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「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。

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日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。

ソチパラリンピック 現地レポート

3. 若い力がリードした、ボランティア

3. 若い力がリードした、ボランティア

今では、ボランティアなくして、オリンピックやパラリンピックは成り立たない。少なくとも、私が現地取材を始めた2008年の北京大会以降は閉会式でボランティアの代表が舞台に呼ばれ、表彰されることが恒例になっている。60カ国から約400人の海外在住者を含む約8,000人のボランティアが活躍したソチ大会も例外でなく、閉会式の中盤、代表者に感謝の花束が贈呈され、選手や大会関係者、満員の観衆から温かい拍手が贈られた。私ももちろん、思いきり強く拍手した一人だ。

■平均年齢25歳、その理由とは

市内のバス停で活躍するボランティア。誰も英語を話せなかったがとてもフレンドリー

市内のバス停で活躍するボランティア。誰も英語を話せなかったがとてもフレンドリー

過去の大会と比べて、ソチのボランティアの大きな特徴は、「若さ」だ。組織委員会の発表によれば、平均年齢は25歳で、大学生や大学院生などが中心だった。しかも、前章でも選手の感想のなかで触れたが、ソチのボランティアはとてもフレンドリーで、人懐こい笑顔と積極的に支援の手をさしのべようとする姿が印象的だった。

競技会場では試合中継の合間に、「ボランティアに感謝を」といったアナウンスがはさまれ、活動中のボランティアのリアルな姿が大型スクリーンに映し出され、観客が拍手を送るといった場面も見られた。ボランティアにとっても励みになるし、観客にもボランティアの存在を改めて意識できる効果的な演出だと思う。

ソチ大会のボランティアは、オリンピックとパラリンピックを合わせ25,000人が募集されたが、国内外から10万人以上の応募があったという。一見、盛況に見えるが、必要な人材を揃えることはロシアでは当初、簡単なことではなかったようだ。

理由は、ロシアという国には元々、ボランティア文化がなかったから。ある学生ボランティアが教えてくれた。「正直に言えば、ロシア人の多くはボランティアというものがどういうものか知らないし、そもそも無償で働くことはロシアではとても珍しいこと」。別の女子大生もまた、「私がボランティアをすると話したら、家族や知人から『なぜ、タダで働くのか』と何度も言われた」とバツの悪そうな表情で話してくれた。

専任ボランティアが描く、応援用フェイスペインティング

専任ボランティアが描く、応援用フェイスペインティング

また、ある日、大会会場に向かうゴンドラに、30代の大学講師で教え子たちとボランティアに参加しているという女性と二人きりで乗り合わせた。英語で少し会話が弾んだところで、「ボランティアは楽しいか?」と尋ねると、彼女は怪訝な顔で首を横に振った。「ノー。ボランティアは楽しむものではない。他人のために働くこと。しかも、ノー・マネーでね」。ロシアでの一般認識ではまだ「ボランティアはワーク」であり、無償で働くことに違和感があるのだと実感した出来事だった。

「ボランティア文化のない国で、世界有数のスポーツイベントをボランティアの力で運営する」という難題に対し、ロシアが取った方法は画期的だった。大会組織委員会の発表によれば、まず2011年にロシア各地に全26カ所のボランティアセンターを開設し、募集や研修の拠点とした。国土の広いロシア国内に点在するように設置したので、ソチ周辺だけでなくロシア全土を巻き込むことができた。しかも、設置場所をすべて大学構内の一角にしたので、進取の精神に富んだ若い人材に働きかけることにも成功。こうしてボランティアについての理解が少しずつ広まっていった。

では、彼らはどんな理由でボランティアに参加したのか。残念ながら、ロシア語以外、英語も話せないボランティアがほとんどで、限られた数名にしか生の声を聞けなかったが、興味深い答えが返ってきた。「世界のトップアスリートを間近で見たかった」「大きな経験になると思った」「海外の人と知り合うチャンスになるだろうから」「世界の人にもっとロシアという国を知ってもらいたかったから」など、とても前向きだった。来場者と積極的に交流しようとする姿勢は、こういう思いが原動力なのだとよくわかった。

さらに、「実際に体験してみての感想は?」と尋ねたところ、「毎日が新鮮で楽しい」「研修期間も含め、素晴らしい経験になっている」「大会の一部になれて、誇りに思う」と、これまた肯定的な答えが返ってきた。もちろん、なかには愛想の乏しい人もいたし、スマートフォンやタブレットに夢中な人などもいたが、大半はとても楽しそうに生き生きと活動している人たちが多かったと私も感じた。