2017年を総括するとスポーツ政策が大きく前進した1年だったと言える。そのけん引役を務めたのがスポーツ庁である。発足から2年がたち、スポーツ政策においてより強いリーダーシップを発揮し始めたと言える。
スポーツ庁は3月、第2期スポーツ基本計画(以下、基本計画)を発表した。基本計画には「スポーツで人生が変わる」「スポーツで社会を変える」「スポーツで世界とつながる」「スポーツで未来を創る」という4つの柱を掲げ、そこにひもづく政策の目標を掲げた。国が取り組むべきこと、地方自治体がすべきこと、スポーツ団体のすること、すべてが明確になり、あとは具体的な行動に移すという段階に入った。
競技力という視点で見れば、2020年東京オリンピック・パラリンピックに向け、国際的な競技大会の招致が進んだことは、その向上に大いに貢献したのではないかと思われる。各競技団体の選手発掘、育成強化、積極的な国際大会への出場が進み、卓球やバドミントン、フェンシング、冬季のスピードスケートなどは目覚ましい成果を上げている。政策的に見れば、ナショナルトレーニングセンターや国立スポーツ科学センターのサポートが、ようやく結実してきたと言えるだろう。
一方で、少子高齢化、共生社会の実現など、さまざまな社会課題を解決する上で、スポーツの果たす重要性はますます高まっている。基本計画でも「スポーツの価値」を大いに意識し、健康長寿社会、障害者が参画できる社会、地域の人々が支え合う社会づくりに、スポーツの価値を結び付けていくことが明示されている。
パラリンピックに関しては、各企業のパラアスリートへの支援に拍車がかかり、認知度が飛躍的に向上した。こうした動きがパラアスリートだけでなく、障害者の社会参加につながりつつあることも見逃せない。
スポーツボランティアへの関心も高まりつつある。2020年東京大会のスポンサー企業はもちろん、全国の大学や自治体などでもスポーツボランティア研修会が開催されており、2019年から続く国際競技大会での活躍が期待される。
このようにスポーツの価値が高まる一方で、それに水を差すように、大相撲の暴力問題、ロシアが国としての平昌冬季オリンピック・パラリンピックに出場できなくなったドーピング問題など、スポーツの価値を損ねるような出来事も2017年には起きた。スポーツのインテグリティ(高潔性)を守る努力については、関係者がより一層意識していくべきところである。
冒頭でも述べた基本計画では、国民の週1回のスポーツ実施率を現在の42.5%から65%まで上げるという高い目標を掲げた。実数で言うと約2,000万人の増加であり、これは簡単な数字ではない。ポイントは地域の中でスポーツにより身近に親しめる環境をいかにつくっていくのか。2018年はスポーツ基本法に掲げられた理念をより具体的に進める1年となるだろう。