1.はじめに
住民が健康になれるまちづくりとして、「健康都市」や「アクティブシティ」といった取り組みが国内外で進められてきている。SSFのWEBコラムでも、英国リバプール市のアクティブシティ戦略や、TAFISA(The Association For International Sport for All:国際スポーツ・フォー・オール協議会)のグローバルアクティブシティの取り組み等を以前ご紹介した。いずれも、スポーツ関係者の発案やネットワークで広がった取り組みである。その後も、アクティブシティの取り組みは続けられている。
本稿では、現在のアクティブシティの国際的な事例として、欧州におけるアクティブシティ推進事業「PACTE(Promoting Active Cities through Europe)」をご紹介する。PACTEは、「Sport and Citizenship(スポーツ&シチズンシップ)」というNPOシンクタンクが主導する事業である。
2.NPOシンクタンク「スポーツ&シチズンシップ」とは
「スポーツ&シチズンシップ」は、欧州委員会がスポーツ白書を採択して数週間後の2007年9月、ベルギーの首都ブリュッセルで設立された。スポーツ政策の分析やスポーツの社会的影響に関する研究を行う、欧州唯一の独立系シンクタンクである。チームメンバーはスポーツ関係者が中心で、スポーツビジネスやスポーツ法、政策の分野でキャリアを築いてきた人々が入っている。執行理事会や評議員会メンバーにもスポーツ関係者が多い。国際スポーツ団体や欧州の国際組織、欧州各国の自治体とつながりがあり、コンサルティングを広く行っている。
「スポーツ&シチズンシップ」は、欧州連合(EU)からの資金(EUのErasmus+プログラム助成)によって、欧州におけるアクティブシティ推進事業「PACTE(Promoting Active Cities through Europe)」を2018年1月に開始した。PACTE事業のサイトには、関係団体として、TAFISAやリバプール市があげられており、リバプール市のアクティブシティ戦略やTAFISAのグローバルアクティブシティ事業とも関係していることが伺える。
3.PACTE事業の概要
PACTE事業は、「Promoting Active Cities through Europe(欧州全域にアクティブシティを推進する)」の略称である。その名の通り、欧州の自治体を対象としているが、EU域外である英国も含まれている。主な事業内容は、自治体の身体活動状況調査やアクティブシティの啓蒙普及活動等である。
「We are designed to move. Our cities should be too.(人は動くようにできている。ならば、街もそうあるべき。)」を活動のモットーとしている。その背景には、欧州において身体を動かさない生活が大きな課題となってきたことがあげられる。およそ2億3500万人が運動不足と言われているが、人口の70%が都市生活者であることから、身体活動を促すようなまちづくりが重要と考えられている。(国連のデータによると、都市の定義は幅広く、日本の殆どの自治体が都市に該当する)
4.PACTE事業の推移
欧州全域にアクティブシティを推進するPACTE事業のこれまでの推移をみていく。当初は2018年から2020年までの3年間の事業として計画・実施されてきた。この期間に行った事業内容は以下の通りである。
2018年
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1月にベルギーのブリュッセルで開催されたキックオフ会議によって事業開始。まずは欧州広域にわたって調査が行われた。11月には、英国のリバプール市で「アクティブレジャーのワークショップ」を開催した。
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2019年
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リソース開発とトライアルの年と位置付け。1月にドイツのベルリン市で「アクティブ教育のワークショップ」を開催。10月にはフランスのパリ市で「アクティブトランスポートのワークショップ」を開催。10月から12月にかけて都市向けのキャンペーンを展開。
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2020年
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価値化とコミュニケーションの年と位置付け、引き続き、9月までキャンペーンを継続。7月にブリュッセルでパートナー会議を開催し、12月にかけてアンバサダー都市を選定。
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その後、第2弾として2022年6月から3年間の「PACTE+」事業が開始された。その概要は以下の通りである。
2022年
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6月にブリュッセルでキックオフ会議を開催。9月まで、開発したマトリックスの使用について自治体からのフィードバックを収集・分析。9月から10月にかけて、マトリックス導入実施に向けた改善・適合化。
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2023年
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5月にスイスのエシャレン地域で現地介入を開始。9月にアイルランドのリムリック市でアクティブガバナンスに関するワークショップを開催。10月にドイツのミュンヘン市で「Matrix of change(変化のマトリックス)」としてワークショップ開催。
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2024年(予定)
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2月にオーストリアのグラーツ市でアクティブワークプレイス(職場)に関するワークショップを開催。5月に「Matrix for change(変化のためのマトリックス)」とする。アクティブシティのガバナンスやアクティブワークプレイスに関する報告書作成。6月にマトリックスガイドライン公表。9月にノルウェーのフレドリクスタ市でアクティブスクールに関するワークショップを開催。10月にフランスのアンジェ市でアクティブモビリティに関するワークショップ開催。11月にパイロット都市の事例分析および、ドイツのミュンヘン市でアカデミックワークショップ開催。
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2025年(予定)
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都市への情報発信・普及を目的としたワークショップ開催。6月にブリュッセル市で最終イベントを開催。
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これらの推移をみると、当初はレジャーや教育などの「活動」においてアクティブであることが推進されていたが、第2弾のPACTE+事業ではテーマがガバナンスや職場・学校、モビリティへと拡大し、場所・移動手段・全体管理の在り方を含む総合的な環境づくりという観点でアクティブシティが推進されていることがわかる。
5.PACTE事業の成果:行動計画作成支援ツール「Matrix for Change」
2022年以降の「PACTE+」事業における主要な成果は、「PACTE Matrix for Change(欧州全域にアクティブシティを推進する変化のマトリックス)」ツールの開発である。このマトリックスは、自治体のアクティブシティに向けた行動計画策定を支援するツールとして、これまでに確認できた成功要因等をもとに開発された。まちづくり・環境づくりこそが、スポーツ・身体活動の実施や健康的な生活につながるという考え方に基づいている。オンラインのマトリックスツールにアクセスし、実施したい項目や重視したい項目にチェックを入れることで、その自治体に合った行動計画案が自動的に作成される仕組みとなっている。
住民が健康的な生活を送ることができるような、アクティブな環境構築を支援するため、PACTE事業では4つの環境づくりに焦点を置いてきた。それらは、「アクティブシティ(Active City)」「アクティブスクール(Active Schools)」「アクティブモビリティ(Active Mobility)」「アクティブワークプレイス(Active Workplace)」の4つである。いずれも、住民の日常生活にある場所・手段であるため、リーチしやすいと考えられている。
マトリックスは、この4分野で分かれており(2024年9月時点)、各分野に「知識と認識」「プログラムとイベント」「空間と場所」「協力とパートナーシップ」「モニタリングと継続的な改善」の5つの中分類がある。そして、中分類ごとに選択項目が設定されている。その回答内容によって、各分野の行動計画が自動作成される。
例として、まちづくり全体にかかわる「アクティブシティ」分野と、生涯にわたってアクティブに過ごす基盤となる「アクティブスクール」分野の項目を以下にご紹介する。
●マトリックスの例1:アクティブシティ分野の行動計画策定項目
知識と認識
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[身体活動の利点]
・住民の身体活動の状況やニーズを理解するために調査を実施する。
・身体活動の利点について、自治体や住民の認識を高める。
・身体活動の取り組みを支援・推進する自治体の役割を説明する。
[身体活動レベル]
・住民の身体活動レベルを測定する。年齢・性別・社会経済的状況・障害の有無等による違いを考慮する。
・国の指針や国際的なガイドラインを用いて、身体活動レベルの目標や推奨値を設定する。
[身体活動のブランド化]
・自治体内で「アクティブシティ」ブランドを構築する。
・アクティブになるよう住民を動機づけ、身体活動への参加を促進するためのキャンペーンを開発する。
・ほかの自治体のアプローチをベンチマークとして比較する。
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プログラムとイベント
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・自治体内の主要ターゲット層が参加する身体活動プログラムやイベントを企画・実施する。
・最も運動不足な層を対象として、行動変容のモチベーションやポジティブな影響を与えられるようなプログラムやイベントを開発する。
・市内で住民が利用できる身体活動機会(プログラム・イベント・スポーツクラブ・施設など)が簡単にわかるプラットフォーム(オンラインなど)を開発・運用する。
・社会経済的に恵まれていない市民に、コストの障壁を取り除く取り組みを提供・実施する。(無料または割引の活動など)
・自治体内で開催されるすべてのスポーツイベントについて、身体活動レガシーを計画する。
・身体活動に関する経験や好事例を、ほかの自治体や関係者(地域内・国内・海外)と共有する。
・より大きなネットワークに参画する。例えば、欧州スポーツ週間やTAFISAのワールドウォーキングデーといった国内外の身体活動推進の取り組みに参加する。
・健康教育プログラムや予防検診、慢性疾患の予防、総合的な健康増進のための支援サービスを住民に提供できる医療提供者と協力する。
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空間と場所
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・自治体内にある既存の身体活動インフラや施設を特定し、現在の利用状況や地域における浸透度を評価する。
・新たな施設や身体活動機会を計画・開発する。利用者に優しい施設(照明があり安全で清潔な施設や自転車道・歩行者道・スケートパークなど)
・住民が徒歩で(例:1.5㎞圏内)広場や身体活動インフラにアクセスできるようにする。
・運動しやすい街並みを設計するなど、市のインフラ計画に身体活動促進要素を取り入れる。
・身体活動インフラの計画に市民を巻き込む。(住民参加のプロセスとする)
・学校スポーツやスポーツクラブのインフラを利用時間外に開放することを推進する。
・オープンアクセスのスポーツ・身体活動インフラにおいて、指導者やプログラム・イベント等を住民に提供する。
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協力とパートナーシップ
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[ステークホルダーのマッピング]
・身体活動分野で働く自治体内の関係者を特定し、彼らが何をしているかを見極める
[分野横断的な連携]
・自治体内の主要部局間で、身体活動分野における協力関係を構築する。(スポーツ・健康・環境・交通・観光・都市計画など対象部局を選択)
・自治体と外部の主要関係者との間で、身体活動分野における協力関係を構築する。(教育機関・スポーツクラブ・フィットネスセンターなど対象を選択)
・関連する特定の自治体部局と外部の関係者を集めた分野横断的な連携を構築し、身体活動促進を共同で実施する。
[住民の関与]
・身体活動に関する政策・戦略・アクション・取り組みの策定と実施において、住民参加プロセスによって住民が関与できるようにする。
・自治体のアクティブシティ戦略や身体活動促進への参加に向けて、地域のアンバサダーを選任する。(スポーツ選手・有名なボランティア・医療専門家・学術専門家・政治家・メディア・市民など)
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モニタリングと継続的改善
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[計画]
・重要分野を見極めて、自治体の身体活動政策・戦略を開発・実施する。(重要分野は、知識・認識、プログラム・イベント、空間・場所、協力・パートナーシップ、モニタリング・継続的改善の5つから選択)
・自治体内で身体活動に関する政策・戦略・取り組みを策定する際には、エビデンスに基づくアプローチを採用し、データを用いて戦略を裏付ける。
・特定の主要スタッフの責任のもとで、身体活動政策の実施を優先する。
・自治体の議会において、身体活動を明確な任務として捉えさせ、議員をリーダーとして任命する。
・自治体の身体活動政策・戦略の実施や身体活動に関する取り組みに向けて、可能な場合はリソースを特定して配分する。
・身体活動が最も不足していると考えられる層や地域に対して、リソースと取り組みを集中させる。
・アクティブモビリティ政策・戦略を策定して実施する。
・アクティブスクール政策・戦略を策定して実施する。
・アクティブワークプレイス政策・戦略を策定して実施する。
[評価]
・自治体の身体活動に関する行動や政策・戦略案の有効性をモニタリングするために、KPI(重要業績評価指標)を作成・承認・共有して測定する計画を策定し、実施する。
・市場調査会社や大学などの有資格機関や自治体内の関連部署と協力して、内部でモニタリングを実施する。
・建設的なフィードバックを入手して評価し、今後の活動の改善に役立てる。
・KPIや調査を通して得られた評価結果を活用し、当該自治体が健康でより良く幸せに暮らせる場所であることを示す。
・自治体内に優れた身体活動の取り組みや実践があれば、認定や表彰などによる評価を求める。
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アクティブシティ行動計画策定に向けた項目は、まちづくり全体にかかわるものであり、これらの項目だけでなく、アクティブスクール(学校)やアクティブワークプレイス(職場)、アクティブモビリティ(移動手段)の項目と合わせて総合的に計画を立てる必要があることがわかる。
●マトリックスの例2:アクティブスクール分野の行動計画策定項目
子供の頃から身体活動のスキルや心がけを身につけること、すなわちフィジカルリテラシーは読み書きと同じくらい重要である。(フィジカルリテラシーの定義については、以下のページを参照)
幼稚園から小学校・中学・高校・大学に至るまで各教育環境における体育や身体活動は、身体的な健康だけでなく、学業成績の向上や授業への出席率の向上、より良い行動やチームワーク、リーダーシップ、モチベーションアップ、自信や自尊心にもつながる。大人になったときには、健康で幸福で活動的な市民となり、自治体の発展にもつながる。そんな人生の基盤として、アクティブスクール行動計画の策定が推奨されている。その項目は以下の通りである。
知識と認識
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・校長・教師・事務職員等に、アクティブスクールになることや生徒たちが活動的になることのメリットを知らせる。
・校長・教師・事務職員等に、生徒たちをもっと活動的にするために何ができるかを知らせる。
・社会の大部分でアクティブスクールへの参加の重要性を強調するために、アドボカシー施策を実施する。(例:地域全体のコミュニケーション戦略を実施する、最も運動不足な人たちにリーチするためにターゲットを設定する、アクティブスクール戦略のプラットフォームを構築して活動内容を周知する、体育や身体活動の重要性について保護者の認識を向上させる)
・アクティブスクールを自治体内でブランド化する。
・アクティブスクールを推進するために、スポーツに理解ある各種意思決定者との関係を築き、エトス(倫理的な心的態度)を共有できるような政治家に接触し、彼らからの支援を活用して計画を成功させる。
・ほかの自治体のアプローチをベンチマークとする。(好事例を共有し互いに学びあう)
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プログラムとイベント
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・学校の現場向けに設計されたプログラムとイベントを開発する。(授業前・授業中・放課後の活動を含む)
・モチベーションや行動変容にポジティブな影響を与えることに焦点を置いたプログラムをデザインする。
・学校現場における多様なターゲット層を想定する。(例:学校や大学等の教育機関で学ぶ生徒・学生すべて、障害のある生徒、社会経済的に恵まれない生徒、女子生徒、少数民族出身の生徒等)
・授業時間内・外におけるスポーツ・身体活動に生徒が参加できる機会を支援する。(例:昼休みや放課後に児童が参加できる活動を提供するよう促す、サマーキャンプなど季節性のスポーツキャンプの実施を支援・促進する、費用や施設提供を支援する、スポーツコーチなどによるトレーニングを学校勤務の教師や事務職員が受けられるよう支援・促進する)
・学校でオンラインプラットフォームを構築し、学校現場での身体活動アイディアに関するリソース(ツールキットやスターターキットなど)にアクセスできるようにする。
・自治体内の知識・経験や好事例の共有を促すとともに、ほかの自治体や外部ステークホルダーとも共有する。地域レベル、国レベル、国際レベルでの共有も考えられる。
・国レベル・国際レベルの身体活動の取り組みなど、地域内の学校がより大きなネットワークに参画することを促す。(TAFISAのワールドチャレンジデーなど)
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空間と場所
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・自治体内の学校がスポーツ・身体活動インフラを利用できるようにする。
・自治体内の生徒が無料または割引で地域スポーツ施設(ジム、プール、球場など)を利用できるようにする。
・生徒が活動的でいられる場所として教室を活用することを促す。
・通学でアクティブモビリティ(ウォーキング、サイクリング等)を推進する。(大人が同行する集団登校である「ウォーキングバス」スキームの確立)
・自治体内の学校における一つの解決策としてアクティブラーニングを推進する。
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協力とパートナーシップ
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・統合的なアクティブスクール戦略を開発するため、分野横断型で複数のステークホルダーが関与する協力体制を構築する。
・関係するステークホルダーすべて(幼稚園・学校・大学・スポーツクラブ・地域関係者等)が議論し、優先事項に沿って目標や目的を共有し、成功に向けて明確な計画をともに構築できるよう、ネットワークとプラットフォームを開発する。
・課外活動への参加を推進し、生涯にわたる身体活動参加を支援するために、地域社会とのつながり構築における教育機関の役割を自治体が重視する。
・学校・大学から地域団体・スポーツクラブ等へ身体活動機会がつながるよう、明確でアクセス可能なパスウェイを作り上げる。
・自治体内の関連部署すべて(教育・スポーツ・文化・健康・交通部局など)をアクティブスクール行動計画へ招き入れ、貢献してもらう。
・学校で身体活動の推奨値を提供できるよう、国レベルのステークホルダーやカリキュラム、身体活動計画・ガイドラインと協働する。
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モニタリングと継続的改善
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・アクティブスクールについて明確な政策的枠組みを開発し、教育とより広範な社会的目的をつなげるため、政策立案者と実践者の間の対話を促進する。
・アクティブスクール戦略において、タイムラインや報告、KPI(重要業績評価指標)などを明確に定義して開発する。
・アクティブスクール戦略の計画およびモニタリングにおいて、自治体内のステークホルダーを含む「アクティブスクールネットワーク」を活用する。共通の評価システムを定義する。
・国や国際的なガイドラインに基づいて、学校現場における身体活動参加のターゲットを設定する。身体活動の測定システムを確立する。
・自治体内のすべての学校がスポーツ・身体活動への参加機会を作って実施するために、「アクティブスクールコーディネーター」を雇用する。
・学校区に住む住民が直面している問題やニーズに合わせて、アプローチ方法を変える。最貧地域や最もサポートが必要とされている地域を確認するため、自治体内の他の部署(健康・文化・住宅関係など)と協働する。
・アクティブスクールの提供や関連施設・設備・リソースの提供を支援するため、適正な予算を自治体が承認できるようにする。(例:アクティブスクール提供支援団体と協働で効果的な計画と予算編成に関するトレーニングを提供する、活動支援資金の柔軟な活用を認める、ポスターやソーシャルメディア等を活用したアクティブスクールのプロモーションに投資する)
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6.まとめ
上記のとおり、アクティブシティ(まちづくり)やアクティブスクール(学校)と同様、アクティブモビリティ(移動手段)やアクティブワークプレイス(職場)といった分野でも、それぞれの観点に基づいて中分類項目が設定されている。このマトリックスはオンラインで公開されており、重視したい項目や実施したい項目を選択することで、自治体が目指す行動計画が自動的に作成される便利なツールである。欧州におけるアクティブシティ推進という観点で開発されたツールであるため、アウトプットをそのまま日本に当てはめることはできないかもしれないが、グローバルな観点を踏まえた計画策定を考えるなら参考になるのではないか。日本と共通する部分や異なる部分を確認するのにも役立つだろう。
2024年10月には、このマトリックスにアクティブスポーツクラブ(Active Sport Clubs)が新たに追加された。これは、スポーツクラブが地域社会に果たす役割の大きさへの期待が背景にある。欧州のスポーツクラブは、競技スポーツだけでなくコミュニティスポーツの推進も担う団体であり、スポーツを通して参加者同士の交流を図り、人としての成長や社会的統合を促す存在と考えられている。
次回は、PACTE(欧州におけるアクティブシティ推進)事業の中で分析された好事例の中から、アクティブスクールの事例にフォーカスしてご紹介するとともに、ライフステージの基盤となる幼児に焦点を当てた取り組みも紹介する。
笹川スポーツ財団 特別研究員 本間 恵子
本間 恵子のコラム