ラグビーワールドカップ2019、2020年東京オリンピック・パラリンピックのレガシー創造に向けて
- 調査・研究
© 2020 SASAKAWA SPORTS FOUNDATION
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スポーツ政策研究所を組織し、Mission&Visionの達成に向けさまざまな研究調査活動を行います。客観的な分析・研究に基づく実現性のある政策提言につなげています。
自治体・スポーツ組織・企業・教育機関等と連携し、スポーツ推進計画の策定やスポーツ振興、地域課題の解決につながる取り組みを共同で実践しています。
「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。
日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。
ラグビーワールドカップ2019、2020年東京オリンピック・パラリンピックのレガシー創造に向けて
2018年9月11日
公益財団法人笹川スポーツ財団は、全国の20歳代から60歳代を対象に『スポーツボランティアに関する調査』を、今年3月に実施いたしました。
ラグビーワールドカップ2019、2020年東京オリンピック・パラリンピックを控える今般、我が国のスポーツボランティアの実施希望状況を改めてご報告いたします。
写真提供:日本スポーツボランティアネットワーク/北海道マラソン
ラグビーワールドカップ2019では、「1万人以上」のボランティア募集に3万8千人以上の応募があった。調査結果が示すように、オリンピック・パラリンピック等の大規模イベントのボランティアに対するニーズは高い。ラグビーワールドカップや東京オリンピック・パラリンピックのボランティアが、その後スポーツやその他の分野でボランティアとして活躍することが、大会のレガシーとして期待されている。
一方で、ボランティア活動の多くは、地域に根差した日常的な活動であり、イベントのような短期間の活動ばかりではない。日常的なボランティアの中核は、後継者の不在から高齢化する傾向にある。大規模スポーツイベントのボランティアに、大会後もボランティアとして様々な分野で活躍してもらうためには、大会組織委員会や開催地自治体が、ボランティアの選考・養成過程から活動終了に至るまで、大会後を想定して制度設計することが求められる。
【笹川スポーツ財団 スポーツ政策研究所 主席研究員 澁谷 茂樹 】
大規模イベントのボランティアが大会後も活躍するために、大会主催者が留意するポイント
1)年代や過去のボランティア経験を参考に、大会後のレガシー創造を考慮して選考する
2)多世代の協働と経験者による未経験者の育成が活動を通じて実現できるよう配置する
ボランティアの社会的意義を参加者に理解してもらう
ボランティアが単なる無償の労働力でないことを、関係する有給スタッフ等に理解してもらう
大会終了後、意欲があるボランティアに活動機会を提供する体制を整備する
1)活躍の場を継続的に提供するためのイベント、プログラムの開発:異分野連携と主催者啓発
2)ボランティア登録制度の整備:人材の固定化を防ぐ仕組みづくり
過去1年間にスポーツボランティアをした人は5.3%、過去1年間はしていないが、それ以前にスポーツボランティアをした人は9.4%で、合わせて14.7%の成人が、これまでに何らかのスポーツボランティアをした経験がある(図表1)。
図表1 スポーツボランティア実施状況
スポーツボランティアをした人の活動内容で多いのは、「【地域のスポーツイベント】大会・イベントの運営や世話」(39.3%)、「【日常的な活動】スポーツの指導」(29.3%)などであった。年間の平均実施回数は「【日常的な活動】スポーツの指導」が20.5回と最も多く、「【地域のスポーツイベント】大会・イベントの運営や世話」は3.3回であった。スポーツ指導や団体運営など、地域の日常的なスポーツ活動をささえるボランティアに加えて、スポーツイベントの運営に多くのボランティアが関わっていることがわかる(図表2)。
ボランティア活動の内容 | スポーツボランティア実施者 | |
---|---|---|
過去1年間に 行った活動 |
平均実施回数 | |
N=532 | ||
【日常的な活動】スポーツの指導 | 29.3% | 20.5回 |
【日常的な活動】スポーツの審判 | 17.9% | 10.1回 |
【日常的な活動】団体・クラブの運営や世話 | 25.0% | 15.7回 |
【日常的な活動】スポーツ施設の管理の手伝い | 18.6% | 5.8回 |
【地域のスポーツイベント】スポーツの審判 | 12.2% | 5.9回 |
【地域のスポーツイベント】大会・イベントの運営や世話 | 39.3% | 3.3回 |
【全国・国際的スポーツイベント】スポーツの審判 | 1.7% | 5.2回 |
【全国・国際的スポーツイベント】大会・イベントの運営や世話 | 13.3% | 1.7回 |
その他 | 1.1% | 6.3回 |
スポーツおよびスポーツ以外のボランティアの実施経験をみると、「スポーツ以外のボランティア」の経験者が31.3%、「スポーツボランティアとスポーツ以外のボランティア」が12.4%、「スポーツボランティア」のみが2.4%で、成人の半数弱に何らかのボランティア経験がある(図表3)。また、スポーツボランティア経験者の8割以上がスポーツ以外のボランティアも経験していた。
【図表3 】これまでのボランティア実施経験:スポーツとスポーツ以外のボランティア
ラグビーワールドカップ2019と2020年東京大会でのボランティア活動の希望についてたずねた。大会期間中の競技会場や周辺でのボランティアを行いたい人(「ぜひ行いたい」と「できれば行いたい」の回答の合計)は、オリンピックが23.1%、パラリンピックが17.7%、ラグビーワールドカップが11.6%であった(図表4)。
【図表4】 ラグビーワールドカップとオリンピック・パラリンピックのボランティア参加希望
注)大会期間中の競技会場や周辺でのボランティア
ラグビーワールドカップ2019と2020年東京大会で、大会期間中の競技会場や周辺でのボランティア活動を希望する人にその理由をたずねた。理由の上位3項目は3大会共通で、1位が「日本で開催されるから」、2位が「スポーツが好きだから」、3位が「選手のプレーをそばで見たいから」であった(図表5)。また、パラリンピックでは、「人の役に立ちたいから」の割合が他の2大会に比べて高かった。
【大会期間中の競技会場や周辺でのボランティア】 | |||
---|---|---|---|
ラグビーワールドカップ | 東京オリンピック | 東京パラリンピック | |
N=1,158 | N=2,315 | N=1,766 | |
スポーツが好きだから | 25.2% | 17.7% | 15.9% |
選手のプレーをそばで見たいから | 18.1% | 16.2% | 13.5% |
日本で開催されるから | 25.8% | 39.8% | 39.5% |
住むまちやその近隣で開催されるから | 6.8% | 3.9% | 4.1% |
地域に貢献したいから | 6.2% | 4.4% | 5.5% |
国際交流したいから | 5.3% | 6.4% | 5.6% |
語学を活かしたいから | 1.9% | 2.2% | 2.4% |
人とふれあいたいから | 3.4% | 2.8% | 3.2% |
人の役に立ちたいから | 7.3% | 6.5% | 10.1% |
その他 | - | - | 0.2% |
スポーツボランティア
2018年度
公益財団法人 笹川スポーツ財団