新型コロナウイルスにより一度止まったスポーツ活動も再開し始めましたが、各国、各競技団体で、感染症対策などを踏まえながらスポーツ活動再開に向けたガイドラインを発表しています。笹川スポーツ財団では、国際的なスポーツ・フォー・オールの統括組織であるTAFISAやSSF海外研究員のネットワーク等を通じて、国内外のガイドラインを収集しています。
- 調査・研究
© 2020 SASAKAWA SPORTS FOUNDATION
© 2020 SASAKAWA SPORTS FOUNDATION
スポーツ政策研究所を組織し、Mission&Visionの達成に向けさまざまな研究調査活動を行います。客観的な分析・研究に基づく実現性のある政策提言につなげています。
自治体・スポーツ組織・企業・教育機関等と連携し、スポーツ推進計画の策定やスポーツ振興、地域課題の解決につながる取り組みを共同で実践しています。
「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。
日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。
新型コロナウイルスにより一度止まったスポーツ活動も再開し始めましたが、各国、各競技団体で、感染症対策などを踏まえながらスポーツ活動再開に向けたガイドラインを発表しています。笹川スポーツ財団では、国際的なスポーツ・フォー・オールの統括組織であるTAFISAやSSF海外研究員のネットワーク等を通じて、国内外のガイドラインを収集しています。
ニュージーランド政府は新型コロナウイルス感染拡大への対策として、4つのレベルからなる警戒システム(COVID-19 Alert System)を導入しており、国内で感染拡大が少しずつ拡大し始めた3月25日に最も厳しい警戒レベル4を発動して国全体をロックダウンの状態としていた。その後4月に入り新規感染者の数が減少したため、4月27日には警戒レベル3、その後5月13日には警戒レベル2への緩和が行われた。
警戒レベルの緩和に伴い、スポーツ・ニュージーランド(Sport New Zealand)*1 は「警戒レベル4, 3, 2における遊び *2、アクティブ・レクリエーション、スポーツ(Play, Active Recreation and Sport at Alert Level 4 & 3, 2)」と題して、どのような活動を実施することが可能か、また実施する場合はどのような注意点があるかを一覧化したガイドを作成し、ウェブサイト上に立ち上げた新型コロナウイルス対策に関する特設ページの中で発信している。
特設ページの中では、その他にも今後遊び、アクティブ・レクリエーション、スポーツを再開するにあたり、役に立つ様々な情報を、「スポーツセクター(競技団体や施設運営者等)向けの情報」と「一般個人向けの情報」に分けて発信している。
スポーツ・ニュージーランドは、政府の警戒レベル引き下げ発表に合わせて、4月24日に「警戒レベル4・3における遊び、アクティブ・レクリエーション、スポーツ(Play, Active Recreation and
Sport at Alert Levels 4 & 3)」を発表し、その後5月に入ってから「警戒レベル2における遊び、アクティブ・レクリエーション、スポーツ(Play, Active Recreation and Sport at Alert Level 2)」を追加で公表している。
(ニュージーランド政府は現時点で引き続き警戒レベルを2に維持しているため、警戒レベル1に関するガイドは2020年6月3日時点で発表されていない)
本ガイドはニュージーランドの保健省や企業・技術革新・雇用省をはじめとする政府機関から支援を受けて、スポーツ・ニュージーランドが作成したものである。
ガイドの中では、遊び、アクティブ・レクリエーション、スポーツに関して、各警戒レベルでどのような活動が許可されるか、活動する上でどのような注意点があるか、具体的な例を交えて示している。
上記はスポーツに関する内容になるが、本文の中ではその他に遊び、アクティブ・レクリエーション、ウォータースポーツ、スポーツ関連の商業活動(バー・カフェ・ジム・マッサージ・整体等)についても記載がされている。
上記の「警戒レベル4, 3, 2における遊び 、アクティブ・レクリエーション、スポーツ」に加えて、スポーツ・ニュージーランドは各競技団体や施設運営者等に対して、遊び、アクティブ・レクリエーション、スポーツの再開にあたって役立つと思われる下記の情報をウェブサイトの特設ページ上で提供している。
それぞれの項目に記載されている内容の一例として、「接触者追跡のための記録に関するガイダンス」と「衛生対策のガイダンス」について記載内容を下記に示す。
感染者が発生した場合、感染者と接触した者を追跡し管理することが非常に重要になるため、警戒レベル2においてスポーツ活動を再開する場合は、全ての参加者の訪問記録をとることが定められている。ガイダンスでは、運営を再開しようと考えている全てのスポーツ施設・グラウンドの運営者やアクティブ・レクリエーション、スポーツに関するサービス提供者が実施すべき記録の要件を示している。またその他にも、政府が公開している訪問者記録のテンプレートや追跡アプリの情報が掲載されている。
「接触者追跡のための記録要件(一部抜粋)」
スポーツ施設の運営者やアクティブ・レクリエーション、スポーツに関するサービス提供者向けに、新型コロナウイルス対策として非常に重要な衛生施策に関する情報を提供している。
「必要な衛生施策(一部抜粋)」
スポーツ・ニュージーランドは一般個人に対しても、新型コロナウイルス感染拡大の危機が続く中で、どのように遊び、アクティブ・レクリエーション、スポーツを再開していくべきかについて、下記の情報をウェブサイトの特設ページ上で提供している。
警戒レベルの緩和に伴い、今後遊びやスポーツを再開する子供たちやその保護者に向けて、9つの基本ルールを提示している。(今後政府の発表によって追加・変更が行われる可能性がある)
ハイパフォーマンスアスリートを含むスポーツ実施者が長期間のブランクの後にどのようにスポーツやトレーニングを再開していくかについて述べられている。衛生施策の実施、体調不良時の対応、怪我を防ぐための段階的なトレーニング再開等について記載されている。
警戒レベル2への緩和に伴い、遊び、アクティブ・レクリエーション、スポーツの再開に関するよくある質問への回答集が掲載されている。物理的な距離、集会の人数、接触者追跡のための記録、スポーツ観戦、ジムやスイミングプールの利用、屋外での活動、スポーツやアクティブ・レクリエーションのための移動、学校スポーツ等、様々な質問に対する回答が記載されている。
上記本文については6月8日時点の情報に基づいて記載しているが、その後ニュージーランド政府は6月9日に警戒レベル1への緩和を発表し、国境規制(外国人入国の一部規制と入国後の隔離)以外の制限を全面的に解除した。それに伴いスポーツ・ニュージーランドも下記の通りウェブサイトの内容を更新・修正している。
またこの緩和を受けて、ニュージーランド国内では6月13日から、制限なしで観客を入れてのプロラグビーの試合が行われており、初戦には約2万人の観客が訪れた。(スーパーラグビー・アオテアロア(国内チームのみによる大会))
遊び、アクティブ・レクリエーション、スポーツにおいても、全ての事業活動・サービス提供への制限がなくなり、集団の人数制限、対人距離の確保、接触者追跡のための記録に関しては、全ての要件が強制ではなく任意となった。これまで求められていた衛生施策については強制ではないが、継続することを推奨している。
警戒レベル1への緩和に伴い、これまでイベント業界に課されてきた制限や要件はほとんどが撤廃された。ただしイベント業界が今後も新型コロナウイルス感染のリスクを最小限に抑え、再度の感染拡大が起きないように、また仮に再度感染拡大が起きてしまった場合に備えられるように、業界は企業・技術革新・雇用省と連携して、保健省のガイドラインに則って自主的行動規範を発表している。本自主的行動規範は、イベントの運営者、興行主、主催者、代理店、制作会社、サプライヤー、サービス事業者、会場運営者、競技団体等を対象としている。
「自主的行動規範(一部抜粋)」
警戒レベル1への緩和に伴い、上記の「一般個人向け情報」ページに記載されていた多くの制限や要件が解除されたため、本ページ自体が削除されている。
(2020年6月15日現在)
*1 実質的にニュージーランドのスポーツ行政を担っている政府認可法人(Crown Entity)である
*2 原文の「Play」は、競技・種目等でカテゴライズされない軽めの運動・身体活動や遊びを総称したものと考えられるが、本稿では便宜上「遊び」をその訳として用いる
*3 ニュージーランド政府が新型コロナウイルス感染対策の中で活用している用語で、家族や同居人等の共同生活者を指す。家族から離れてホームステイ等を行っている場合はホームステイ先の同居人が自分のバブルになる
*4 ニュージーランド保健省の下で、国全体を20の地域に分割したそれぞれの地区における医療サービスの質向上のためのサポートや資金援助を行っている