、練習場所の確保は依然として課題があるようだ。自由記載の中には「今なお、練習場所としての利用を断られる」「障害者が安心して利用できる施設が少ない」といった記述も見られた。英国では、スポーツイングランドが障害者の施設利用を促すためのマニュアルを発信している。今後、日本でもこうした取り組みも考えても良いだろう。
また、「国立スポーツ科学センター(JISS)やナショナルトレーニングセンター(NTC)へ行ったことがあるか」との質問を投げかけたところ、「行ったことがない」との回答がJISSとNTC共に7割を超える結果となった。水泳や柔道などは利用事例が報告されているが、多くの選手が「行ったことさえない」という結果であった。また、選手は栄養、メンタル面などの医科学サポートに関連する情報を望むとする結果も今回の調査で明らかとなり、今後、JISSやNTCなどとの組織的な連携も更なる検討が期待されるところである。
次に、「専任のコーチがいるか」との問い(図3参照)には、前回調査が44.7%であったのに対し、本調査では54.5%と増加傾向にあることがわかった。また専任コーチがいると回答した選手に、「専任コーチはどのような人か」を尋ねたところ、所属チームの監督・コーチが最も多く(39.4%)、次いでプライベートコーチ(26%)であった。しかし、障害者スポーツ指導員(1.4%)、障害者スポーツセンター職員(4.1%)、障害者スポーツ競技団体コーチ(12.3%)、パラリンピック選手(6.8%)を合算すると24.6%となることから、障害者スポーツ関係者が多いこともわかった。2011年度に実施したインタビュー調査では、「よりスポーツ技術の専門的知識をもつ指導者に指導してもらいたい」とコメントした選手は8割を超え、パラリンピック選手は障害の知識よりもスポーツ専門技術を持つ指導者を要望していた。だとすれば、今回の調査の実態と選手の要望にはややズレがあると推察できる。今後は、競技団体との連携を持ちながら、メインストリーム化を進めていくことは課題であるといえよう。ちなみに、英国ではメインストリームを「一般のスポーツ協会や健常者向けのプログラムを推進する協会が、障害者に対しても同様の運営をすること」と定義している。日本では、メインストリームを「一元化」と表記する研究者もいる。