新型コロナウイルスにより一度止まったスポーツ活動も再開し始めましたが、各国、各競技団体で、感染症対策などを踏まえながらスポーツ活動再開に向けたガイドラインを発表しています。笹川スポーツ財団では、国際的なスポーツ・フォー・オールの統括組織であるTAFISAやSSF海外研究員のネットワーク等を通じて、国内外のガイドラインを収集しています。
【第8回】 カナダの状況
カナダにおけるスポーツ活動再開に向けた取り組みについて
カナダでは3月後半頃から新型コロナウイルス対策として国境の封鎖や各州での外出禁止が定められた。新型コロナウイルスの感染拡大状況は地域によって異なるため、現状では経済活動等の再開についても、州ごとに再開計画を策定して推進している。よってスポーツについても、基本的には各州でそれぞれ独自に再開が進められている。
連邦政府はスポーツ再開の支援のために、新型コロナウイルスの影響を受けたスポーツ団体に対する大規模な助成金制度等を整備しているが、直接的にスポーツの再開に関するガイドラインは発表していない。
ただし州・準州レベルで提供している情報や実施している公衆衛生施策を補足する目的で、連邦政府は保健省、カナダ公衆衛生庁(Public Health Agency of Canada:PHAC)、州・準州政府、その他の公衆衛生に関する専門家と連携して策定したいくつかのガイダンスやツールを公表しており、その中の一部はスポーツに関連する内容を含むため、下記で紹介する。
その他、政府機関ではないが、6月1日にカナダのオリンピック委員会、パラリンピック委員会、オウン・ザ・ポディウム* は共同で、カナダ国内におけるハイパフォーマンススポーツの再開に対して500万カナダドル(約4億円)の投資を行うと発表した。さらに同じタイミングで最低限満たさなければいけない基準を取りまとめた「新型コロナウイルス ハイパフォーマンススポーツの再開に向けたフレームワーク(COVID-19 Return to High Performance Sport Framework)」を公表した。
上述の通り、経済・社会活動の再開の進捗は各州によって異なっているが、比較的感染拡大の抑え込みに成功しているとみられるカナダ西部のブリティッシュ・コロンビア州では、州のスポーツ政策を推進するヴィアスポーツ(viaSport)* が、6月25日に「ブリティッシュ・コロンビア州におけるスポーツ再開ガイドライン(Return to Sport Guidelines for B.C.)」を発表しているため、州政府レベルの取組の一例として紹介する。
<1. 連邦政府が公開している情報>
カナダ連邦政府はウェブサイト上で新型コロナウイルスに関する特設サイトを立ち上げており、最新の感染状況、新型コロナウイルス感染症の特徴、経済支援プログラム等に加えて、様々なガイダンスを公表している。ガイダンスは医療従事者や保健機関を中心に幅広い業界に向けたものであり、各州・準州の取り組みを補足するものとしている。ただし各州・準州レベルの取り組みでは、法令・規制・方針・ガイドライン等、実務的な要求事項を定めるものもあり、これらの要求事項は各地域の特性や感染状況によって異なる可能性があるため、必ず自分の所属する地域の情報を確認することを求めている。
直接的にスポーツの再開に関するガイダンスは定められていないが、一部のガイダンスではスポーツ再開に関連する内容が示されているため、下記に紹介する。
●公衆衛生対策の緩和に向けた戦略的アプローチに関するガイダンス
(Guidance for a strategic approach to lifting restrictive public health measures)
本ガイダンスでは公的保健機関向けに公衆衛生対策の緩和をどのように戦略的に進めていくかに関して情報提供を行っている。(感染状況はそれぞれの地域で異なっているため、公衆衛生対策の緩和は各州・準州・地域でタイミングと段階を判断しながら行う必要があるとしている)
最新の更新は5月30日に行われている。
ガイダンスでは、公衆衛生対策の緩和は段階的に進めていくべきとしており、モニタリングすべき指標、段階的緩和の第一段階(First Step)の内容、シチュエーション・活動・サービス別の段階的緩和(ステップ5までの5段階)の内容、重症化リスクが高い人への対策等を示している。
スポーツに関連する主な内容としては下記が記載されている。
- 段階的緩和の第一段階として認められる活動の中に「屋外での対人距離を確保できるスポーツ(接触がない/少ない)」の再開が含まれている
- 今後の段階的緩和に関する章では、「スポーツを含む屋外活動」と「屋内スポーツ」について、5つのステップが段階的緩和のアプローチとして示されている
- 屋外スポーツについては、屋外活動の一部として、グループA・B・Cの3つに分けられて、それぞれの段階的緩和ステップが示されている。緩和ステップは、現状(2020年4月時点)、ステップ1(直近)、ステップ2(短期)、ステップ3(中期)、ステップ4(長期)、ステップ5(集団免疫獲得後)に分けられている。
- グループA
- 対人距離を確保できるスポーツ(ウォーキング、ランニング、スケートボード等)については、現状で個人もしくは同居人と行う場合のみ実施可能としている。ステップ1以降は条件付き(衛生施策、対人距離確保、衛生環境整備)で同居人以外との再開も可能としている
- グループB
- 対人距離を柔軟に調整できるスポーツ(接触が少ないゴルフ、テニス、フリスビー等)については、現状で許可されないとしている。ステップ1以降は条件付き(同上)での再開が可能としている
- グループC
- 対人距離確保が難しいスポーツ(サッカー、ラグビー、バスケ等)については、ステップ2までは許可されないとしている。上記条件に加えて、非医療用マスクの着用、感染者スクリーニングの実施、重症化リスク保持者への対応の要件を満たせば、ステップ3以降は再開が可能としている
屋内スポーツについては、グループA・Bの2つに分けられて、それぞれの段階的緩和のステップが示されている
- グループA
- 対人距離を確保できるスポーツ(接触が少ないインドアゴルフ、インドアテニス、体操競技等)は現状では禁止としているが、ステップ2以降は、衛生施策実施、対人距離確保、衛生環境整備、非医療用マスク着用、感染者スクリーニング実施、重症化リスク保持者への対応に加えて施設の換気という条件を全て満たせば再開可能としている
- グループB
- 対人距離確保が難しいスポーツ(ホッケー、屋内サッカー等)はステップ2までは継続して禁止としており、上記と同様の条件を全て満たした上で、再開はステップ3以降としている
●地域レベルの新型コロナウイルス感染拡大対策
(Community-based measures to mitigate the spread of coronavirus disease (COVID-19) in Canada)
最新の更新が5月30日に行われた本ガイダンスは、新型コロナウイルス感染症拡大から徐々に経済・社会活動を再開させている中で、州・準州・地域の各保健機関向けに、感染拡大のリスクを最小化するために地域レベルで実施できる対策について記載している。内容としては一般的な新型コロナウイルス感染症対策に加えて、様々なシチュエーションや対象者別にリスクの軽減策を記載している。
スポーツに関連する主な内容としては下記が記載されている。
- 子供・青少年向けの対策として、対人距離確保が難しい接触スポーツを禁じている
- 屋外スペースに関する対策として、ゴルフやテニス等、比較的参加者間での接触が少ないスポーツについては実施を検討しても良いが、接触が多いスポーツやチームスポーツについては今後もしばらくは禁止すべきとしている
- 集会・イベントに関する対策では、大規模なスポーツイベントは「大規模集会(Mass Gathering)」に含まれるとして、カナダ国内でも集団感染が起きた事例が報告されているため、リスクが高い活動として、しばらくは実施を禁止すべきとしている。イベントの企画者はオンラインでの開催に切り替える等、対人距離を確保できる方法を模索すべきとしている
●新型コロナウイルス感染拡大が続く中での屋外レクリエーションスペース・活動に関するリスク軽減ツール
(Risk mitigation tool for outdoor recreation spaces and activities operating during the COVID-19 pandemic)
公園や屋外レクリエーションスペースの管理者や屋外レクリエーションプログラムの実施者(公共団体、スポーツ・レクリエーション団体、コーチ、団体リーダー等)に向けて、公園や屋外レクリエーションスペースの利用に関するリスクとそのリスクを軽減するための対策を示している。最新の更新日は6月3日となっている。
スポーツに関連する主な内容としては下記が記載されている。
- 新型コロナウイルス感染症の感染リスクは人々の間での濃厚接触の有無とその時間によって大きく異なるため、チームスポーツ等、どうしても濃厚接触が避けられない活動については注意が必要としている
- 更衣室やシャワー室等の狭く、密閉された屋内施設の利用は新型コロナウイルス感染のリスクを高めるため、可能な限り回避することとしている
- 屋外スポーツの再開に関するリスク軽減策としては下記のような対策を示している
- 対人距離を確保できるようにルールや内容を変えられないか検討する
- 各地域のスポーツ団体とも連携して、リスク軽減施策を導入する
- 屋外スポーツの再開は段階的に進められるようにする
- より小規模な人数で実施できる練習やトレーニングを優先する
- 出欠管理を徹底して、仮に新型コロナウイルスの感染者が発生してしまった場合に接触者を特定できるようにする
- 競技中以外の全ての時間は2mの対人距離を確保できるようにする(ベンチ等)
- 地域の参加者、場合によっては保護者等にも協力を仰いで参加者が常に対人距離を維持しているか監視してもらい、必要であれば声掛け等を依頼する
- 明確なポリシーを示して、新型コロナウイルス感染が疑われる症状が出た場合は活動を休んでもらう
- 共用品の利用は最小限にする(ゴルフクラブ、バット、ヘルメット等)。どうしても共用が必要な場合は次の利用者が利用する前に清掃・消毒を徹底する
- 競技中もこまめに手洗い・消毒を心掛けてもらう
- 飲み物ボトルやタオルは必ず自前で用意して、共用はしないようにしてもらう
- 可能な限り家で着替えてきてもらい、更衣室等の利用を控えてもらう
- 参加者の家族や観客にも対人距離の確保を依頼する
- 応援については、歌を歌う、叫ぶといった行為をやめてもらうように依頼する
- 競技前後の円陣や握手は控えてもらう
- 怪我の応急処置等は可能であれば家族等の同居人に実施してもらう。それが難しい場合、対応する人は医療用マスクや手袋をして応急処置を行う
- 救急箱や個人用防護具(医療用マスクや手袋等)については十分な予備を用意する
- その他、マスクの着用については下記の注意事項が記載されている
- 活発な運動を行う際には、熱中症や怪我のリスクを高めるため、非医療用マスク着用が適切ではない可能性があるとしている。
- フェイスシールドの着用が可能な競技(ホッケー等)では、着用を義務付けることを検討することとしている
●新型コロナウイルス感染拡大が続く中での集会・イベント運営に関するリスク軽減ツール
(Risk mitigation tool for gatherings and events operating during the COVID-19 pandemic)
集会・イベントの責任者・企画者・運営者等に向けて、新型コロナウイルスの感染拡大が続く中での集会・イベントの企画・運営におけるリスクの評価とリスク軽減策を示している。
集会・イベントの開催可否については、各省庁、公衆衛生機関、地方行政機関が連携して判断するものであり、本ツールは再開が許可された後に、企画者・運営者がリスクを評価して、安全な運営を実現するためのサポートとして提供されるものとしている。最新の更新日は6月19日となっている。
スポーツイベントについても、規模を問わず本ツールの対象に含まれているため、主な内容の一部を下記に紹介する。
- 集会・イベントにおける新型コロナウイルス感染拡大のリスク
- 新型コロナウイルス感染症の特徴や感染経路を明らかにした上で、集会・イベントを開催するにあたりどのようなリスクが想定されるかを示している
- 集会・イベントの特性(屋内/屋外、人口密度、開催時間/期間、参加者の属性、単一会場/複数会場等)や集会・イベントが開催される地域の感染状況によって、感染拡大のリスクが異なるとしている
- 集会・イベントにおける感染拡大リスクの軽減施策
- リスク軽減策について、最も有効であると考えられているのは対人距離の確保と物理的バリアの設置によって、集まる人同士の接触を極力絶つこととしている。一方で集会やイベントの規模が大きくなれば、全ての人の接触を断つことは難しくなるため、手洗い・消毒や非医療用マスクの着用等の個人レベルの対策を検討すべきとしている
- リスク軽減策は、複数の施策を複合的に行うことが有効と示している。十分に有効な施策を実行できているか不安を感じるイベント企画者・運営者は地域の保健機関に追加でアドバイスを求めるべきとしている
- 集会・イベントにおけるリスク軽減策の例として、体調不良者の活動自粛徹底、集会・イベント中の体調不良者への対応準備、全ての参加者に対する衛生対策の徹底、対人距離確保、物理バリアの設置、換気の強化、接触が多い表面への対策、重症化リスクが高い人への対策、参加人数の制限、オンライン参加オプションの設置、非医療用マスク・布製フェイスカバーの着用徹底等を記載している
<2. 新型コロナウイルス ハイパフォーマンススポーツの再開に向けたフレームワーク
(COVID-19 Return to High Performance Sport Framework)>
6月1日に発表された本フレームワークは、オウン・ザ・ポディウム、オリンピック・パラリンピック委員会、各競技団体の代表者で構成されるタスクフォースが競技団体やスポーツ医学の専門家と連携して策定した。アスリート、コーチ、サポートスタッフ等、ハイパフォーマンススポーツに関わる全ての関係者に対して、「どのように」ハイパフォーマンススポーツの再開を進めていくかを示すものである。
資料の中では、ハイパフォーマンススポーツの定義、スポーツ再開にあたっての前提条件、再開に向けた基準、新型コロナウイルス感染症の感染経路、マスクの着用、新型コロナウイルス感染症検査、大規模スポーツイベントの開催等、幅広いトピックについて触れられている。
フレームワークの中核となるのは、補足資料として添付されている「スポーツ再開に向けた新型コロナウイルス感染リスク評価ツール(COVID-19 Risk Assessment Tool for Sport:R-SAT)」とスポーツの特徴を織り込んだガイドラインとして示されている「レベル別リスク軽減戦略一覧表」である。
本フレームワークは下記の2段階で活用すべきであるとしている。
- R-SATを用いたリスク評価
- 地域の感染状況・ガイドラインの情報・競技の特性・トレーニングの概要等の情報を基にR-SATの初期リスク評価を実施
- リスク評価に基づくリスク軽減戦略の策定
- 連邦政府が公開している一般的なガイドラインに加えて、本フレームワークの情報を基に、リスク軽減戦略を策定する
- 策定した戦略を基に、R-SATのリスク評価を行い、スコアを確認
- スコアが高すぎる(リスクが大きい)場合は、再度戦略の見直しを図った上で、R-SATのリスクスコアが十分に下がるまでリスク評価を行う
「レベル別リスク軽減戦略一覧表」
R-SATを使って再開しようとしている活動の初期リスク評価を実施した上で、本フレームワークに含まれる「レベル別リスク軽減戦略一覧表」を参考にして、リスク軽減戦略を策定する。
フレームワークでは、ハイパフォーマンススポーツの活動を、チームスポーツ、個人スポーツ、接触スポーツ、非接触スポーツ、屋外スポーツ、屋内スポーツの6タイプに分けた上で、リスクの高低をレベルA、B、Cの3種類に分類して、それぞれで考えられるリスク軽減戦略の方向性を示している。
下記ではその一部例として、チームスポーツと接触スポーツに関する内容を記載する。
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レベルA(低リスク)
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レベルB(中リスク)
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レベルC(高リスク)
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チーム
スポーツ
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・ 公的保健機関の薦めに従い、トレーニンググループの人数を制限する
・ 公的保健機関の薦めに従い、共用品の清掃と対人距離の確保を実施すべきだが、トレーニングメニューの変更は不要とする
・ アスリート、コーチ、サポートスタッフを含む全チームメンバーが体調不良時の対応を理解し実行する
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・ 公的保健機関の薦めに従い、一定期間の自主隔離を行い、感染していないことを確認したメンバーのみで少人数のグループトレーニングを行う
・ 接触を含まないトレーニングを行う(例:パス、シュート等)タックルや組み合うような練習は禁止とする
・ 共用品の利用を最小限にできるようにトレーニングの内容を変更する。また異なるグループで同じ用具を利用する場合は必ず合間に消毒・殺菌を行う
・ 怪我等のリスクが少ない活動を実施して、医療サービスの利用を最小限にとどめる
・ アスリート、コーチ、サポートスタッフを含む全チームメンバーが体調不良時の対応を理解し実行する
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・ 他者からは遮断されたトレーニング環境において、公的保健機関の薦めに従い、一定期間の隔離を行い、感染していないことを確認したメンバーのみで、エアロビクスや個人での筋力トレーニングのみを可能とする
・ トレーニング施設への移動についても公的保健機関の薦めによって制限/禁止されている可能性がある
・ 用具やトレーニングスペースは適切な管理と清掃が行われ、偶発的な感染が起きないようにする必要がある。ボールのパス等、共用での用具利用は禁止とする
・ アスリート、コーチ、サポートスタッフを含む全チームメンバーが体調不良時の対応を理解し実行する
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接触
スポーツ
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・ 公的保健機関が薦める公衆衛生対策を導入した上であれば、屋内外を問わず接触を伴う活動を実施できる。導入すべき公衆衛生対策としてはガイダンスに沿った消毒・衛生施策、不要な移動の最小化に関するアドバイス、集会の条件等が含まれる
・ アスリート、コーチ、サポートスタッフを含む全チームメンバーが体調不良時の対応を理解し実行する
・ 接触スポーツの実施は、自宅からアクセス可能な屋外競技スペース等において実施可能とする
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・ 接触スポーツは他者から遮断されたトレーニング環境以外では実施不可能とする(公的保健機関の薦める自主隔離ガイドを実行してからの参加とする)
・ グループの人数は最小限に留める
・ 他者とほとんど接していないアスリート同士であれば、自宅または屋外で共同トレーニングを行うことを可能とする。トレーニングの内容は感染リスクが少ないものに限る
・ トレーニング環境への移動を行うためには公的保健機関が定める自主隔離条件を守る必要がある
・ 怪我等のリスクが少ない活動を実施して、医療サービスの利用を最小限にとどめる
・ アスリート、コーチ、サポートスタッフを含む全チームメンバーが体調不良時の対応を理解し実行する
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・ 接触スポーツは他者から遮断されたトレーニング環境以外では実施不可能とする(公的保健機関の薦める自主隔離ガイドを実行してから参加する)
・ 用具やトレーニング用の衣服は各トレーニング終了後に必ず清掃・洗濯する。コーチの指導についてはオンライン等を活用し、トレーニングメニューは感染リスクが低いメニューのみを行う
・ 自宅もしくは自宅から徒歩で移動できる範囲内で、単独でトレーニングを行う。屋外でトレーニングを行う場合は、対人距離を維持する。怪我等のリスクが少ない活動を実施して、医療サービスの利用を最小限にとどめる
・ アスリート、コーチ、サポートスタッフを含む全チームメンバーが体調不良時の対応を理解し実行する
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「スポーツ再開に向けた新型コロナウイルス感染リスク評価ツール(イメージ)」(オウン・ザ・ポディウム ウェブサイトより)
<3. ブリティッシュ・コロンビア州におけるスポーツ再開ガイドライン
(Return to Sport Guidelines for B.C.)>
6月1日に発表され、その後6月25日に最新版に更新された本ガイドラインは、今後スポーツの再開を目指すにあたって、州内のアマチュアスポーツ団体が、それぞれ独自の安全な運営再開計画を策定できるように、参考となる情報を提供するもので、州政府の要請に基づき、ヴィアスポーツが策定した。
ガイドラインでは、安全にスポーツ運営を再開していくためのプロセス、感染拡大を引き起こさないために実行すべき施策、感染者が出てしまった場合の対応について記載しており、具体的には新型コロナウイルスの概要・感染経路・主な症状、スポーツ再開にあたってのリスクマネジメント、導入すべきリスク軽減策、スポーツ施設へのアクセスと利用、スポーツ施設の運営、参加者のマネジメント、現状の制限下でも実行可能なスポーツプログラムと主な注意点、緊急時の対応等について詳細が記載されている。
また補足資料としては、スポーツ団体が安全な活動再開を進めるにあたって実務的に活用可能なツールをいくつか添付している。
- スポーツ活動チャート
今後段階的に再開フェーズが進むにつれて実施可能になる活動やフェーズごとに必要な衛生施策、実施の条件等を表の形で示している
- 感染症ポリシーのひな型
全ての従業員・ボランティアスタッフ・参加者・観客・保護者等に向けて、新型コロナウイルス感染が疑われる症状が発生した際の対応に関する方針を示すポリシーのひな型である。迅速な情報共有や自己隔離等の対応を定めている
- 参加規約のひな型
スポーツ活動への参加とスポーツ施設の利用にあたって守るべきポイントを記載しており、全てのアスリート・コーチ・ボランティア・参加者・保護者等に対して同意を求めるための参加規約のひな型である。自身での体調スクリーニング、体調不良時の活動自粛、手洗い・消毒の徹底等が定められている
- 参加者へのコミュニケーションレターのひな型
スポーツ団体が今後のスポーツ再開の方針や策定したスポーツ再開計画、活動参加にあたって守ってもらわなければ行けないルール等を、主に活動の参加者やその保護者に向けて共有するために活用することができるレターのひな型である
- 安全運営計画策定の進め方
各スポーツ団体が独自の安全なスポーツ再開計画を策定するにあたって、活用することができるツールである。6つのステップに分けて、検討すべき項目や参照すべき情報等を記載しており、ステップに沿っていくことで安全なスポーツ再開計画を定めることができる
「ブリティッシュ・コロンビア州におけるスポーツ再開ガイドライン(表紙+補足資料A:スポーツ活動チャート)」(ヴィアスポーツ ウェブサイトより)
(本記事の内容は別途記載がない限り、2020年7月6日時点の情報に基づくものであり、その後情報の更新・変更が行われている場合がある)
笹川スポーツ財団 スポーツ政策研究所 政策ディレクター 武富 涼介
*1 2010年に開催されたバンクーバー冬季オリンピックでのカナダ人選手のメダル獲得を目指して各競技団体、オリンピック・パラリンピック委員会、スポーツカナダ等が連携してハイパフォーマンススポーツに対する十分な資金援助を行う目的で2004年に設立されたプログラムが基となっており、現在は非営利組織として、カナダ政府やオリンピック・パラリンピック委員会から得た資金で、各競技団体への投資戦略や優先順位付けを行い、オリンピック・パラリンピックにおけるカナダのメダル獲得率の向上を目指している
*2 2011年にブリティッシュ・コロンビア州政府の支援を受けて設立された非営利組織。州政府の資金を運営・管理しており、州内のスポーツ振興とアマチュアスポーツの支援を行っている
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