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「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。

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【下関市】テキスト版 前田 晋太郎市長 対談

スポーツをまちづくりへ
スポーツでアクティブなまちづくり 下関市

2025.3.7

下関市(山口県)
前田 晋太郎市長 対談

〈主な内容〉

海に開かれた自然と文化に恵まれた海峡と歴史の街、下関市。「下関海響マラソン」「ツール・ド・しものせき」は起伏のある過酷なコースであるものの、海峡を見渡せる圧巻の景色が、日本国内だけでなく、海外からも多くの人を魅了するスポーツイベントとして人気です。それ以外にも、「海響アスリート認定制度」の導入、スポーツの新聖地 「J:COMアリーナ下関」の新設、障害のある方の「体育施設使用料の全額減免」、シリコンバレーのような企業が集積する都市を目指した下関市立大学の「コンパクトな総合大学化構想」、「ウォーターフロントの再開発」など、下関市の特性を活かしたやり方で、“優しい風が吹くまちづくり”を進めています。「女性や若者にやさしい、楽しい地方」の代表例とも言える下関市のスポーツを中心とした地域創生の好事例を前田晋太郎市長に伺いました。

下関市勢概要

―― 今回のスポーツでアクティブな街づくりは山口県下関市です。人口はおよそ24万4000人。海に開かれた自然と文化に恵まれた海峡と歴史の街。九州と本州の玄関口であり、古くから国内外の人やモノが行き交う交流都市として栄えてきました。活気あふれる下関市をスポーツを通じてどのようにつくっているのか、前田晋太郎市長にお話を伺いました。

1. 下関市 前田晋太郎市長のプロフィール

下関市 前田晋太郎市長のプロフィール

渡邉理事長  それでは、前田市長からプロフィールをご紹介いただけますでしょうか。

前田市長   皆さんこんにちは、下関市長の前田晋太郎です。私は現在、市長に就任をいたしまして、2期目の8年目ということでございまして、年齢は昭和51年生まれの48歳でございます。地元生まれです。下関生まれ、下関育ちですね。大学の間だけ少し市を離れましたけれども、20代半ばで戻ってきて政治の世界に入りまして、市議会議員を2期6年務めまして、40歳で市長に就任いたしました。
市議会議員になる前は、今は亡き安倍晋三先生の秘書を7年半ほど務めまして、政治畑ではもう20年以上のキャリアと自分ではちょっと言いにくいですが、時間を過ごしまして、現在に至るということでございます。

渡邉理事長  お伺いするところ、フルマラソンも走られるというお話を伺っておりますが、これまでの市長のスポーツ歴を簡単に伺ってもよろしいですか。

前田市長   はい、あまり胸を張って言えるものでもないのですが、身体を動かすことが非常に好きです。今、渡邉理事長から言っていただいたように、海響マラソンからマラソンを始めまして、もうずっと10回以上チャレンジをして7回ほど完走をしました。とはいえ途中は歩いたり、なかなか過酷な時間でした。そのほかにも昔のことを言えば小学校、中学校、高校生と部活で野球、サッカー、陸上、剣道、水泳など深くはないですが、ひと通りかじって現在に至っています。体型を維持しなければいけないということもあって、身体を動かすことはできるだけ頑張ろうとやってきております。

渡邉理事長  どうぞよろしくお願いします。

2. スポーツの新聖地 「J:COMアリーナ下関」

スポーツの新聖地 「J:COMアリーナ下関」

渡邉理事長  まず1つ目のテーマですね。新しいこのアリーナ「J:COMアリーナ下関」の特徴的なところをご紹介いただけますでしょうか。

前田市長   旧体育館が非常に老朽化しまして、60年以上が経過をしていく中で、私が市長に就任したのは、今から8年前でございますけれども、その当時からバリアフリーとか耐震化とか会場の広さが十分でないため、大きな大会が誘致できない等さまざまな課題がありました。そのため体育館の建設というものが非常に大きなテーマでございました。
私は就任当時に新総合体育館を建設するということを大きな公約にいたしまして進めてまいりました。さまざまな方にたくさんお力をいただきながら、大変でしたが進めてまいりまして、素晴らしい体育館ができました。特徴としましては、メインアリーナは県内最大の面積を誇っておりまして、たとえばバスケットボールが3面できます。そしてサブアリーナでも1面取れます。そしてバドミントンは12面取れ、剣道、卓球などに活用できます。そして観客席も2階席を入れて4000席以上は確保できます。さまざまなイベントが誘致できたり、市民の皆さんにも気軽に使っていただいておりまして、出だしは上々ではないかと思っております。

渡邉理事長  なるほど。今、私もスポーツ庁のいろいろなスポーツ審議会の委員などやっているのですが、やはり全国各地のスタジアムアリーナ改革というのが一つのコンセプトでありまして、いわゆるコストセンターからベネフィットセンター、そしてプロフィットセンターへといったのがテーマとなっています。
どうしても公共施設になりますと、維持管理でいろいろ行政が財政措置をして、なかなか収益を上げることができないと。ただ、これからのアリーナとかスタジアムというのは、まず使ってもらう方の便益ですよね。便益というのは健康の増進であったり、そこへいったところでの仲間づくりであったり。最終的にはなかなかお金が循環するシステムは難しいのですが、プロフィット(利益)を上げて、上がった利益で、今度またスポーツ振興に還元していくと。そんな発想があるのです。

前田市長   なるほど、そうですね。私は当然市民にどう気軽に使っていただけるかということ、そして大きな大会をいかに誘致して町を元気にし、お金の収支バランスをとっていくことが大切になろうかと思います。市民の皆さんに使っていただく意味合いでは、非常に利用価格というのは低額にしておりますし、駐車場のお金とか利用料金も極力0コストに近づける形で気軽さを出していこうと。そういった意味では、市民の皆さんにはご理解いただいていると思います。それは市民の皆さんが明るく前向きな気持ちで使っていただくことで、健康増進の意味でいけば将来的に病気から少し遠ざかった人生が歩めるとかですね。
コミュニケーションをとることで、より明るい市民にエネルギーを与えることができる意味では、将来的にはコストが改善できるのではないかと思います。そういった意味合いがありますから、お金がかかることばかりを考えるのでは行政はいけないかなぁということですね。
そして大きな大会の誘致は大切なことです。幸いにしてこけら落としに歌手の倖田來未さんにライブに来ていただきました。これは4000人を超えるお客様をお招きすることができました。そして、私も確認をしましたが、音響や照明や居心地であったり、空気の感覚も都会の立派な施設にも負けない十分なスペースであるということは確認することができました。さまざまな全国大会とかスポーツイベントの打診や使わせてくださいという声を沢山いただいておりまして、どんどん今予約が埋まっている状況であります。これは非常に明るい状況であると思っています。

渡邉理事長  そうですよね。市民の方がここを頻繁に使ってもらって、健康増進を図ってもらうことによって、医療費、介護費、そういった社会保障のいろんな負担も少しずつ軽減できるかもしれませんし、またスポーツツーリズム的な観点からイベントに外の人が来ることによって経済的な効果も期待できると。非常にポテンシャルの高いアリーナの建設ということになりますね。

前田市長   ありがとうございます。

3. みんなが安心して暮らせるまちづくり

みんなが安心して暮らせるまちづくり

渡邉理事長  市長から先ほどもお話がありましたが、いろいろな世代の市民の方が、ここを活用されるということですが、障害のある方が利用する場合の便益的なところ、あるいはこのアリーナとしてのサポート体制はどのようになってますでしょうか?

前田市長   はい。もともとこの体育館ができる前に、障害者の方々が優先的に使っていただける施設が存在していたのですが、公共面積というのは増やせば増やすほど良いというものではなくて、ある程度目標数値というものが国との約束でございます。ここをつくるということは、障害者の体育施設を取り壊さなくてはいけないという制約がございました。そのため障害者の方々にはこの体育館をしっかりと使っていただく必要がございましたので、思い切って障害者の方々には気持ちよく前向きに家から出ていただいて、この施設に来ていただくことを目標としました。そのため体育施設利用料を全額減免することを決めました。そうするとこの体育館だけではなく、住んでいる近くの体育館や体育施設はどうなるのかという声は当然出てきますので、市内の全ての体育施設を、45施設もあるのですが、すべて無償にしました。ここまでは来ることはできないけれど、家の近くの施設が無償になるのなら、自分はもうちょっと身体を動かしてみようかなと障害をお持ちの方が利用していただけるのであれば、それは下関にとっても非常に明るいことでございます。思い切って今から変えていこうとスタートしております。

渡邉理事長  なるほど。先ほど事務局の方に聞きましたら、障害者の方がスポーツをできるためのサポートセンターをおつくりになっているというお話を伺ったのですが。

前田市長   障害をお持ちの方は、自分のどの部分が悪いかによってできるスポーツとできないスポーツが当然あります。そのためたとえばボッチャであったり、利用者の方々に道具を準備しなくてはいけませんので、そういったものはできる限りこちらで準備をさせていただいています。またそれをサポート、指導する指導員もしっかりと定数確保して、こちらに在駐していただくことで、障害者の方々の対応をしっかりとしたものにしていこうと思っています。しっかりと議論をして、議会の皆さんからもさまざまな御意見をいただきましたし、スポーツ団体体育協会の皆さんからも意見をいただきながら、みんなで、オール下関でつくった体育館だと思っていただけたらと思います。

渡邉理事長  まさにベネフィットセンターですよね。やっぱりコンテンツを考えたときにサポートする体制がないと、なかなか障害者の方が利用しづらい、継続しにくいことがありますので、ここは大きく期待できるところですね。

前田市長   ありがとうございます。

4. 人生に優しい風を呼び込むインクルーシブスポーツの推進

人生に優しい風を呼び込むインクルーシブスポーツの推進

渡邉理事長  下関市ではインクルーシブスポーツを推進されているそうですが、インクルーシブスポーツの大体のイメージはつくと思うのですが、具体的なところを教えていただけますか。

前田市長   そうですね。インクルーシブという言葉は、最近随分と行政の中でも、民間の皆さんの中でも定着してきたかなと思っていますが、インクルーシブという言葉は障害者の方だけではなく、たとえば国籍であったり、年齢であったり、男女問わずであったり、そういった幅広い意味があります。
どういった方々も、同じような環境で楽しむことができるインクルーシブスポーツの推進というのは、下関市としては非常にこれから大切な要素であるのでやっていこうと。その象徴的な施設がこの体育館になろうかなと思っております。
ほかにもこの体育館だけではなくて、公園にインクルーシブ遊具を積極的に取り入れて、県内最大のインクルーシブ公園も建設中であります。そういった意味では幅広く身体を専門的にハードに動かして何かを目指すというスポーツだけではなく、まずは気軽に身体を動かしていく、人とコミュニケーションをとっていくような、柔軟に前向きに優しく対応できればいいなと思っております。
下関からは道下美里さんという素晴らしいブラインドランナーが誕生して久しいわけですけれども、そのような方々にも力をいただきながら、私はたとえば"身体はなかなか動かせませんけれども、ボッチャだったらできますよ"とボッチャで世界を目指すのだという若い子がいれば、しっかりとささえる環境をつくることが行政としては必要です。平等ですべての市民に優しく、よい環境を与えられる下関でありたいなと。そういう意味ではしっかりと体育館をはじめ、さまざまなイベントなどを通じて皆さんに明るい風を吹き込んでいきたいなと思っています。

5. 幼児の運動環境づくり

幼児の運動環境づくり

渡邉理事長  市長もいろいろなスポーツを経験されて、今はフルマラソンも走られるのですが、やはり幼児期の頃のいろいろな外遊びだとか身体活動、運動というのはその後にすごく大きな影響を与えると思います。

前田市長   はい、ものすごく大切なところですね。まず私の感じる大前提として、時代が子どもたちに安心して外遊びをさせるような、運動させるような環境が状況的に減ってきているなとすごく感じるんですね。と言いますのも、私は小学校1年生のときから家に帰ったらランドセルをポンと置いて、一番近くの公園で地域の子どもたちで野球をしていまして。ほぼ毎日のように。そういったことは今の時代は空き地はあるのに、ほとんどの子どもたちは家でゲームをしているということが非常に多くて、隣の家に行くにもお母さんの了解が必要であったり。決して心が狭くなっているのではなくて、その周りの雰囲気がそういうふうになってしまったというか。隣近所がそうなっているので、自分もそうなるのかなという感じでやっている。ただそういった中でどう子どもたちに幼少期から身体を動かしていかせるかというのは、当然学校の体育カリキュラムの中にも、全体のスケジュールの中にもどう取り入れていくかというのは必要です。やっぱりその家外、学校外でいかにその時間を与えるかということになると、私たちは公共的にある程度施設を進めていく必要が当然あろうかと思います。
下関は「ボートレース下関」が今非常に好調でありまして、お客様をいかに場(じょう)に取り入れていくかという中で、若い方にも、家族世代にも来ていただこうと考えています。子どもたちをいかに運動して身体を動かして元気になって成長してもらうかという目標もあり、下関はボーネルンドの皆さんと提携をさせていただいて、「Moovi(モーヴィ)下関」という施設を数年前から取り組ませていただいております。
屋外、屋内にもさまざまな遊具がありますし、ボーネルンドの皆さんの非常に卓越した技術と素晴らしい経験のある施設、コンテンツが盛り込まれておりまして大変好評です。ボートレースの試合がないときでも、多くの皆さんにお越しいただいて、子どもたちの身体を動かす教育といいますか、その一環につなげさせていただいている状況です。ほかにも、地域には体育推進委員というスポーツを地域の方々に勧め、指導していただく推進委員さんが何人かいてもらっていますが、そういう方々にもご協力いただいて各地域でのイベントを開いています。たとえばゲートボールではおじいさんやおばあさんが一生懸命やって楽しんでいる中に子どもたちを参加させてもらって、おじいさんおばあさんが子どもたちに「こうやって打つんよ」「第1ホールはあっちよ」と教えてくださって、子どもたちもすごく積極的に楽しんでいる光景をみることもできます。そういったものを積極的に地域の方々に力をお借りして、みんなで子どもたちに運動環境を推進できるような取り組みを続けていければいいなと思います。

6. 学部新設は都市のミライへの準備 下関市立大学

学部新設は都市のミライへの準備 下関市立大学

渡邉理事長  午前中に「下関市立大学」を訪問させていただきました。データサイエンス学部というのができたというお話ですが、ここについての経緯とか目指すところを簡単に御紹介いただけますでしょうか。

前田市長   ありがとうございます。よくぞ来ていただきまして、本当に感謝申し上げます。下関市立大学は開学から70年近く経済学部1学部、3学科でずっと進んでまいりました。やはり少子化の中で大学間競争であったり、都市間競争という言葉はよくうたわれますけれど、やっぱり若い方々に選択肢を与えられる環境というのは非常に大事であります。
私が8年前に市長に就任をしたとき、下関市立大学は非常に卒業生の評価も高いし、就職率もいいし、志願者数も非常に多かったので、特に問題はありませんでした。しかし先ほど言ったような大学間競争に、これからの少子化の中で打ち勝つためにはもう少し幅を広げようと総合大学化を目指そうという旗印を掲げました。さまざまな経緯を経て、何が時代にふさわしい大学であり、研究分野であり、その先に若い人たちが目指す環境なのかということを確認し合いました。評議会を開き、最終的に皆さんに決めていただいたことが2項目ありまして、データサイエンス学部と看護学部でありました。この2学部を目標として決めまして、さまざまな準備に入っていったわけです。

渡邉理事長  先ほど大学の学長さんにいろいろお話を伺ったんですね。そうしたら、大きなお話を学長さんがされていました。アメリカのシリコンバレーの話をされていて、なぜあそこにいろいろな会社が集積しているのかと。そうするとスタンフォードだとか、UCバークレーだとか、いろいろな人材は供給できるようなそういうアカデミズムがそこには存在しているのだと。そうすると下関でそういった人材、データサイエンスであるとか、経済であるとか、今度は看護学部ができてくるので、そういった人材が供給できるのが公立大学として存在できること。それによって市長がおっしゃったように、企業も下関に誘致されて、そこに雇用が生まれて、いろいろな形で町づくりが進んでいくのではないかと、そんな遠大なお話をされていました。

前田市長   はい。まさに私たちが目指すところはそこでして、実は市立大学で学部を一つ増やすということが、大きな目標ではなくて、その先にあるデータサイエンス学部が誕生することで、1段階上の大学の皆さんと目と膝を突き合わせて、今度は連携をできる。今、アメリカの話が出ましたけれども、実はこのたび、私たち市立大学は、アメリカのサンフランシスコ州立大学と包括連携を結べました。サンフランシスコ州立大学はアメリカでも今10位の評価ランキングを受けている世界でもトップクラスの大学になります。そういった大学と連携をして研究分野や人材人事の連携、そして当然学生の交流ですね。そういったものを含めてさまざまな研究を重ね、人材を育てることで多くの企業にこれから注目をしていただきたいと思っています。幸いにして、このたびデータサイエンス学部がスタートしましたけれども、志願者数は倍率が全体で10.4倍に出ました。これだけ今、定員割れをしている大学が数ある中で、10倍の方々に志願していただいたというのは大変名誉なことであります。全国でちなみに国公立で2位の成績でありましたので、ますます看護学部がスタートしますし、その幅が広がってきますし、下関の名前が当然注目されてくるのは、もうこれは間違いないことでありますので、抜かりなく大きな夢を持って前に進めていきたいなと思っています。

渡邉理事長  楽しみですね。データサイエンス学部ができて、看護学部ができて、市民の皆さんのヘルスケアというところに将来的には当然つながっていきます。

前田市長   おっしゃるとおりですね。看護学部というのは皆さんコロナの時代を経験して、いかに医療が大切なことか、パンデミックが生じたときに公的、パブリックな組織、病院、研究施設がいかにその街を守るかがよくわかったと思うのですね。その中で人材が足りなくて、ドクターや看護師も今供給がなかなか追いつかなくて、子どもたちも若い人も減っていることから看護や医学や介護の人材を生み出すことへの需要がさらに高まってくるわけです。そういった時代にうまくマッチングするそういうフェーズを下関が迎えたことで、大いに皆さんに期待をしていただきたいですし、その中でも優秀な先生が今何十人も下関に移り住んでいただきましたので、こういった先生方と連携をして、さらに研究の質も高い公立大学をつくっていきたいなと思っております。

7. まちを活性化する下関市名物のスポーツイベント

まちを活性化する下関市名物のスポーツイベント

渡邉理事長  先ほど市長はフルマラソンを走られると。もうランナーですよね。10数回フルマラソンに参加しているわけですから。

前田市長   そうですね。

渡邉理事長  そのきっかけが「下関海響マラソン」。

前田市長   はいそうなんです。私20代30代は一回も長い距離を走ったことがなくて、2、3キロ走ったらもう心臓が止まっちゃうんじゃないかなというような心境でいたのですけど、海響マラソンが2008年にこの町でスタートしました。
へーって思って最初は遠目で見ていたのですけど、いろいろな方から誘われて2回目から参加するようになりました。でも全然駄目だったのです。最初の2009年の初めての参加は20キロ地点でゲートで止められてしまって。それで次の年では今度は25キロで止められてしまって。もうまったく完走まではほど遠い人間だったのです。悔しくてその次の年は本当に練習をしまして、そして初めて完走することができたのです。経験のない達成感で涙が出るぐらい嬉しかったですね。下関海響マラソンは非常にアップダウンの高低差も激しいですし、ハードなマラソンコースだと一般的には言われております。それからはずっと参加するようにしておりまして、ちょっと休みも入りまして毎回ではなかったのですが、市長に就任をしましてからは毎回すべて参加をしてすべて完走しています。

渡邉理事長  開催にあたってはまた、行政の職員の方々もいろいろボランティア活動をされ、大変だと思いますけれども、現在マラソンをやりますと海外からも参加者が増えているように伺っていますが、海響マラソンではいかがですか。

前田市長   はい。ありがたいことに多くの方々が海外からお越しいただいております。下関は海外の姉妹都市が5都市あるんですけれども、例えば 大きなところでいうと お隣の釜山(広域市)、トルコのイスタンブール、ブラジルのサントス、中国の青島、ピッツバーグとかそういった大きな町から招待であったり、たくさんの交流がありますので、お越しいただいています。このアジアを中心に、中国からも台湾からも韓国からもたくさん来ていただいて、皆さんでわいわいと走っていただいておりますね。

8. メダルがもらえる海峡アスリート認定制度

メダルがもらえる海峡アスリート認定制度

渡邉理事長  スポーツツーリズムといった観点からも非常に魅力的なマラソンですね。伺うところによりますと、マラソンもさることながらさまざまなOUTER施策。外から人が入ってくるような交流人口が生まれるような施策があると伺っています。その施策から「海響アスリート認定制度」というのにつながっているように伺っているのですが。

前田市長   これは面白い制度でして、簡単に言うと下関のそういう運動イベント、スポーツイベントをクリアした方々には、条件をクリアしたらメダルを授与しています。1周目、1回目はブロンズ、さらにもう1周やるとシルバー、さらにちょっとハードルを上げていろいろな条件が付加されたものにクリアするとゴールドになるのです。これを皆さんものすごく目指してくれているのです。

渡邉理事長  わかります。

前田市長   ええ。わりとメダルもしっかりとしたものをつくります。それを授与式に市長が絶対出て、皆さんに並んでいただいて、私が賞状を読んでメダルを掛けていくのですけれども、「下関海響マラソン」、「ツール・ド・しものせき」という自転車のイベント、そして「維新・海峡ウォーク」という春の桜の時期に東行庵という高杉晋作の祀られている施設がありますが、そこから下関駅まで26キロぐらい歩くウォーキングのイベント。この3つをクリアしたらブロンズですね。もう1周したらシルバー。最後に「下関歴史ウォーク」というハードなウォーキングイベントがあるのですが、これをクリアしたらゴールドですね。私は現在ブロンズアスリートです。

渡邉理事長  ぜひこのコンテンツも磨き上げて、ファンをどんどん増やして交流人口につなげていきたいと思います。

前田市長   ありがとうございます。

9. 海峡の景色を生かしたまちづくり、はじまる

海峡の景色を生かしたまちづくり、はじまる

渡邉理事長  それでは市長、最後のテーマになります。「ウォーターフロントの再開発」をはじめ、まちづくりに関していろいろなところで再開発を行おうという計画があると側聞しているのですが、中身について市長からご案内いただけますでしょうか。

前田市長   はい ありがとうございます。皆さんご承知いただいていると思いますが、山口県下関市は本州の最も西端にあります。目の前が九州でございまして、海峡を挟んで九州が存在しているのですが、その海峡がいわゆる関門海峡であって、そこに架かる橋が関門橋でございます。この関門海峡の景色というのは、国が管理をする大型船や大きな船が通る国際航路になっています。大きなコンテナ船や世界中のコンテナ船が横のおなかを見せて、ゆっくりと通ってくれますので、眺望としては最高の景観です。この景観を活かしたまちづくり、ウォーターフロントをつくっていこうと。実は昭和の時代から昔は倉庫街だったのですけれど、そのエリアを全部片付けて長期計画でこれまで進めてまいりましたが、なかなか海響館という大きな水族館をつくった後にホテルの誘致が難しかったんですね。そこで私は市長に就任をしたときに、先ほどのお話にあった体育館と同様に、ホテル誘致を公約の1丁目1番地の一つにして誘致に励んでまいりました。結果、幸いなことに星野リゾートさんが手を挙げてくださって、現在建設中です。約190床の素晴らしいリゾートホテル「リゾナーレ下関」が完成する予定になっています。このホテルが完成することが現実として将来的に起こるわけですが、そのホテルを建てただけでまちづくりというのは終わりではありません。そのホテルを活かした、その海峡の景色を活かしたまちづくりが必要になるのかなと。市民の皆さんが憩える場所であり、海峡観光客の皆さんにそれを目指して来ていただいて、まちの元気につなげていくことだと思います。星野社長には何度も下関にお越しいただいて、関門海峡の景色を絶賛いただいています。世界でもそうそうない、いい景色だと言っていただいており、この景色で日本一のウォーターフロントを目指していこうじゃないかとハッパをかけていただいています。我々は唐戸エリアマスタープランというある一つの政策目標、ビジョンを掲げましてさまざまな政策課題をこのトピックスとして目標課題にあげて、それを今一つずつクリアするために、民間の皆さんとチームを組んで会議を重ねて今まちづくりを進めているところであります。

渡邉理事長  ウォーターフロントの開発もその一つなのですけども、「火の山地区の再編整備」という話も伺っていますが、こちらの方のご紹介をしていただけますか。

前田市長   はい。ありがとうございます。先ほど言いました関門橋、雄大な高速道路が通ります関門橋のふもとに火の山という海に面した山がございます。標高268メートルちょっとの山なのですが、登ると関門の景色が一望できて非常にいい景観であります。かつては昭和40年代にロープウェーを通して観光客が初年度は100万人以上来てくださった時代もありました。私はこれを何とか立て直すことが、今の下関市民に大きな勇気と元気を与えることができると信じて、火の山の大規模な再開発を目指してやってまいりました。ありがたいことに、もうすべて目標の基本構想、基本計画を終わりまして、設計の段階に入って予算の裏づけもきっちりとっています。これから複数年でロープウェーも新しくなります。ゴンドラ式になり、展望台ができ、そしてセンターといいますか、お土産店とかちょっと飲食施設があるような施設をつくり、そしてアスレチックも復活し、テントサイト・キャンプサイトもつくり、そういったことを複合的にやることで、火の山も間違いなく生まれ変わらせることができます。観光客の皆さんにもそれを目がけてまた来ていただき、下関にある宿泊施設の皆さんと連携をして、星野だけではなくて下関で頑張っている飲食店や旅館、業者の皆さんにもしっかりとお金が回っていくような仕組みづくりを現在進めております。今日はまちづくりの観点からご質問いただきましたけれども、そういったことを総合的に進めています。人口減少は多少仕方がないのですけれども、若い人たちに下関が頑張っている姿をしっかり見せて振り返っていただき、人口減少を食い止めるとか、若い方々にもっとしっかりと根を生やして、この町で住んでいただけるようなまちづくりを展開していきたいなと思っています。

10.リーダーとして大切にしていること

リーダーとして大切にしていること

渡邉理事長  市長、一つ伺いたいのですが、まちづくりを進めるためには、いろいろな角度、分野からいろいろな議論を重ねて、それを実践に移すということが大事だと思うのですが、市長が考えるまちづくりの中で一番大事だ、あるいは大切にしたいと思われていることはどんなことでしょうか。

前田市長   ありがとうございます。自分がやってきた中での経験なのですけれども、必ず困難というか壁にあたるんですよ。100%賛同を得ることってほとんどないと思います。ものを一つ動かせば動かした人は喜ぶけれども、遠くなった人は必ずそうじゃないと言いますから。その中で何が大事かと言うと、市長はやりたいと思ってそれなりの根拠をもって示すなら、絶対ぶれちゃいけないというか情熱をもって突き進むということです。皆さんに情熱をもって説得をしていくと。もう一つ大事なのは、やっぱり最後は民間の活躍する方々が現れないと、それは継続されないので、キーマンを育てるということですね。だから人を育てるという。まちづくりはお金と計画図面があったらできるものではなくて、これは間違いなく、民間の皆さんが燃えてくれないといいものはできないと思っていますので、そういう意味ではまだまだ私も道半ばといいますか。やっとこのスタート地点に立てるというか、景色が変わるところまで来ました。ここから先の3年、5年、10年と町をさらに右肩上がりで元気にするには、市民の皆さんとのさらなる熱い連携が必要なんだと、まだまだ頑張っていきたいなと思います。

11.市民の皆様へのメッセージ

市民の皆様へのメッセージ

渡邉理事長  いろいろなお話を長時間にわたって伺ってまいりましたが、最後に市民の皆さんに向けて市長から これからのまちづくりについてメッセージをいただければと思います。

前田市長   ありがとうございます。私たち市役所を中心にこれからの人口減少に負けない明るい未来に向けて、下関市民の皆さんに勇気を与えるために、勇気をもってもらうために、しっかりと努力をしていきたいと思っております。さまざまな困難にも果敢にチャレンジをしていきたいと思っています。
笹川スポーツ財団の皆様方にも、さまざまなお知恵でご協力いただきながらしっかりと連携して、明るく、住みよい、安心していつまでも元気に暮らすことのできる下関をつくっていきたいと思います。市民の皆さんにも温かいご理解ご協力をよろしくお願い申し上げます。

渡邉理事長  ありがとうございます。

前田市長   ありがとうございます。

渡邉理事長  やっぱり歴史のある下関市ですから、これからの未来にわが国を代表する中核都市として、ほかの中核都市、あるいは大都市、あるいは中小の自治体の手本になるような、そんなまちづくりを進めていただけることを期待しております。またぜひ5年後に訪問して市長からお話を伺えればと思っておりますので引き続き頑張ってください。

前田市長   はい、ありがとうございます。

渡邉理事長  本日は長時間にわたり、ありがとうございました。

前田市長   ありがとうございました。

そうか!その手があったか スポーツでアクティブなまちづくり 下関市