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「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。

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箱根駅伝 2024年 第100回大会展望

2年連続大学駅伝3冠に隙なし駒澤、阻止する大学はあるのか?

佐野 慎輔(尚美学園大学 教授/産経新聞 客員論説委員/笹川スポーツ財団 理事)

第55回全日本大学駅伝で4連覇を果たし、笑顔でフィニッシュする駒澤大アンカーの山川拓馬。岩壁峻撮影。撮影日=2023年11月5日(写真:毎日新聞社/アフロ)

第55回全日本大学駅伝で4連覇を果たし、笑顔でフィニッシュする駒澤大アンカーの山川拓馬。岩壁峻撮影。撮影日=2023年11月5日(写真:毎日新聞社/アフロ)

「異次元の強さ」―いまの駒澤大学にはそんな形容しか思い浮かばない。記念の第100回大会、話題の中心にいるのは駒澤にほかならない。前人未踏の2年連続「大学駅伝3冠」に立ちはだかる大学はあるのか、それを語ることすらはばかられる充実ぶりである。

 10月の出雲駅伝、11月の全日本大学駅伝では1区で先頭に立つと、一度もほかの大学の背中をみることがないまま完全優勝を飾った。とくに全日本では2位青山学院大学に3分34秒の大差をつける圧勝だった。どこが3冠を阻止するのか、などと考えてもせん無いことなのかもしれない。

 全日本の後、今年から総監督となった大八木弘明氏の後を襲った藤田敦史監督はこんなふうに話した。「強いレースができたと思います。他大学にも強さを示せたのではないでしょうか」―語尾を強めるでもなく、淡々と話していたところに逆に自信がのぞいた。

 追う一番手と目される青山学院大学の原晋監督が「学生駅伝史上、最強軍団ですね」と評し、國學院大学の前田康弘監督も「駒沢さんはもう箱根駅伝は殿堂入り、(実業団対抗の)ニューイヤー駅伝に出てもらって」と嘆いてみせたのは、失礼ながら本音ではないにしろ、かなりそれに近いニュアンスではなかったか。

 前回の箱根駅伝優勝メンバーが7人残った。4年生が中心のチーム編成だが、藤田監督はそれを意識してか、夏合宿では下級生の強化を図ってきた。チーム全体の底上げが進み、駅伝メンバー入りに向けたチーム内の争いがさらにレベルをあげる好循環が強さを支える。

 今年、駒澤には「Sチーム」と呼ばれる世界を視野に入れた選手だけが抜擢されたチームが編成された。主将の鈴木芽吹と3年の篠原倖太朗、2年の佐藤圭汰という各年代のエースたちでOBの日本長距離界のエース田澤廉(トヨタ自動車)とともに大八木総監督の指導をうける。特別選抜の存在はひとつ間違えればチームの瓦解につながりかねないが、駒澤に限れば誰もが納得する実力者揃いであり、むしろその練習ぶりに刺激を受けている部員は少なくない。彼ら3人の歴代エースを中心に山登り5区の山川拓馬、山下り6区の伊藤蒼唯(ともに2年)も充実ぶりが伝えられる。

 出雲駅伝が創設された1989年以降、1970年創設の全日本大学駅伝と合わせて大学3冠を実現した大学は1990年シーズンの大東文化大学に2000年度の順天堂大学、2010年度の早稲田大学と2016年度の青山学院大学、そして前年度の駒澤の5校限り。過去4校は残念ながら届かなかったが、まさに隙なしの駒澤は夢を果たせるだろうか。藤田監督は「青学は(出雲の5位から)距離が伸びた全日本で順位をあげて、さらに長くなる箱根ではもっと状態をあげてくる。油断はできない」とライバルの名をあげて気を引き締める。

追う青山学院、あなどれない中央、國學院にダークホースは城西、創価

目標順位を掲げる青山学院大学・原晋監督。恵比寿ガーデンプレイスにて。撮影日=2023年12月11日(写真:日刊スポーツ/アフロ)

目標順位を掲げる青山学院大学・原晋監督。恵比寿ガーデンプレイスにて。撮影日=2023年12月11日(写真:日刊スポーツ/アフロ)

 毎年、箱根駅伝に際して「大作戦名」を掲げる青山学院の原監督。100回大会に向けたキャッチコピーは「負けてたまるか大作戦」だった。王者駒澤の強さを認めつつ、「『負けてたまるか』は攻めの言葉だ」と意欲をのぞかせる。

 駒澤とは逆に前回メンバーが7人抜けた。しかし4年の佐藤一世、3年の太田蒼生、田中悠登とエース級の力を持つ。さらに昨年5区区間3位の若林宏樹(3年)に出雲と全日本で好走した黒田朝日(2年)ら1人ひとりの力は駒澤に劣っているとは言えない。チームの5000mの平均タイムは140秒と抜群のスピードを誇る。原監督は「山の走り」をポイントにあげ、誰を起用するか作戦を練っている。

 初優勝した2015年第91回大会以来、9大会で優勝は6回。直近4大会では青山学院と駒澤が交互に優勝するなど経験も豊富である。名将に率いられた選手たちが波乱を起こす可能性は決して低くはない。

 前回2位の中央大学はレベルアップが進む。エース吉居大和は今シーズン8月に新型コロナウイルスに感染するなど調子を落とし、全日本も区間11位に沈んだが体調も復帰。大学生活最後の大会にすべてをかける。弟の駿恭(2年)、中野翔太(4年)に加え、全日本3位の原動力となった溜池一太、吉中祐太(いずれも2年)、本間颯(1年)らが期待通りの走りを見せればあなどれない存在となる。

 青山学院、中央と並んで駒澤を追う存在と目されるのが國學院大学である。出雲は4位、全日本は3位と優勝争いに絡めなかったが、実力をつけてきた1、2年生が10人エントリーメンバー入り。若い選手の爆発力が原動力になるかもしれない。調子を落としていた3本柱の伊地知賢造(4年)、平林清澄、山本歩夢(いずれも3年)が本来の力を発揮できれば十分優勝争いに絡んでいく力はある。

 上位を虎視眈々とうかがっているのが創価大学と城西大学。前回8位の創価は出雲が過去最高の2位で全日本は6位と着実に実力を伸ばしている。箱根の5区で区間2位になった吉田響が東海大学から編入し、層は厚くなった。1万m27分台のリーキー・カミナが期待通りに走れば3年前に10区まで先頭を切り、2位に入った再現もありうる。

 城西は出雲3位、全日本5位と台風の目のような存在となった。かつての早稲田大学のスター選手櫛部静二監督のトラック種目を重視した練習が奏効、夏の世界ユニバーシティー大会1万m3位の山本唯翔ら着実に選手たちが実力を伸ばしている。 

 今夏の世界選手権3000m障害6位入賞の順天堂大学主将、三浦龍司は駅伝では苦しんできたものの最後の大会に「結果にこだわってやっていく」と意気込みを語る。このほか今最も注目を浴びているのが東京農業大学1年生の前田和摩だ。10月の予選会では15キロ付近から飛び出し、思い切って前に出る走法で日本人トップの1時間142秒でゴール、母校10年ぶりの本大会出場の原動力となった。中学時代はサッカー部、じっくりと育てたい逸材である。

 第1回大会に出場した4校(オリジナル4)のうち100回大会にもコマを進めたのは早稲田大学と明治大学。早稲田は48大会連続93回目、明治は6大会連続65回目の出場で上位入賞を目標にしつつも大東文化大学や東洋大学シード権争いがやっとか。古豪日本大学は4大会ぶり90回目の出場。薬物絡みの不祥事ばかりがクローズアップされる母校の光となりたい。

  • 佐野 慎輔 佐野 慎輔   Shinsuke Sano 尚美学園大学 教授/産経新聞 客員論説委員
    笹川スポーツ財団理事/上席特別研究員
    報知新聞社を経て産経新聞社入社。産経新聞シドニー支局長、外信部次長、編集局次長兼運動部長、サンケイスポーツ代表、産経新聞社取締役などを歴任。スポーツ記者を30年間以上経験し、野球とオリンピックを各15年間担当。5回のオリンピック取材の経験を持つ。日本スポーツフェアネス推進機構体制審議委員、B&G財団理事、日本モーターボート競走会評議員等