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新型コロナウイルス禍でみえてくる現代の子どもの遊び環境

2020年08月04日

習いごと・スポーツクラブ活動状況からみる幼少年期の子どもの運動・スポーツ

近年、子どもの体力・運動能力の低下が社会問題となっており、その背景には便利な生活がもたらした運動量の低下や、身体を動かして遊ぶ時間・空間・仲間の減少がある。1970年代後半から塾や習いごとで忙しい子どもが増え、道路での遊びの禁止によって子どもの遊び場は減少し、昔に比べて放課後や休日に子どもが外で仲間と群れて自由に遊ぶ姿はほとんどみられなくなってきている。さらに、新型コロナウイルスの流行により、2020年3月からは全国の小・中・高校などで臨時休校となり、それに伴い、学校運動部活動や地域・民間のスポーツクラブも活動を自粛・休止し、子どもたちの身体を動かす機会はさらに減少した。

笹川スポーツ財団では、「4~21歳を対象としたスポーツライフに関する調査」(子ども・青少年のスポーツライフ・データ)において、現代の子どもの遊び空間として運動やスポーツ、運動遊びをしている施設や場所をたずねている。本コラムでは、主に4~11歳の幼少年期の子どもの運動・スポーツ、運動遊びの実施施設・場所を紹介するとともに、新型コロナウイルス禍でみえてくる現代の子どもの遊び環境の課題について考えてみたい。

1.幼少期の子どもが運動・スポーツ、運動遊びを
している施設や場所

図表1に4~11歳の運動・スポーツ、運動遊びをした施設や場所の上位15ヵ所を示した。「園庭・校庭・学校のグラウンド」57.1%が最も高く、次いで「公園」35.1%、「自宅や友人・知人などの家の周り」23.2%、「スイミングスクール(スイミングクラブ)」17.6%、「幼稚園・保育園・学校」14.6%であり、学校施設は現代の子どもたちにとって主な運動・スポーツ、運動遊びの場所となっている。

2.学校期で変化する運動・スポーツ、運動遊びの場

図表2には就学状況/学校期別にみた運動・スポーツ施設の利用状況を示した。未就学児では「公園」44.7%の利用率が最も高いが、小学生になると「園庭・校庭・学校のグラウンド」が最も高くなる。また「幼稚園・保育園・学校の体育館」は小学生から上位にみられるようになり、小学1・2年では8.8%、小学3・4年では14.5%、小学5・6年では20.3%と、学年進行とともに割合が高くなる。進学を機に、運動・スポーツ活動の場が学校施設へと移行している実態が確認できる。

【図表2】 4~11歳の運動・スポーツ施設の利用率(就学状況/学校期別:複数回答)

未就学児(n=322) 小学1・2年(n=320) 小学3・4年(n=401) 小学5・6年(n=444)
順位 施設の種類 利用率
(%)
順位 施設の種類 利用率
(%)
順位 施設の種類 利用率
(%)
順位 施設の種類 利用率
(%)
1 公園 44.7 1 園庭・校庭・学校のグラウンド 63.8 1 園庭・校庭・学校のグラウンド 65.8 1 園庭・校庭・学校のグラウンド 63.5
2 園庭・校庭・学校のグラウンド 31.4 2 公園 38.4 2 公園 33.2 2 公園 27.5
3 自宅や友人・知人などの家の周り 27.0 3 自宅や友人・知人などの家の周り 25.3 3 自宅や友人・知人などの家の周り 21.9 3 自宅や友人・知人などの家の周り 20.3
4 幼稚園・保育園・学校 23.6 4 スイミングスクール(スイミングクラブ) 22.5 4 スイミングスクール(スイミングクラブ) 19.2 幼稚園・保育園・学校の体育館 20.3
5 スイミングスクール(スイミングクラブ) 16.1 5 スポーツクラブ(フィットネスクラブ・少年団含む),トレーニングセンター・ジム 15.0 5 幼稚園・保育園・学校の体育館 14.5 5 体育館 14.2
6 自宅や友人・知人などの家 15.8 6 幼稚園・保育園・学校 12.2 6 幼稚園・保育園・学校 13.2 6 スイミングスクール(スイミングクラブ) 13.5
7 自宅や友人・知人などの家の庭 9.0 7 自宅や友人・知人などの家の庭 9.4 7 スポーツクラブ(フィットネスクラブ・少年団含む),トレーニングセンター・ジム 11.0 7 幼稚園・保育園・学校 11.0
8 自宅や友人・知人などの家の中 7.8 8 幼稚園・保育園・学校の体育館 8.8 8 自宅や友人・知人などの家の庭 8.0 8 スポーツクラブ(フィットネスクラブ・少年団含む),トレーニングセンター・ジム 9.5
9 スポーツクラブ(フィットネスクラブ・少年団含む),トレーニングセンター・ジム 7.5 9 プール 7.8 プール 8.0 9 自宅や友人・知人などの家 9.0
10 プール 7.1 10 自宅や友人・知人などの家 6.9 10 自宅や友人・知人などの家 7.5 10 道路 7.2
体育館 7.5
道路 7.5

注)利用率:過去1年間に「よく行った」運動・スポーツの上位5種目のうち、異なる種目でも同じ施設を利用した場合は1回とカウントし、重複分は含まない実利用者数をサンプルサイズ(n)で除して算出
資料:笹川スポーツ財団「4~11歳のスポーツライフに関する調査」2019

3.よく運動・スポーツ、運動遊びをしている
子どもの主な活動場所は

図表3に運動・スポーツ実施頻度群別にみた運動・スポーツ施設の利用状況を示した。本調査では、4~11歳の運動・スポーツ実施状況を把握するため、図表4の基準に基づき、非実施群、低頻度群、中頻度群、高頻度群の4つのグループに分類している。 いずれの頻度群も「園庭・校庭・学校のグラウンド」の利用率が最も高い。しかし、低頻度群37.2%、中頻度群53.9%、高頻度群66.9%と、運動・スポーツの頻度が高くなるにつれて利用率は高くなる。

「幼稚園・保育園・学校」「幼稚園・保育園・学校の体育館」といった回答もあわせると、運動・スポーツ、運動遊びをよく行っている子どもほど、普段から学校施設が主な活動場所であることがわかる。

【図表3】 4~11歳の運動・スポーツ施設の利用率(頻度群別:複数回答)

低頻度群(n=253) 中頻度群(n=538) 高頻度群(n=700)
順位 施設の種類 利用率
(%)
順位 施設の種類 利用率
(%)
順位 施設の種類 利用率
(%)
1 園庭・校庭・学校のグラウンド 37.2 1 園庭・校庭・学校のグラウンド 53.9 1 園庭・校庭・学校のグラウンド 66.9
2 公園 27.7 2 公園 38.7 2 公園 35.0
3 スイミングスクール(スイミングクラブ) 16.2 3 自宅や友人・知人などの家の周り 22.3 3 自宅や友人・知人などの家の周り 27.0
4 自宅や友人・知人などの家の周り 14.6 4 スイミングスクール(スイミングクラブ) 19.1 4 幼稚園・保育園・学校 18.6
5 スポーツクラブ(フィットネスクラブ・少年団含む),トレーニングセンター・ジム 11.5 5 幼稚園・保育園・学校の体育館 14.1 5 スイミングスクール(スイミングクラブ) 17.0
6 プール 11.1 6 スポーツクラブ(フィットネスクラブ・少年団含む),トレーニングセンター・ジム 12.5 6 幼稚園・保育園・学校の体育館 12.7
7 幼稚園・保育園・学校 9.1 7 幼稚園・保育園・学校 12.1 7 自宅や友人・知人などの家 11.7
8 幼稚園・保育園・学校の体育館 8.3 8 体育館 10.4 8 自宅や友人・知人などの家の庭 9.1
9 自宅や友人・知人などの家 7.5 9 自宅や友人・知人などの家 7.8 9 スポーツクラブ(フィットネスクラブ・少年団含む),トレーニングセンター・ジム 9.0
10 自宅や友人・知人などの家の庭 6.7 10 道路 7.2 10 体育館 7.9

注)利用率:過去1年間に「よく行った」運動・スポーツの上位5種目のうち、異なる種目でも同じ施設を利用した場合は1回とカウントし、重複分は含まない実利用者数をサンプルサイズ(n)で除して算出
資料:笹川スポーツ財団「4~11歳のスポーツライフに関する調査」2019

【図表4】運動・スポーツ実施頻度群
実施頻度群 基準
非実施群 非実施(0回/年)
低頻度群 年1回以上週3回未満(1~155回/年)
中頻度群 週3回以上週7回未満(156~363回/年)
高頻度群 週7回以上(364回以上/年)

4.新型コロナウイルス禍でみえてくる
子どもの運動・スポーツ、運動遊びの環境の課題

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、3月から全国の小学校、中学校、高等学校などでは臨時休校を要請され、5月11日時点で全国の86%の幼稚園と小中学校、高校などで休校が続いた。それに伴い、学校運動部活動やスポーツ少年団、総合型地域スポーツクラブといった学校や地域のクラブ、民間のクラブなどでの子どものスポーツ活動も自粛や休止を余儀なくされた。

本調査結果から、わが国の子どもたちの運動・スポーツ、運動遊びの活動の中心は学校施設であることがわかる。全国で約70万人の子ども・青少年が所属するスポーツ少年団の主な活動場所は、7割が学校施設であり(日本スポーツ協会,2019)、また中学生以上のスポーツ活動は学校運動部活動が中心である。言い換えれば、学校以外で身体を動かす機会が乏しく、新型コロナウイルスの感染拡大で学校施設への立ち入りが禁止となれば、たちまち身体を動かす機会を奪われることとなった。

学校以外の主な遊び場所は公園であるが、緊急事態宣言を機に公園の立ち入りや遊具の使用を禁止する自治体や、公園で遊んでいる子どもが近隣住民によって警察に通報されるケースがみられた。文部科学省は休校中の子どもの活動について「児童生徒の健康維持のために屋外で適度な運動をしたり散歩をしたりすること等について妨げるものではなく、感染リスクを極力減らしながら適切な行動をとっていただくことが重要」との公園などで運動することを一部認める見解を示していたが、子どもにとって公園も遊びにくい場所となっていった。そもそも、サッカーやキャッチボールなどのボール遊びを禁止している公園は多く、加えて大声禁止の看板や遊具の撤去など、子どもが公園でできる運動や遊びは限られており、子どもは遊びたくても遊べないのが現状である。

5.子どもに必要なのは身体を動かしたくなる多様な空間

インターネット上では休校中の子どもが道路で遊んでいると迷惑、騒音に感じるという投稿も多数あったようだが、戦前・戦後の日本では、子どもが群れて遊ぶ場所の中心は道であった。街路や路地、道路に加えて空き地や原っぱで多様な年齢の子ども者同士で行う集団遊び、自然遊び、運動遊びをしていた。他にも山や河原、川や池などの自然的な場所や神社・寺、屋敷跡・城跡など、この頃の子どもの遊び空間は多様で各地に分散しており、道がそれをつないでいたため広範囲にわたっていた。しかし、1960年代になると都市の復興や1964年の東京オリンピックに向けて全国で道路整備が進行し、子どもが道路で遊ぶことは禁止され、子どもの遊び空間は大きく減少した。1980年代になると、都市部だけでなく地方でも都市化が進み、出生数は低下し子どもの数は少なくなっていった。公園が唯一の遊び空間となり、遊び集団は同学年化・同年齢化し、遊びの多様性は失われていく。

かつての子どもが道路でしていた遊びは、鬼遊び、ローラースケート、縄とび、ゴムとび、クギさし、メンコ、ベーゴマなど多種多様であった(仙田,1984)。本調査でも道路で運動・スポーツ、運動遊びをしている子どももみられたが、行っている種目は「自転車遊び」「ジョギング・ランニング」「ウォーキング」がほとんどである。

これまで経済の発展や便利な生活を求めるあまり、大人は子どもの遊びの空間をどんどん奪っていき、身体を動かす環境を限定的なものにしていった。子どもの運動量は減少し、結果として体力・運動能力は低下した。

そこで近年では、「子どもの遊び場をどう確保するか」という課題を政策として考え始めている自治体もみられる。東京都千代田区では2013年に「子どもの遊び場に関する基本条例」を制定し、子どもたちが自由に外遊びを楽しむ環境を整えるため、公園や区の施設で時間・場所を限定してボール遊びなどが自由にできる「子どもの遊び場事業」を行っている。ボール遊びができる公園や広場では、遊び場の安全管理や用具を貸し出したり、子どもと一緒に遊んだりするプレイリーダーが配置されている。

東京都足立区では、子どもたちが思い切り身体を動かせる「にぎわいの公園」と、幼児が遊べたり高齢者が静かに過ごしたりできる「やすらぎの公園」に大きく分類し、それぞれにテーマを設定することで、特色ある公園づくりを進めている。2018年に「足立区パークイノベーション推進計画」を策定し、①目的に合わせた公園整備、②区内の全公園を50年かけて計画的に改修、③公園利用のきっかけづくりの3つの戦略で取り組んでいる。

子どもの活動のための「児童公園」の整備は1956年に始まり、高度経済成長によって悪化した子どもの遊び環境の改善のためにさらに整備が進んでいったが、1993年に都市公園法が改正し、児童公園はすべての世代のコミュニティ形成の場としての「街区公園」に変更された。少子高齢化や自然災害への備えなど、時代とともに公園の役割が変化していく中で、誰のための何のための公園なのか、その機能はあいまいになっていったと言える。子どもは環境に大きな影響を受けて育つ。今後、子どもの運動・スポーツ、運動遊びの機会を保障していくためには、公園のみを単体でとらえて改善していくだけでなく、子どもが安全に歩けて自然に身体を動かしたくなるような「道」も含めて、多様な活動空間の整備を都市計画全体としてとらえていくことが必要であり、自治体における子どもの視点に立ったまちづくりや行政施策の実現が望まれる。

笹川スポーツ財団 スポーツ政策研究所 シニア政策オフィサー 武長 理栄

<参考文献>

データの使用申請

最新の調査をはじめ、過去のスポーツライフ・データのローデータ(クロス集計結果を含む)を提供しています。

活用例

  1. 政策立案:所属自治体と全国の比較や調査設計に活用(年齢や性別、地域ごとの特徴をの把握)
  2. 研究:研究の導入部分の資料や仮説を立てる際に活用(現状の把握、問題提起、仮説、序論)
  3. ビジネス:商品企画や営業の場面で活用(市場調査、データの裏付け、潜在的なニーズの発見)
テーマ

スポーツライフ・データ

キーワード
年度

2020年度

担当研究者