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「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。

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日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。

独自のスポーツ事業で洪水対策も行う 神奈川県横浜市 後半

遊水地機能を持ったスタジアム

鶴見川の洪水に対応する新横浜公園

公園緑地管理課長 千葉 廣通 氏

日産スタジアムを含む新横浜公園は、鶴見川の遊水地でもあります。比較的川幅が狭い鶴見川は、昔から大雨が降ると川の水があふれ出し、水害を引き起こしていました。(鶴見川について詳しくは、京浜河川事務所ホームページへ)
下流地域だけで取り組みをしても川の氾濫を制御しきれないため、中流地域での対策として鶴見川多目的遊水地(新横浜公園)が建設されました。建設計画は、当初、建設省(現在の国土交通省)が多目的遊水地として単独で計画し、1984年から現在の新横浜公園の用地を買収をしていましたが、横浜市では、1998年に国民体育大会(国体)を開催することが決定していたため、総合陸上競技場が必要でした。そこで、横浜市が河川の中に競技場をつくるというアイデアを建設省(国土交通省)に提案し、1989年に建設省と多目的遊水地事業に関する基本合意を締結し、新横浜公園を建設することができることになりました。1992年に建設および管理に関する協定書を締結し、この協定の締結を受けて、用地買収を開始しました。競技場を建設するには相当な面積が必要なので、本来であれば多額の費用負担が発生するところ、国土交通省が約61%の土地を取得することになり、市としても大きな負担軽減となりました。1994年には日産スタジアムの建設に着手し、1997年10月には竣工、1998年3月からオープンしました。

洪水が発生した場合に備えているため、新横浜公園の建築にはいくつかの特徴があります。日産スタジアムの1階部分は1,000本以上の柱になっているので、水が大量にあふれた場合はそこに水が流れ込むようになっています。公園全体で冠水エリアが分けられており、公園北側の広場なども、水を貯められる構造になっています。年に1~2回大雨や台風などで冠水しており、2011年は8月26日のゲリラ豪雨の際に5万4,000m3の洪水調節量を記録しています。日産スタジアム建設以降で最も洪水調節量が多かったのは、2004年の10月です。台風22号襲来により、125万m3の洪水調節量を記録しました。冠水エリアが最も広い三次冠水域に達し、日産スタジアムの1階部分にも水が流れ込みました。
水がひいた後は、園路や園地に堆積した土砂やゴミなどをホースで洗い流し、消毒します。ネットに引っかかったゴミなどは、手作業で撤去します。作業をしている間は施設の利用はできません。2004年の台風のときは、一連の復旧作業に10日間を要しました。

新横浜公園は、日産スタジアムも含めて、環境創造局の所管する施設で、指定管理者制度を導入しており、公益財団法人横浜市体育協会・横浜マリノス株式会社・管理JV共同事業体が指定管理者として施設を管理運営しています。環境創造局では、公園全体の管理を行っています(健康福祉局が所管するスポーツ医科学センターを除く)。具体的には、管理運営について指定管理者との連絡調節や、修繕に関する調整などを行っています。また、公園には現在未公開となっている箇所があります。整備を予定している未公開の部分については、公園緑地整備課が管理しており、公開できるように整備を行っています。(指定管理者の業務内容の詳細はこちら)

公園内の多彩なスポーツ施設

総面積70.4ヘクタールの新横浜公園内には、日産スタジアムのほかにもさまざまなスポーツ関連施設が集結しています。テニスコートは10面あり、大変な人気です。運動広場や野球場は平日は比較的空いていますが、土日は多くの人が利用しています。投てき練習場もあり、日産フィールド小机とあわせて陸上競技連盟公認の施設です。ネーミングライツ導入前ですが、2003年に日産スタジアムで開催された「日本陸上競技選手権大会」のときには、室伏広治選手が活躍しました。大規模な大会だけではなく、小さい規模の大会にも利用されています。
公園内には道路が通っているのですが、高架下にはインラインスケート広場やスケボー広場があります。インラインスケートやスケートボードは、道路や小さな公園でやると危険だということで、ニーズがかなりあります。当初は利用料金をとっていたのですが、利用者のニーズを汲んで管理手法を工夫して、現在は無料で利用いただいています。
日産スタジアム内には、横浜市スポーツ医科学センターがあります。ここでは、リハビリや研究などを行っています。子どもの障害療法も行っており、さまざまな動きのデータをとり、障害を軽減するためにどのような運動が効果的かなどを研究しています。自治体でこのような本格的なスポーツ医科学センターを運営しているところは珍しいのではないでしょうか。
スポーツ医科学センターは健康福祉局の所管です。新横浜公園とは別に、健康福祉局で指定管理者の公募を行い、横浜市体育協会が単独で指定管理を行っています。日産スタジアム本体と共用している設備も多いため、相互に協力して管理運営を行っています。
スポーツ医科学センターと併設して、日産ウォーターパークがあります。22種類の温水プールや施設があり、子どもから大人まで楽しめます。
日産スタジアムや野球場などは、営業活動を行いながら、時間が空いているときには自主事業などで地元の方たちにさまざまな体験をしていただいています。さらに、ワールドカップスタジアムツアーを行っておりますので、多くの人に日産スタジアムの魅力を知っていただきたいです。子どものスポーツ大会などにも利用していただいておりますので、スタジアムでの体験が将来の夢につながればいいなと思っています。

横浜市 林 文子 市長

市長からのコメント

横浜市 林 文子 市長

横浜市にとって、スポーツ振興は大変重要な施策と考えております。
2010年12月に2010年度を初年度とした、2013度までの4か年計画である「横浜市中期4か年計画」を策定しましたが、このなかに、2つの目標を入れました。
ひとつは、「市民の皆様が気軽にスポーツを行う環境が整っており、子どもから高齢者まで、健康で心豊かな生活を送っています。」と、2つ目が、「市内各所でさまざまなスポーツイベントが開催され、プロ選手や世界の一流選手のプレーを通して、観戦する市民も夢や感動を共有しています。また、多くの人が横浜を訪れることにより、まち全体が活気にあふれています。」というものです。

本市では国際トライアスロン大会や国際女子マラソンなど、数多くの国際大会が開催されていることや横浜DeNAベイスターズ、横浜F・マリノス、横浜FC、2011年度から新たに発足したプロバスケットチームの横浜ビー・コルセアーズなど、多くのプロスポーツチームが本市に活動の拠点を置いております。
このような国際大会の開催や横浜のプロスポーツチームを応援することによって、横浜のまちを活性化するとともに、子どもたちに夢や感動を与えていきたいと思っております。

スポーツによるまちづくり