2024.11.27
丸亀市(香川県)
松永 恭二市長 対談
2024.11.27
丸亀市(香川県)
松永 恭二市長 対談
丸亀市は、香川県の中西部に位置し、県内では2番目に人口の多い地方都市です。そんな丸亀市、実はさまざまなスポーツによる“協働”のまちづくりを実践しています。松永市長によると、日本古来の武道を守るためのイベントの開催から、アーバンスポーツパークを約3億円かけて施設を整備するなど、さまざまなスポーツをする環境づくりに取り組んでいます。
市内にはプロ野球選手が輩出された野球場もあり、ボートレースまるがめに隣接する「Gruunまるがめ」では多くの親子が身体を動かして遊んでいます。また、高速コースで有名な丸亀国際ハーフマラソンは近年、地元企業による賞金レースへと進化を遂げつつあります。船で離島に渡り、ハイキングする「船ハイク」は、毎回すぐに予約が埋まる人気ぶりです。さらに、笹川スポーツ財団が主催していたチャレンジデー終了後も、「元気なまちづくりにスポーツは欠かせない」との想いから、独自で「チャレンジウィーク2024」を開催。
このように、松永市長厳選が厳選したイケてるスポーツによる“協働”のまちづくり実例7選をご紹介します。丸亀市生まれ、丸亀高校野球部出身の市長が厳選したスポーツによるまちづくり、その一つひとつに深イイ話が盛りだくさんでした。7つの実例すべて、その施策をやる意味や効果まで納得の内容です。
―― 丸亀市は、香川県の中西部に位置し、高松市に次ぐ第二の都市です。人口はおよそ11万人。古くから海上交通の要衝、城下町として栄えた歴史をもち、高さ日本一の石垣をもつ丸亀城、美しい瀬戸内海に浮かぶ塩飽諸島、おにぎりの形がかわいいと多くの人に愛される飯野山、日本一の生産量を誇る丸亀うちわなどが有名です。スポーツをまちづくりにどのように活用しているのか、松永 恭二市長にお話を伺いました。
渡邉理事長 地元丸亀高校野球部で活躍したと伺っています。
松永市長 丸亀で生まれて丸亀で育って44歳までは会社員、44歳で市議会議員に立候補して、それから丸19年が経って今を迎えています。
渡邉理事長 市長の座右の銘、これは一般的にはなかなか読めないと思いますが。
松永市長 この言葉は「終始一誠意」と言いまして、丸亀高校の校訓でした。人間は何をするにあたっても、最初から最後まで一貫して誠意をもって取り組むという意味と私は捉えております。
渡邉理事長 なるほど、これからお話を伺っていく中で、終始一誠意のお話が聞けるのではないかなと思います。本日はスポーツを通じたまちづくりということで、テーマを3つ設定させていただきました。
―― 笹川スポーツ財団が1993年から継続してコーディネートしてきたスポーツイベントに、チャレンジデーというのがあります。これは、地域住民の運動・スポーツの習慣化を目的に、毎年5月の最終水曜日に全国の自治体の方々と一緒に行う住民総参加型のスポーツイベントです。2023年度を最後に、チャレンジデーの全国一斉開催を終了いたしましたが、2024年度も、継続して、独自のチャレンジデーを開催している自治体が全国に多くありました。実は、丸亀市もそのひとつです。チャレンジウィークとして独自に開催した取り組み内容について伺いました。
松永市長 私も地域自治会の人に声を掛けて、ずっとチャレンジデーをやってきました。そのチャレンジデーが終わりましたので、そのままでは寂しいという気持ちの流れでチャレンジウィークを始めようとなりました。このチャレンジウィークも目的は同じです。身体を動かそうという意識づけと、スポーツをするきっかけですね。
松永市長 やっぱり元気なまちづくりにスポーツは欠かせないと思っていますので、担当職員も喜んで進めて取り組んでいるところでございます。
渡邉理事長 実は私も昨日、丸亀駅から6キロのウォーキングイベントに参加させていただきました。非常に風光明媚な場所もたくさんありまして、素晴らしいウォーキングのイベントでした。それから昨日は市の体育館に行って、「スポーツ縁日」が行われておりました。
松永市長 簡単に色々なスポーツができるブースを設けたり、骨密度検査やベジチェックなど身体のチェックができるブースもあったりしました。ふらっと体育館へ来ても、自分に合ったところへ行けば楽しめるというような仕組みをしています。
渡邉理事長 体育館に入ったとき、びっくりしました。予想よりも遥かに多くの子どもたちや保護者の皆さん、未就学児から成人まで100人以上が恐らくいらっしゃったと思うのですよね。色々なところで笑いと喜びがあって、非常に楽しい空間で、これは素晴らしい取り組みだなというのが第1印象でしたね。
―― 丸亀市では、2024年2月にスケートボードと、3×3バスケが無料で楽しめる施設、「東洋炭素アーバンスポーツパーク丸亀」をオープンさせました。およそ3億6000万円をかけて整備したこの施設。設立の目的とねらいを伺いました。
松永市長 もちろん、私も東京オリンピックを時間が許す限りみていましたけれども、特にスケートボードをしている選手同士の会話をみていて思ったことがあるのです。難しい難易度の高い技にチャレンジをした人もたくさんいまして、みんなで集まって何を話しているのかは聞こえませんでしたが、「よくこんな難しい技をやったな」「すごいな」というような敬意を払うというか、その光景は感動しました。
松永市長 丸亀市の中でも、スケートボードをする場所がないので、港周辺や美術館周辺、高速道路周辺で若者を中心によくスケートボードをやっている光景をみていました。その光景をみて、私は必ず「スケートボードをするちゃんとした場所がないというのは、つらいよね」と言いながら声を掛けて、その人たちと色々な話をました。その若者たちは非常に紳士的で礼儀も正しいので、「これはスケートボードパークをつくるべきだ」と思いました。
―― アーバンスポーツパーク丸亀は無料で利用ができ、かつ、予約は必要ありません。それでは一定の団体がずっと使い続けるなどの懸念から、運営方法に関する心配の声が多数あがったようです。
松永市長 プレーをしている人たちの中で自然と秩序ができてきて、じゃあ次はどきますからやってくださいねと、必ずそういう風になるということを、議会でも言っていたのですが、今のところ、そのような形になっております。やはり最初に言った相手をリスペクトする、そして譲り合う気持ちがうまく今のアーバンスポーツパークの中でも発揮できています。これははじめて言うのですが、実は内心、私の中では非常に喜んでいます。
―― スケートボードの登録者の内訳をみてみると、市内の方が20%、市外の方が43%、県外の方が37%となっており、「誰もがいつでも利用できるパーク」として、市内外、県内県外の多くのひとに利用されているようです。
松永市長 今回、この数字を全部出してもらって、ちょっとびっくりしています。こんなに遠くからも来てくれているのだなというのがありがたいです。
渡邉理事長 ひとつはやっぱり、そのスポーツの魅力があるのと、もうひとつはなかなかやる場所がないというのが実情なのでしょうかね。
―― 丸亀市には、収容観客数約10,000人、公認野球規制対応の本格的な野球場「レクザムボールパーク丸亀」があります。start for MAJOR~メジャーへの道はここから始まる~ をキャッチフレーズにかかげ、2015年に開設して以来、この球場で育った選手の中には、プロ野球で活躍する選手が出てきているようです。
渡邉理事長 実は、今市長とお話ししているのは、丸亀市の総合運動公園の中にある野球場なのですよね。
松永市長 はい、そうです。
渡邉理事長 この野球場をつくるにあたって、市長の思いが相当に反映されていると伺いました。
松永市長 20数年前、スポーツ少年団で自分の子どもが入っていた関係で、スポーツ少年団のコーチをさせていただいていました。そのときに、保護者や子どもたちから本格的なプロ野球が呼べるような野球場ができたらいいのにという話が出ていました。それで、「野球場をつくる話を進められるのは松永さんあなたしかいない」ということをたくさん言われました。スポーツ少年団の保護者たちを中心に言われたのですが、私は調子に乗って会社に辞表を出して、市が合併するタイミングに市議会議員に出ようとなったのです。そこから8年かけてこの球場ができあがりました。
渡邉理事長 なるほど。
松永市長 議会のみなさんにも私がもう一人ひとりに説明しました。そのとき言われたのが、「つくるのだったら、グラウンドだけでいいでしょう」というのが大半の話でした。しかし、グラウンドだけだったらつくらないほうがいいとはっきりと言いました。やっぱりプロ野球が呼べるような球場でなくては絶対だめだとはっきり言って、野球関係者から市長に要望書を出してもらったのです。大学野球、社会人野球、そして高校野球の会長さんのところも行きました。要望書は私がつくって、「これを市長のところに持っていってください」と言ってまわることを全部やったのです。そして、今1万人収容の球場ができあがりました。
松永市長 この野球場のコンセプトは、「start for MAJOR」。要は丸亀からプロ野球選手を出そうぜというのがコンセプトでした。8年目のときにプロ野球選手が2名同時に出たのです。
渡邉理事長 そうですか。2人で座っているここも、室内練習場になっていますよね。恐らくバッティング練習をするのでしょう。そして、ちょっと奥をみると、室内のブルペンがありまして。
松永市長 いいでしょう。
渡邉理事長 すばらしいですね。本当にプロ野球中継で出てくるような。そんな場面を見受けられました。
松永市長 ありがとうございます。
渡邉理事長 市内の住民向けのインナー施策的なところは、ここまでお話を伺ってまいりました。一方で、外からの人に丸亀へ来てもらって、実際にスポーツイベントに参加してもらうなど、そういったつながりの人口を増やしていくって意味ではアウター施策という取り組みがありますよね。丸亀市のひとつの特徴として、「丸亀市武道の祭典」をコロナ前からずっと続けて行われていたと伺っておりますが、この意図するところはどんなところにあるのでしょうか。
松永市長 種目は剣道、なぎなた、居合道、合気道、柔道、少林寺拳法、弓道の7種目です。日本古来の武道というのをやはり守っていきたいという気持ちがありますし、やっぱり日本人の根底をなしている大事な部分が湧き出してくるような、そういう力がありますよね。
松永市長 少林寺拳法の総本山は隣の多度津町にあるのですけども、丸亀にも少林寺拳法をやっている人がたくさんいます。 子どもたちからシニアまでいるのですが、「半ばは己のために、半ばは人のために」という言葉を毎回大会で聞きます。
渡邉理事長 なるほど。
松永市長 それが恐らく少林寺拳法の精神や根本だということだと思うのですが、剣道にしてもなぎなたにしても、それぞれが日本の伝統と文化を備えているのがこの武道であると思っていますので、しっかりと取り込んでいきたいと思っています。
渡邉理事長 少林寺拳法のお話が今出ましたけども、世界中で愛好者のいる柔道も、嘉納治五郎さんが「精力善用」「自他共栄」と言っています。スポーツというところでは括りきれないものが、恐らく武道にはあるのではないかなと思います。
渡邉理事長 私も知らなかったのですが、丸亀市にも離島があるのですね。塩飽諸島(しわくしょとう)という島ですか。
松永市長 はい、塩飽諸島です。
渡邉理事長 ここへの「船ハイク」というのが2002年から始まっている。
松永市長 船で島へ渡って、その島をハイキングするというイベントです。丸亀港からたとえば広島へ行きます。そしたら、広島には山が2つあります。景色360度、この世のものとは思えないほど綺麗な絶景です。一番きれいなのは、こっちから瀬戸内をみるよりも、島々の山の上からみる景色というのはやっぱりすごいのです。
渡邉理事長 なるほど。
松永市長 その島々には、それぞれの文化、人間がそこで生活してきたというその証がすべて残っていますので、そういったところもみていくのがこの船ハイクです。1番多いときでは年に4回ぐらいやっていました。
渡邉理事長 1回あたり何人くらい参加できるのですか。
松永市長 大変好評でして、1回の船ハイクには大体50人から60人ぐらいの定員を出していますが、すぐいっぱいになってしまうくらい非常に喜んでいただいています。それぐらい島々というのは本当によいのですよ。
渡邉理事長 私も1回行ってみたいですね。ツアーのうまい組み方で色んな人に来てもらって、丸亀のファンになってもらえるといいですね。
―― 国内外からなんと約1万人が参加する国内トップクラスの大会となった「香川丸亀国際ハーフマラソン大会」。特徴は好記録が出やすいこと。スタート地点からおよそ2キロが軽い下り坂になっているようで、さらには西風が背中を押してくれ、絶好のスタートが切れると言います。瀬戸内海の穏やかな気候も手伝い、記録が出やすい高速コースとして自己ベストを目指して多くの方がマラソンを楽しんでいます。
松永市長 選手の人たちも、自己新記録をねらってきますし、もちろん日本記録とか大会記録とかも必ずねらってきています。ありがたいことに、2年前から地元の企業さんが賞金をつけてくれたのです。
渡邉理事長 そうなのですね、実際どうですか。
松永市長 今年は女子の新記録300万円と学生記録が100万円出ました。その1つ前の年は男女ともに大会記録が出ました。
渡邉理事長 市長、賞金も大事なのですよ。実はスポーツ庁でもスポーツGDPという捉え方があって、スポーツによるGDPを拡大していこうというのが国の政策なのです。本来であれば、2025年までに15兆円に持っていこうとなっています。これは公営競技も含めたトータルの額で、まだ道半ばなのですが、今はどこの国際レースも賞金レースに変わっています。ある意味、スポーツ産業を成長化させる意味でも、賞金を出すことは悪いことではないし、まちの活性化にもつながると思います。そのため、すごくいい傾向が今このハーフマラソンに出ているなと伺っておりました。
松永市長 はい。
渡邉理事長 ここまで色々なアウター施策の話を聞いてまいりました。こうした施策を活かして、ツアーが組めるのではないかなと思いました。たとえば、アーバンスポーツパークにいらっしゃる方もいれば、武道の祭典にこれから参加されようとしている方がいる。あるいは船ハイクに参加されようとする人、香川丸亀国際ハーフマラソンと、色々とつなげていくと、滞留時間も増えますし、経済効果も計算できるような仕掛けがこれから考えられるのではないかなと思います。
―― 丸亀市のスポーツによるまちづくりを推進する上で、欠かせない存在になっているのがボートレースまるがめです。地域の方や全国のボートレースファンからの支援を受けながら今年で開設72年目を向かえています。地域と共生する施設として、ささえてくれている地域に貢献していくことを目指し、2023年にGruunまるがめをオープンしました。子どもたちの健在な育成と幅広い世代が交流できる、あらたな地域のコミュニティ拠点となっているようです。
松永市長 丸亀のボートレース場のすぐ横にありますが、完全に別物だと市民の方には言っております。そこにいたとしても、ボートレース場には入らなくてもいいのですよ、と。
松永市長 また、Gruunの中にMoooviまるがめという子どもの遊び場があるのですが、保護者と子どもさんが入ったら、保護者の方もずっと一緒にいてくださいねというルールなのです。そこで常に10名程度いるプレイリーダーが、遊び方とか遊ぶ方法を一緒に教えてくれたり、一緒に遊んでくれたりもするので、大人がいても楽しいと思います。
渡邉理事長 笹川スポーツ財団の調査結果を紹介したいと思います。WHOはじめ、世界中で未就学児や子どもは、1日平均60分以上何らかの身体活動を促してくださいという指針が出ています。日本だと文部科学省が幼児期運動指針を出してます。
松永市長 はい。
渡邉理事長 ところが、笹川スポーツ財団の調査ですと、幼稚園、保育園、あるいはこども園では、園内にいるときは遊びの時間がありますが、その後家庭や地域に帰ると運動遊びをしてないのですよ。昨年の調査によりますと、平日に園が終わって家庭もしくは地域でまったく外遊び運動をしていない子どもは、46.6%という数字が出ました。
渡邉理事長 それから、1週間のうちに園外で1日も外遊びをしない子が8.1%もいるんですよ。そういった意味ではMoooviまるがめやGruunまるがめが、ここ丸亀にあるのは非常に大きな意味があるのです。もちろん先ほど市長がおっしゃったように総合運動公園を使用しない世代の幼児や未就学児がGruunまるがめやMooviまるがめを使うのは、各世代多くの市民が運動・スポーツを享受できるような環境をつくってもらえるといいのではないかと思っています。
渡邉理事長 これまでいろんなテーマで市長からお話を伺ってまいりました。これからのまちづくりをどのように進めていこうと思っていらっしゃるのか教えてください。
松永市長 市長をさせていただいて、スポーツを通じてスポーツを活かして元気なまちづくりをするとよく言っています。これは私の思いの中に「スポーツをすれば、人の気持ちがわかる、人の気持ちがわかれば、世界が平和になる」と思っているのです。
渡邉理事長 はい
松永市長 今の言葉は、2万点の作品も寄付いただいて、30年前に美術館をつくるときに、猪熊弦一郎画伯がいろいろな指導して、いろんな言葉を言っている中にこういう言葉がありました。「美がわかる人をたくさんつくりたい。美がわかる人は人の気持ちがわかる。人の気持ちがわかれば、世界が平和になる」。
渡邉理事長 なるほど。
松永市長 実際、猪熊画伯が言った言葉が1番好きな言葉でありまして、その言葉をもじって、「スポーツをすれば人の気持ちがわかる。人の気持ちがわかれば、世界が平和になる」。丸亀市民のみなさんに1番言いたいのは、スポーツを活かした元気なまちづくりをしたいと思っています。しかし、私だけではできないので、みなさんと一緒に取り組むとことが大事だと思っています。いわゆる協働。みなさんと一緒に元気なまちづくりに取り組んでいってくださいということが最後の言葉になります。どうぞよろしくお願いします。
渡邉理事長 最後の話にありましたけども、行政だけでなくて、色んな組織とか人が協働してスポーツを推進するプラットフォームをつくってみんなが幸せになるような。そしてそれが世界の平和につながるようなまちづくり。笹川スポーツ財団も微力ながらこれから応援させていただきたいと思います。末永く協力関係を保っていただけますようにご指導いただけますようにお願いいたします。今日はありがとうございました。
松永市長 理事長、ありがとうございました。