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「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。

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日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。

スポーツを通じてたくさん学ぶ子どもたち(宮城県 角田市)

かくだ版アクティブ・チャイルド・プログラム

笹川スポーツ財団(以下、SSF)が提唱する、地域スポーツ推進をけん引する新たなプラットフォーム「地域スポーツ運営組織(以下、RSMO)」。構想に賛同いただいた宮城県角田市と、2019年9月にかくだ版RSMO「スポーツネットワークかくだ(以下、スポネットかくだ)」を設立しました。「明るく楽しく健康で活力あるまち」を目指しさまざまな取り組みを進める中で、今回は、小学校入学前の子どもたちに楽しみながら体を動かす機会を提供するかくだ版アクティブ・チャイルド・プログラム(以下、ACP)を紹介します。

ACPでは子どもの体だけでなく心も成長



黄と青のチームに分かれてお尻につけたロープの尻尾を取り合う子どもたち

黄と青のチームに分かれてお尻につけたロープの尻尾を取り合う子どもたち

21日、角田市にある中島保育所でACPが実施されました。まず午前950分から4歳児のACPがスタート。30名ほどの4歳児が列をつくって遊戯室に入ってきました。指導するのは仙台大学の原田 健次 教授です。準備運動が終わると、ロープで作ったしっぽをお尻につけて取り合う「しっぽ取り」が始まりました。最初の遊びは誰のしっぽを取ってもいいというルールで行いました。誰かのロープを取ったら、コートの外に置き、取られた子どもはコートの外に置かれたロープをお尻につけてまた参加すること。「543210」の掛け声と共に子どもたちの歓声が遊戯室に響きます。お友達を追いかけて一生懸命ロープを取ろうとする子どももいれば、走り回るだけで楽しい子どもも。次は3チームに分かれて2チームずつの対戦。ロープを取ったら自分の陣地の置かれた箱に入れ、ロープを取られた子どもは自分の陣地に戻り、箱に入ったロープをつけてコートに戻ります。ゲームが終わったときに箱の中に入っているロープが多いチームが勝ちになります。



仙台大学の原田健次教授

仙台大学の原田健次教授

原田教授は「このプログラムは体を動かすことだけが目的ではありません」と説明します。

「しっぽを取られてもまた生き返るというルールを理解して遊べるかが一つのハードルになります。さらに2チーム対抗にすることで、今度はチームの中での自分の役割を考えるようになります。勝敗については、最初は大人が子どもたちに、『リーダー役になって』と教えます。そしてどっちが多かったのかを聞くことで勝ち負けが分かる。2回目は子どもがリーダーになってみんなと一緒に数える。こうしてチームとして戦っていることを経験し、チームのために貢献していることも感じていくのです」

1035分からは5歳児クラスのプログラムがスタート。プログラムは「メチャビー」。「めちゃめちゃ楽しいラグビー」からきた造語です。

1チーム6人ぐらいで編成。コートの両端にはマットが置かれ、ここがゴールエリア。チームでボールを自分たちのゴールまで運び、マットに置くと1点が入ります。ボールを蹴ったり投げるのは禁止。もう一つ大切なルールはボールを持ったまま座らないこと。座ってしまうと上から子どもが乗ることもあり、危険だからです。原田教授がボールを投げ上げるとゲームが始まります。ボールを取って、そのまま友達の間をすり抜けながらゴールに向かうこともあれば、一つのボールを全員で取り合うことも。転んだ子が泣きだすと、原田教授は別の子に声をかけ、その子が慰めに行きました。試合で負けると悔しくて泣き出す子がいましたが、お友達が頭を撫でてくれます。そしてみんな笑顔で挨拶します。

ゲームが終わると笑顔であいさつ。悔しくて泣いてしまう子どももいますが、お友達が慰めてくれます

ゲームが終わると笑顔であいさつ。悔しくて泣いてしまう子どももいますが、お友達が慰めてくれます

「お友達とぶつかり合いながら遊べるのが『メチャビー』の楽しいところ。大切なのはやっていいことといけないことを経験すること。相手の首や顔、頭に力をかけるのは危険です。それを頭で理解するだけではなく、危ないことをしないように自分のこころとからだをコントロールすることを学んでいきます。そして、チームのために自分は何をしたら良いのかを考えるようになります。この遊びでは大人の配慮も必要。子どもたちを2人の大人ではさみながら、子どもがうずくまらないように声をかける。お友達の洋服を引っ張るなど危険な行為があれば、『危ない』と伝えなければいけません。感情が高まってしまい、相手を叩いたり、噛んでしまうこともありますが、それもいけないことだと教える。真剣に伝えれば子どもたちは理解してくれます」



プログラムが終わると、原田教授や担当の保育士、スポネットかくだや市の関係者が集まってブリーフィングを行います。「集団で取り合っているときに子どもが助走をつけて押そうとしたらどうすればいいのでしょうか」という保育士からの質問に、原田先生は「ただ危ないというだけでなく、勢いをつけてぶつかっても力が伝わらないということを伝えてほしい」と話しました。

「出前講座といっても、保育士の方だけでも継続的にACPを行えるようにするのが大きな目的です。私たち研究者にとっても子どもたちと直につき合えるACPは貴重で、多くのことを学んでいます。汗をかきながらみんなで学び合える理想の現場だと私は思っています」

保育所の大槻千春先生

保育所の大槻千春先生

保育所の大槻千春先生も「子どもたちが自分たちで考えながら遊べるのがACPの魅力です」と話します。

「原田先生たちが来るのを子どもたちはとても楽しみにしています。相手を思いやるという体験をさせるのは難しいことですが、ACPでは遊びながら経験できる。子どもたちがお友達を慰めているのを見て、心も成長していると実感しました。自分たちだけではできないことも多く、原田先生からのアドバイスはとても貴重です」

同じ目標を共有することでみえた課題

角田市教育委員会 国井さん

角田市教育委員会 国井さん

スポネットかくだの運営を担当している角田市教育委員会 国井康士氏はSSFと連携してRSMOをスタートさせたことに手応えを感じています。

「角田市も少子高齢化の中、子どもの数も減少しているのに加え、スポーツに携わる若い人材育成も課題となっていました。スポネットかくだ設立後、市内のスポーツ団体関係者が集まり、『明るく楽しく健康で活力あるまち』実現するという大きな目標を共有したことで、限りある資源をうまく使えるようになりました。中でも大きな課題として抽出されたのが子どものスポーツです。『最近の子どもは体幹が弱い』、『じっと座っていられない』、『子どもの遊ぶ環境が大きく変わっている』という声があり、幼稚園や保育所の方に話を聞くと運動する子としない子の二極化が始まっているということでした。そこでACPをスタート。保育所や幼稚園、仙台大学の原田教授など、多くの方に積極的に取り組んでいただいていることに感謝しています。今後の課題は今の取り組みをどのように小学校と連動していくのかということ。また、スポーツを通していかに交流人口を拡大していくのかというのも課題です。スポーツをしようと角田市を訪れた人に、道の駅では角田市の美味しいものや名産品を楽しんでもらう。そうした連携を皆さんと一緒に構築したいと思っています」

「NPO法人スポーツコミュニケーションかくだ」遠藤さん

「NPO法人スポーツコミュニケーションかくだ」遠藤さん

総合型地域スポーツクラブ「NPO法人スポーツコミュニケーションかくだ」のクラブマネージャーで、スポネットかくだの地域スポーツコーディネーターとして参画している遠藤 良則 氏は「それぞれの立場から意見し合うというのは私たちにとって貴重な経験で、横のつながりを持つことでさまざまなメリットを生み出すことができると実感しています」とその意義を強調します。

ACPについては市立保育園から私立の幼稚園・保育園まで垣根なく取り組めているのが大きな特長だと思います。それぞれの代表者が一堂に会して議論や研修をする機会があるのも有意義ですね。成果が出るには時間がかかるかもしれませんが、そうした中でもこつこつとこの取り組みを拡充させていくことが大切。今後もRSMOに取り組むことで地域の資源を有効に活用していきたいと思います」