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「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。

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日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。

スポーツ活動の再開に向けて ~米国のガイドライン紹介~

新型コロナウイルスとスポーツ

新型コロナウイルスにより一度止まったスポーツ活動も再開し始めましたが、各国、各競技団体で、感染症対策などを踏まえながらスポーツ活動再開に向けたガイドラインを発表しています。笹川スポーツ財団では、国際的なスポーツ・フォー・オールの統括組織であるTAFISAやSSF海外研究員のネットワーク等を通じて、国内外のガイドラインを収集しています。

【第7回】 米国の状況
米国におけるスポーツ活動再開に向けた取り組みについて

米国では新型コロナウイルスの感染拡大に伴い3月から国民の移動を制限していたが、4月16日にトランプ大統領が「アメリカ再開のためのガイドライン(Opening Up America Again Guideline)」として、市民生活や経済活動を3段階に分けて再開していく道筋を示したガイドラインを発表した。ただし大統領は発表時の記者会見でガイドラインは州知事の判断を支援するためのもので、最終的な再開の判断はあくまで各州知事の裁量にあるとしていた。

実際に米国にある50の州は近隣州同士で連携はしているものの、独自の再開プランを策定して、経済や社会活動の再開を進めている。そのためスポーツ・レクリエーションの再開に関しても、各州・地方政府が示す方針やガイドラインに沿って行われている。

そのような状況ではあるが米国疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)*1  は、国民に対して、日常の様々な活動において新型コロナウイルス感染のリスクを最小限に留めるために考慮すべき点をまとめた考慮事項やツールを提供しており、その中で一部スポーツ・レクリエーションに関連するものを下記で紹介する。

またその他にも公的機関ではないが、米国オリンピック・パラリンピック委員会(United States Olympic & Paralympic Committee:USOPC)*2  や民間シンクタンクのアスペン研究所(Aspen Institute)*3  が新型コロナウイルスの感染リスクが引き続き残る中での、スポーツ・レクリエーションの再開やスポーツイベントの計画に関してガイダンスやツールを公表している。

<1. CDCが公表しているガイダンス>

CDCはウェブサイト上に新型コロナウイルスに関する特設サイトを立ち上げて、最新の国内感染状況や医学的なアドバイスに加えて、感染拡大が続く中で様々な活動を行う上でのガイダンス、考慮事項、ツール等を大量に提供している。その中の一部は、スポーツにも関連するため、下記に概要を紹介する。

●ユーススポーツに関する考慮事項(Considerations for Youth Sports)

CDCは5月29日に公表したページ上で、ユーススポーツ*4  を運営・管理する団体に向けて、ユーススポーツに参加する選手・家族・その他関係者の安全を確保して、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、考慮すべき事項を記載している。(ただし本ページの記載事項はあくまで連邦政府・州政府・地方政府が定める法律・ルール・規制を補足するものであり、代替するものではないとしている)

念頭に置くべき指針

ユーススポーツの活動を新型コロナウイルス感染拡大リスクの大きさによって5段階に分類し、各スポーツ団体はそれぞれが置かれている状況、参加者、実行できるリスク回避策等を踏まえて、どのレベルの活動を行うかを検討すべきとしている

最低リスク
個人/家族のみで、家でのスキル向上練習・調整
低リスク
チームでの練習
中リスク
チーム内での練習試合
高リスク
同じ地域の異なるチームとの試合
最高リスク
異なる地域のチームとの試合
「ユーススポーツの活動 5段階のリスク分類」(CDCウェブサイトより)

「ユーススポーツの活動 5段階のリスク分類」(CDCウェブサイトより)

リスク評価

ユーススポーツの活動について、どのような観点から新型コロナウイルス感染のリスクを見極めることができるかを羅列している

  • 選手間の距離の近さ、接触している時間の長さ、共用用具の使用率、チームの規模、参加者の持病 等

感染拡大リスクを最小化するための行動

感染拡大リスクを最小化するための行動を示しており、これらの活動を参加者全員に促していくための施策についても記載している

  • 体調不良時の自宅待機、手洗い・消毒の徹底、せきやくしゃみのエチケット、フェイスカバーの着用 等

最適な環境の整備

最適な衛生環境を保つための施策について記載している

  • 清掃と消毒の定期的な実行、共用用具利用の最小化と必要な共用設備の定期的な清掃と消毒、最大限の換気、時差スケジュールの設定によるソーシャルディスタンス確保、ソーシャルディスタンスに関する物理的なガイドの設置 等
「ユーススポーツ参加者を新型コロナウイルスの感染から防ぐためのヒント(動画)」(CDCウェブサイトより)

「ユーススポーツ参加者を新型コロナウイルスの感染から防ぐためのヒント(動画)」(CDCウェブサイトより)

最適な運営体制の整備

新型コロナウイルス感染拡大のリスクを最小化する運営体制について記載している

  • 重症化リスクの高い参加者の見極めとオプションの用意、政府からの最新情報把握、新型コロナウイルス担当窓口の設置、小規模グループの作成とグループ間の接触回避、時差スケジュールの設計、緊急時のコミュニケーション・報告体制の整備、スタッフやコーチへのトレーニング、利用者への周知徹底、スタッフや選手への精神面でのサポート 等

体調不良者への対応

体調不良者や新型コロナウイルス感染者が出てしまった場合の対応について事前に準備しておく必要があるとしており、そのためのポイントをいくつか紹介している

  • 体調不良者の自宅隔離と活動再開の基準、活動中の体調不良者への対応、体調不良者が発生してしまった場合の施設や設備の清掃や消毒、地域の保健機関との連携 等

その他

ページ上ではその他にコーチ向けのチェックリスト、感染リスク回避策や各活動のリスクに関するポスター、リスク回避策の概要を知らせるための参加者に向けたレターテンプレート等を提供している

「コーチのためのチェックリスト」(CDCウェブサイトより)

「コーチのためのチェックリスト」
(CDCウェブサイトより)

「新型コロナウイルス感染リスクを回避するためのヒントポスター」(CDCウェブサイトより)

「新型コロナウイルス感染リスクを回避するためのヒントポスター」
(CDCウェブサイトより)

●イベント・集会に関する考慮事項(Considerations for Events and Gatherings)

CDCは6月12日に公開したページで、主にイベント・集会の企画者に向けて、安全なイベント実施を実現するために考慮すべき事項を記載している。対象となるイベント・集会は、実施場所や人数の規模を問わず、コンサート、お祭り、カンファレンス、スポーツイベント等あらゆるイベント・集会を含んでいる。(上記と同様に本ページの記載事項はあくまで連邦政府・州政府・地方政府が定める法律・ルール・規制を補足するものであり、代替するものではないとしている)

念頭に置くべき指針

イベント・集会の参加者規模については州・地方政府が定める法律・規制に基づいて判断する必要があるとしている

イベント・集会の特性に応じて、下記4段階のリスクレベルを定めている

最低リスク
バーチャルのみでのイベント・集会
低リスク
  • 小規模の屋外イベント・集会
  • 同居人以外とは6フィート(約1.8m)の距離を確保、全員が布製フェイスカバーを着用、共用用具の利用なし、同じエリアからのみ参加可能
高リスク
  • 中規模のイベント・集会
  • 異なるエリアからの参加可能、参加者間で6フィート(約1.8m)を確保
最高リスク
  • 大規模のイベント・集会
  • ソーシャルディスタンスの制約なし、多数の異なるエリアからの参加可能

新型コロナウイルスの感染経路と対策

新型コロナウイルスの感染経路(主な経路として飛沫感染と接触感染を挙げている)を明確にした上で、本ページで紹介している個人レベルの衛生施策や清掃・消毒等の環境整備が安全なイベント・集会の実施に非常に有効であることを述べている

感染拡大リスクを最小化するための行動

感染拡大リスクを最小化するための行動とそれらの行動を参加者全員に促していくための施策について、「ユーススポーツに関する考慮事項」にも記載されていた基本的な内容に加えて、柔軟な返金ポリシーの設定、スポーツイベントで多く見られるハイタッチやハグの防止啓発等、イベント・集会特有の施策に関しても記載している

最適な環境の整備

最適な衛生環境を保つための施策について、基本的な内容に加えて、混雑が予測される化粧室に関する施策、観客座席のレイアウトの検討、飲食サービスに関する施策等、イベント・集会特有の施策に関しても記載している

最適な運営体制の整備

新型コロナウイルス感染拡大のリスクを最小化する運営体制について基本的な内容に加えて、重症化リスクのために会場に来ることができない参加者への対応(バーチャル視聴等)、柔軟なスタッフシフトの検討、観客の到着時間や滞在時間の制限、観客を含む全ての参加者へのコミュニケーション等、イベント・集会特有の施策に関しても記載している

体調不良者への対応

体調不良者や新型コロナウイルス感染者が出てしまった場合の対応について事前に準備しておく必要があるとしており、そのためのポイントとして基本的な内容に加えて、観客への来場自粛に関する事前のコミュニケーション、体調不良者の隔離スペースの確保等、イベント・集会特有の施策に関しても記載している

●公園・レクリエーション施設管理者に向けたガイダンス
(Guidance for Administrators in Parks and Recreational Facilities)

CDCは6月6日に公開したページで、主に公園やレクリエーション施設を管理している地方行政機関や土地所有者に向けて、安全な施設の利用・運営に関するガイダンスを公表している。主な内容としては、ポスターや看板設置による衛生施策の啓発、化粧室の管理、スイミングプールの再開、イベント・集会の開催、遊具場の扱い、ユーススポーツ・キャンプの再開、ソーシャルディスタンスのルール、スタッフ間の情報共有等に関するガイダンスや考慮事項が記載されている。

<2. USOPCが公表しているガイダンス>

USOPCはアスリートやスポーツ団体向けに新型コロナウイルスに関する最新情報を提供するための特設ページを設置しており、その中で新型コロナウイルス感染の特徴と共にいくつかのガイダンスや考慮事項を公表している。その中でスポーツやイベントの再開に直接関連するものを下記に紹介する。

●新型コロナウイルス感染症流行後のトレーニング再開に関する考慮事項
(Return to Training Considerations Post-COVID-19)

USOPCは4月30日に公開した本考慮事項の中で、アスリート・コーチ・競技団体を含むスポーツ団体に向けて、新型コロナウイルス感染のリスクが残る中でどのようにトレーニングを再開していくかに関して有用な情報を提供している。トレーニング再開の是非については実施場所や競技の特性によっても異なるため、記載されている情報を参考に全てのアスリート・コーチ・スポーツ団体は独自の再開計画を検討するべきとしている。またトレーニングの再開にあたっては必ず各地方政府や保健機関が定めるルールを確認して、その内容に従うこととしている。

本考慮事項は、新型コロナウイルス感染症の流行を5つのフェーズに分けて、それぞれのフェーズでどのような考慮事項があるかを示しているが、記載されている内容の他にもアスリート・コーチ・スポーツ団体は、地域の感染率を踏まえたトレーニング再開の是非、ウイルス検査や医療のリソースをスポーツのために使うことの是非等、道徳的・社会的な観点についても検討する必要があるとしている。

考慮事項の主な内容の一部を下記に抜粋する。

  • フェーズ1:ロックダウンが続いており、公共トレーニング施設も全て閉鎖されている
    自宅で自前の機器を使った個人トレーニングやバーチャルでのコーチングのみが許されるとしており、トレーニング機器の清掃・消毒、機器に触れる際のPPE(Personal Protective Equipment:マスク、手袋などの個人用防護具)の装着、外出時の感染予防等について述べられている
  • フェーズ2:一部ロックダウンが解除されているが、集団でのトレーニングは禁止されており、公共トレーニング施設も全て閉鎖されている
    屋外でのトレーニングが認められるが、引き続き自前の機器を利用して、ソーシャルディスタンスを維持することを定めている。またトレーニング機器の清掃・消毒、機器に触れる際のPPEの装着、外出時の感染予防等は継続するように示されている
  • フェーズ3:10人以下の小規模での集団トレーニングが認められるが、公共トレーニング施設は引き続き閉鎖されている
    • グループトレーニング再開にあたっての条件(過去14日間の症状有無、地域を跨いだ移動有無、病人との接触有無等)やグループトレーニング実施に関する留意事項(人数規模、症状の自己診断、実施場所、ソーシャルディスタンス、共用用具等)について記載している
    • 直接的(柔道等)・間接的(「走高跳」のマット等)を問わず他者との接触を伴う競技は禁止としている
    • コーチは現場に来ることも可能だが、ソーシャルディスタンスを保つこととしている
    • その他トレーニング機器の清掃・消毒、機器に触れる際のPPEの装着、外出時の感染予防等は継続するように示されている
  • フェーズ4:集団トレーニングが全面的に解禁され、公共トレーニング施設も再開している
    • 本格的なトレーニング再開にあたっての条件(過去14日間の症状有無、地域を跨いだ移動有無、病人との接触等)やトレーニング実施に関する留意事項(人数規模、症状の自己診断、実施場所、ソーシャルディスタンス、共用用具等)について記載している
    • 一般的な感染予防施策(定期的な手洗い、咳をする際は口元を覆う等)は継続するが、ソーシャルディスタンスの確保は必須ではなくなることが示されている
    • 水筒・タオル等については引き続き自前のものを準備することを定めている
    • 接触を伴う競技のトレーニングやコーチの現場での指導も再開可能としている
    • その他トレーニング機器の清掃・消毒、機器に触れる際のPPEの装着、外出時の感染予防等は継続するように示されている
  • フェーズ5:新型コロナウイルスの治療法とワクチンが確立されて、感染拡大のリスクがなくなる
    • アスリート・コーチ・スタッフには、その他の予防接種と同様に新型コロナウイルスの予防ワクチンを接種してもらうことを定めている
    • 体調不良時の活動自粛や関係者への連絡、一般的な感染予防策(例:定期的な手洗い、咳をする際に口元を覆う等)、トレーニング機器の清掃・消毒は継続するように示されている
  • 補足資料
    その他補足資料として一般的な感染予防施策、新型コロナウイルス感染症の一般的な症状、自己診断のガイドに関するポスター画像が添付されている
 「一般的な感染予防施策」(補足資料、USOPCウェブサイトより)

「一般的な感染予防施策」
(補足資料、USOPCウェブサイトより)

「新型コロナウイルス感染リスクを回避するためのヒントポスター」(CDCウェブサイトより)

「新型コロナウイルス自己診断のガイド」
(補足資料、USOPCウェブサイトより)

●新型コロナウイルス感染症流行後のスポーツイベント計画に関する考慮事項
(Sports Event Planning Considerations Post-COVID-19)

USOPCが5月7日に発表した本考慮事項は、競技団体を含むスポーツ団体に向けて、スポーツイベントを計画する際に、どのように新型コロナウイルス感染症のリスクと向き合うかについて、有用な情報を提供することを目的としている。資料の内容は原則としてオリンピック・パラリンピック競技やプロスポーツ競技のイベントを対象としており、その一部はジュニアやアマチュアのスポーツイベントにはそぐわない場合があると前置きしている。またスポーツイベントは開催場所や規模、競技の種類によっても特性が異なるため、スポーツ団体はそれぞれの特性を踏まえた上で本考慮事項の内容を参考に独自の安全運営計画を策定すべきであるとしており、地方政府や保健機関とも綿密に連携して最新の情報を得た上で、公的機関が定めるルールに従うことを定めている。

本考慮事項はイベントの計画段階で新型コロナウイルス感染症のリスクを最小限に留めるために考慮すべき運営面の事項を記載しているが、イベントの計画者は記載されている内容の他にも、地域の感染率を踏まえたスポーツイベント再開の是非、ウイルス検査や医療のリソースをスポーツイベントのために使うことの是非、感染してしまったアスリートがいた場合の対応等、道徳的・社会的な観点についても検討する必要があるとしている。

考慮事項の主な内容の一部を下記に抜粋する。

イベント中止の財務的な影響

新型コロナウイルス感染の再流行の可能性は予測できないため、イベント中止のリスクは常にある。イベントが中止になった場合、どれほどの財務的な影響があるかを事前に確認し、保険加入や契約交渉等によりリスクを最小化する必要があるとしている

イベントの日程

イベント日程を決める際の考慮事項として、アスリートが準備のために確保できる時間、トレーニング施設へのアクセス、公的機関のイベント再開タイミングに関する見解、会場の状況、その他季節や天候等を挙げている

イベントの開催地

イベントの開催地を決定する際の考慮事項として、当該地域の感染状況、イベントに必要なインフラ(医療インフラも含む)、リスク回避策に必要なインフラ(全ての関係者を個室で宿泊させることができる施設、会場への多様なアクセス方法等)、会場のスペースやレイアウト(感染の疑いがある者を隔離する部屋等)、一つの会場の繰り返し利用(複数の会場を利用するよりも一つの会場で必要な数のイベントを行い、関係者の移動を制限した方が望ましいとしている)等を挙げている

感染拡大のリスク

競技の種類によって、感染拡大のリスクが異なるとして、各種スポーツを3段階のリスクレベルに分類して、それぞれのリスクレベルにおける考慮事項を示している。スポーツイベント主催者は、当該イベントで行われる競技のリスクレベルを踏まえて運営計画を策定する必要がある

レベル1(高リスク)
参加者間で持続的な密接状態がおき、保護機能は限定的で、飛沫感染の可能性が高いスポーツ(例:ラグビー、ボクシング、柔道等)
レベル2(中リスク)
持続的な密接状態がおきるが飛沫感染の可能性を減らす保護具を使用しているスポーツ。その他、断続的な密接状態が起きるスポーツ、集団スポーツ、異なる参加者による利用の間で清掃・消毒を行うことができない共用用具を使用しなければいけないスポーツ(例:ボブスレー、フェンシング、バスケ、サッカー等)
レベル3(低リスク)
ソーシャルディスタンスを常に維持できるスポーツ、共用用具を使用しない、もしくは異なる参加者による利用の間で共用用具を清掃・消毒できるスポーツ(例:アーチェリー、射撃、ゴルフ等)

イベント計画

イベント計画段階で安全な運営計画を策定するために考慮すべき事項として、イベントの医療責任者の設置、イベントの変更・制限・延期・中止に関する意思決定体制の整備、WHOガイドライン等の参考情報、地方政府や保健機関との連携、イベント参加者の分類、イベントの医療計画策定、感染防止対策の徹底、コミュニケーション計画の策定等を示しており、それぞれについて参考となる情報を記載している

イベント参加者については、下記の3つの分類を示しており、それぞれのグループの参加可否や参加判断の目安となる基準について記載している

  • ティア1(必須):選手・コーチ・審判・医療スタッフ・ドーピング検査官等
  • ティア2(推奨):メディア・ボランティア等
  • ティア3(任意):観客・ベンダー等

補足資料

補足資料としてWHOが公開しているスポーツイベントに関するガイダンス・リスク評価シート・イベント開催判断に関するツリーダイアグラム、新型コロナウイルスの典型的な症状を示したポスター素材が添付されている

「新型コロナウイルスの典型的な症状」(補足資料、USOPCウェブサイトより)

「新型コロナウイルスの典型的な症状」(補足資料、USOPCウェブサイトより)

<3. プレー(競技、フィットネス・娯楽活動)の再開 - 新型コロナウイルス感染症リスク評価ツール (Return to Play - COVID19 Risk Assessment Tool)>

アスペン研究所はあらゆる年齢の人がスポーツ競技、フィットネス・娯楽活動の再開を検討する上で活用できるリスク評価ツールを5月5日に初めて公表、その後5月27日には最新版への更新が行われた。本ツールはCDCのガイドラインを参考にしながら、アメリカスポーツ医学会や各医療専門家の助言と国内の各競技団体からのインプットを基に、アスペン研究所が策定した。

本ツールでは、新型コロナウイルス感染のリスクに応じて、各スポーツ競技、フィットネス・娯楽活動を3段階のレベルで評価している。実際にどのレベルの活動を行うことが可能かについては、各州・地方政府のルールや規制に基づく必要があるが、アスペン研究所は国内の現状を踏まえると多くの場合は、必要な感染予防施策を実行した上で「低リスク」の活動に留めることを推奨している。

● 3段階のリスクレベル

  • 低リスク:自宅での、個人または同居人とのトレーニングや運動。十分に清掃・消毒された自前の用具を使用
  • 中リスク:公共エリアでの、個人または同居人とのトレーニングや運動。十分に清掃・消毒された自前の用具を使用。同居人以外とは対人距離を確保。
  • 高リスク:場所を問わない、グループでのトレーニングや運動。共用用具の使用。対人距離の確保は不要。

●各スポーツ競技、フィットネス・娯楽活動のリスク評価

現時点で下記28のスポーツ競技、フィットネス・娯楽活動についてリスク評価が提示されている。

サイクリング、ボウリング、クライミング、ダンス、パルクール、ランニング、スケートボード、ウォーキング/ハイキング、ウエイトリフティング、ヨガ、野球/ソフトボール、バスケットボール、チアリーディング、フィールドホッケー、アメリカンフットボール、ゴルフ、体操、アイスホッケー、ラクロス、格闘技、ピックルボール、ボート競技、サッカー、水泳、テニス、トライアスロン、アルティメットフリスビー、バレーボール

また上記のスポーツ競技、フィットネス・娯楽活動以外でも、感染予防施策を講じた上で共用用具を利用せず個人または同居人と行うのであれば「低リスク」な活動として、屋外でのアーチェリー・キャンプ・釣り等、屋内での卓球・ダンス・太極拳等、バーチャルでのフィットネスクラス・スポーツゲーム・合同トレーニング等を挙げている

各スポーツ競技、フィットネス・娯楽活動のリスク評価について、下記にその一部を例示する。

低リスク 中リスク 高リスク
サイクリング
  • 自前の室内バイクの利用
  • 自前の自転車利用、人口が多くない郊外での個人または同居人との走行
屋外での個人または同居人との走行。自前の自転車利用、同居人以外とは対人距離を確保(集団走行は原則として同居人のみ)
  • 同居人以外を含んだ集団走行、対人距離の確保は不要
  • ジム等の共用エリアでの室内バイクの利用
  • 共用用具の利用(自転車レンタル等)
ヨガ 個人または同居人との自宅での練習
  • 個人または同居人との屋外公共エリアでの練習
  • 対人距離の確保、物理的な接触回避、自前の清掃・消毒された用具の利用を前提とした同居人以外との屋外での練習
屋内外のヨガクラスへの参加。対人距離の確保は不要、共用用具も利用可能
野球/ソフトボール 個人または同居人との自宅での練習(素振り、キャッチ練習、トス練習、フットワーク等)。自前の清掃・消毒された用具を利用 個人または同居人との公共施設での練習・試合。自前の清掃・消毒された用具を利用 同居人以外を含むチームや大規模集団での練習・試合。共用用具も利用可能
バスケットボール 個人または同居人との自宅でのドリブル・シュート・ボールハンドリングの練習(私設車道や裏庭を利用)。自前の清掃・消毒された用具を利用 個人または同居人と公共コート(屋内外)でのドリブル・シュート・ボールハンドリングの練習。共用設備・用具の表面が適切清掃・消毒されていることを確認(出入口、ベンチ、ボール等) 同居人以外を含むチームや大規模集団での練習・試合。共用用具も利用可能

「リスク評価一覧のイメージ(サイクリングのリスク評価)」(アスペン研究所ウェブサイトより)

「リスク評価一覧のイメージ(サイクリングのリスク評価)」(アスペン研究所ウェブサイトより)


(本記事の内容は別途記載がない限り、2020年6月23日時点の情報に基づくものであり、その後情報の更新・変更が行われている場合がある)

笹川スポーツ財団 スポーツ政策研究所 政策ディレクター 武富 涼介

【リンク先】(英語のみ)


*1 米国保健福祉省の傘下にある組織で、疾病の脅威から国民を守り、その健康と安全を維持するために、科学的な調査・研究に基づく信頼できる情報を提供している

*2 独立した非営利・民間団体ではあるが、米国の連邦法規で認められた組織で、アスリートの保護・支援・地位向上に注力しており、オリンピック・パラリンピック等への米国代表チームの派遣や国内におけるオリンピックムーブメントのサポートを行っている

*3 国際的に活動する非営利のシンクタンク組織。自由・公正・公平な社会を実現することを目指しており、米国と世界が直面する重要な課題の解決につなげるために、リーダーシップ開発や知見の交換・発信を推進している。スポーツや健康に関連するテーマのプログラムも実行している

*4 幼少期から青年期の少年・少女によるスポーツ実施を示す。CDCのガイダンス上では明確な年齢の定義が示されていないが、米国では一般的に6歳から18歳を指している模様である

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