渡邉: 職員や村民からのアイデアや提案を聞く仕組みがあるんですか。
須藤: 定期的に各種団体や各集落などから約50~60人が集まって、「村づくりを語る会」を開催しています。机を囲んで討論するんですが、毎回、各自が自分たちの取り組みを発表している。最初は嫌がって誰も話す人がいなかったが、今では皆んな自分たちの取り組みを自慢したくてしかたがない。そういうところからひとつずつヒット商品が出てきています。
渡邉: 「村づくりを語る会」はいつから始まったのですか。
須藤: 今年で6年目になりますね。
渡邉: 語る会が発足してから生まれた商品には何がありますか。
須藤: 生キャラ煎餅、バジルアイス、抹茶あんまん、アマランサス煎餅、自然薯、ながいも焼酎などですね。
また、08年から「きのこの里づくり」に取り組んでいます。現在、きのこの生産者は150人くらいになりました。
森林に恵まれた村内には、シイタケ栽培の原木になるコナラの原生林があり、これを村で伐採して原木を供給し、各集落でシイタケを栽培しています。
当初、「きのこを作っても、どうやって販売していくのか」と言われましたが、「儲けるために作るんじゃない、新郷村は長寿の村で知られ、青森県内では男が1番、女は5番目に長生きなんだ。それを守っていくために体と頭を働かせよう、きのこを作るために山へ行き、体を動かして収穫しよう、きのこの栽培は健康長寿に最高なんだよ」と説明したんです。今では、出荷数も年々伸びていますよ。
渡邉: 村長はどうして「村づくりを語る会」を始めたのですか。
須藤: 村をみんなの力で何とかしようと思いました。「村づくりを語る会」も最初はなかなか人が集まらなかったけれど、今は開催日のお知らせだけでちゃんと集まってくれますね。それだけ、みんなが元気になってきた証拠だと思いますね。
渡邉: そうした雰囲気づくりをして、村民を盛り上げてきたのは村長のリーダーシップがあったからですね。行政と村民が一緒に村づくりを進めていく姿勢とみなさんの構想力がうまくつながっているんですね。
須藤: 新郷の村づくりは、スポーツ関係者や各種産業、または集落単位でそれぞれチームごとに取り組んでいます。各チームの取り組みに対して、一緒になって喜んであげたり、自分のことのように自慢してくれる、そういう雰囲気を作ることが行政の役割だと思います。
今はものづくり観光の方向で進んでいます。行政は口や手を出しません。「川代ものづくり学校」は地元の人たちが先生になって、地元の人たちがそばを作り、布草履を作る、煎餅をつくる。地元の人が運営し、維持管理費は村が出しています。廃校になった校舎を活用して観光客を招いて、地域の活性化につなげていますよ。
渡邉: 子どもたちに関してですが、村では今年度から小中学校の給食費を無料化したそうですね。
須藤: 子どもたちは家族だけでなく、地域全体で守っていかなければ、地域の宝にならないんだということです。親の生活費の負担軽減と地元産の食材を使用する地産地消も兼ねています。また、養育費軽減と商店活性化のために、15歳までの260人くらいのすべての子どもに年間1万2,000円の「こども商品券」を交付しています。今年で3年目ですが、村内のお店なら何を買ってもいいんですよ。村の商店を守らないと、村民の生活にも支障がでますからね。
さらに、今検討しているのは22歳までの医療費を無料化することです。
渡邉: そうですか。人口減少に歯止めをかけるにはやはり雇用の問題がありますね。
須藤: 新郷村はいい湧水があるので清涼飲料メーカーの工場を誘致したい。雇用の場を確保していきたいと思っています。現在はふるさと活性化公社が大きな働き場所で、30、40代が25、6人、温泉館でも十数人が働いている。特産品などで収入が上がれば、それに伴って雇用も増える。収入が上がるところには人が集まってくる。何とかそういう村を作りたいのです。大きな建物を建てれば村が元気になるわけではない。地域が元気になるために行政と村民が知恵を出し合って収入を上げ、それを再び地域に還元していきたい。10年、20年後もここで暮らす人が健康で元気でいるためには、スポーツもむらづくり施策に組み合わせて、高めていきたいと思います。
渡邉: そうですね。課題が山積するなかで、いろいろな施策を組み合わせながら、村づくりを進めておられることがよくわかりました。いろいろな施策の一つとしてスポーツを触媒にして人と人をつなぎ、村づくり・村おこしを進めていただきたいと思います。
今日はほんとうにありがとうございました。