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「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。

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運動・スポーツ実施時におけるアプリ等使用の実態

~IT・テクノロジーの浸透がスポーツライフにもたらすものとは~

2023年10月11日

運動・スポーツ実施時におけるアプリ等使用の実態

 みなさんは、普段の運動やスポーツ実施時にスマートフォンやスマートウォッチ、またはゲームや動画などを使用されることはありますか。携帯電話使用者におけるスマートフォン比率は96.3%に上り1)、ウェアラブル端末の高性能化に伴い日常生活において電子機器を使用する回数や場面が増えつつあると考えられます。とくにウェアラブル端末は歩数や運動負荷量などトレーニング時の記録や心拍数、血中酸素濃度などの計測も可能となったことでスポーツや健康管理など活用の幅が広がっています。

 こうした情勢を踏まえて笹川スポーツ財団(以下SSF)が実施した「スポーツライフに関する調査」2022では、「過去1年間の運動等でのアプリ・ゲーム等使用経験」を新たに追加項目として、その実態の把握を試みました。

■運動・スポーツ実施時のアプリ・ゲーム等の使用「特になし」6

 項目ごとの割合が最も多いのは「特になし」65.7%、すなわち過去1年間の運動・スポーツ実施時にアプリやゲームを使用しなかった人が過半数に上ることがわかります[1]。スマートフォンの使用比率は100%に迫る勢いですが、この結果から運動・スポーツの実践における活用はまだ十分に浸透しているとは言えない状況のようです。

 それ以外の項目では、「ネット動画(無料)」20.1%が最も多く、「ヘルスケアアプリ」13.7%「ゲーム(身体活動を伴う)」8.2%と続きます。一方で「ウェアラブル端末」は6.5%、また連動している可能性の高い「運動記録アプリ」も4.8%に留まることから、その多機能性ゆえにいわば“普段使い”の域を出ず、運動・スポーツ以外の活動にはあまり活用されていない様子もうかがえます。

■運動・スポーツ実施者のうち、最も活用率が高いのは“軽度・継続層”

 続いて「特になし」の割合を年代別にみると高齢層ほど高い傾向にありますが、70歳以上でも約4人に1人(23.5%)という結果になりました[2]。社会の急速な情報化に伴って、〈デジタルネイティブ〉(生まれたときからデジタル機器やインターネットがある環境で育った主に1990~2000年代生まれの人たち)や〈デジタルディバイド〉(情報格差)という言葉が流行しましたが、デジタル化の波は確実に全世代に波及していると見受けられます。

 また、運動・スポーツ実施レベル別では異なった特徴がみられました。本調査では、「実施頻度」「実施時間」「運動強度」をもとに、運動・スポーツ実施レベルを4段階で独自に指標化しており、全体としてはレベル1以下とレベル3以上の二極化傾向にあります[1]

表1 運動・スポーツ実施レベル [n=3,000]

実施レベル(%) 基 準
レベル0(27.1) 過去1年間にまったく運動・スポーツを実施しなかった(年0回)
レベル1(23.9) 年1回以上、週2回未満(年1~103回)
レベル2(9.5) 週2回以上(年104回以上)
レベル3(19.3) 週2回以上(年104回以上)、1回30分以上
レベル4(20.2) 週2回以上(年104回以上)、1回30分以上、運動強度「ややきつい」以上

資料:笹川スポーツ財団「スポーツライフに関する調査」2022

 このうち「特になし」の割合が最も多かったのは非実施層の「レベル035.2%でしたが、最も少なかったのは「レベル28.2%でした[3]。したがって運動・スポーツの実施頻度や時間、強度に比例してアプリやゲーム等の使用経験も増減するといった傾向はみられませんでした。最も割合の少なかった「レベル2」は時間的にも強度的にも軽い運動・スポーツを定期的に実施している層で、全体を占める割合としては少ないもののアプリやゲームなどを比較的に活用している可能性があります。

 そこで近年とくにニーズが高まっているウェアラブル端末に注目してみましょう。株式会社マクロミルの調査によれば、コロナ禍における健康やフィットネスへの意識の高まりから市場が拡大しているとみられるウェアラブル端末の保有率は約1割、購入のきっかけは健康管理が最多となっています。また未購入者の9割が購入したいと回答していることから、今後も使用率の上昇が予想されます2)

 あらためて運動実施レベル別に「ウェアラブル端末」の使用率をみてみると、最も多かったのは「レベル4」(39.3%)でした[4]。健康管理や運動記録などのフィットネス系アプリケーションとの連携が可能なことから、より強度の高い運動を定期的に実施している層で多く使用されていることがわかります。ただし「レベル1」でも約5人に1人が使用しており、ライト層からヘビー層にかけて幅広くユーザーが存在しているとみられます。冒頭でも述べたように多機能化や利便性の向上に伴い、運動実施レベルにかかわらず運動・スポーツ実施時にも活用されやすいのではないかと推察されます。

■男女で異なるニーズとの相性~ウェアラブル端末×運動記録・無料動画×ヘルスケア

 使用経験のある項目については、性別によって異なる傾向がみられました[5]。男性では「ウェアラブル端末」(57.7%)、「運動記録アプリ」(55.3%)が多い一方、女性では「無料動画」(53.9%)、「ヘルスケアアプリ」(56.0%)が多い結果となりました。前項でも触れましたが、運動記録アプリとウェアラブル端末は連動して使用されている可能性が高く、どちらも女性に比べて男性の方が多く活用していることがわかります。他方、女性では健康管理の一環として運動・スポーツが実践されており、また動画を観ながら行われることも多いようです。本調査における種目別の運動・スポーツ実施率をみると、男女ともにジョギング・ランニング(男性12.6%/女性5.1%)や筋力トレーニング(男性19.4%/女性13.4%)、女性ではヨーガ(8.4%)も上位10種目に入っていることからも、ウェアラブル端末や運動記録アプリを装着・連携しながらのジョギング・ランニングや筋力トレーニング、無料動画を観ながらのヨーガといったテクノロジー活用の姿が想像されます。

 使用項目のうち「無料動画」は全体で最も割合が高く、運動・スポーツ実施の場面において多く活用されています(図1)。「無料動画」の使用率を年代別にみると、最も多いのは40歳代(24.9%)と約4人に1人が動画を観ながら運動・スポーツを実施したことがあるという結果になりました。“運動・スポーツ×動画“というスタイルが40歳代を中心に2050歳代まで幅広い年代に広まりつつあるとみられます。またYouTubeなど「無料動画」が多く活用されていることから、個人が自宅などでスマートフォンやパソコンを用いて手軽に実践されている様子もうかがい知ることができそうです。

IT・テクノロジーの浸透に対する期待と懸念

 SSFがまとめたスポーツライフ・データ2022では、同項目を用いてコロナ禍前後における運動・スポーツ実施頻度の比較分析が行われており、アプリ等を使用している人はコロナ禍前と比較して実施頻度が増加しました3)。アプリやウェアラブル端末を使用によって実施結果が可視化されるとともに、継続へのモチベーションの維持・向上の一助となります。また動画は手軽に正しい動きを真似たり手順を追ったりできるため、ゲームを通じて楽しみながら体を動かすことで実施のハードルを低くしたり、新しい種目へのチャレンジをしやすくしたりする効果も生まれるでしょう。

 そうした手軽さは運動実施率の向上につながりやすい反面、過度な負荷や誤った方法といったリスクもはらんでいます。最近ではランニングや筋力トレーニングなど個人で行える運動・スポーツが人気ですが、運動・スポーツへの取り組みの初期段階では身体が負荷に十分慣れておらず、怪我や事故に陥ってしまうケースもあります。ウェアラブル端末の使用をきっかけに日々の成果の蓄積がアプリ等を通じて目に見えるほど、身体が示すシグナルに気づきにくくなってしまう可能性もあります。健康づくりにとって運動・スポーツの継続的な実施は重要なポイントの一つであることは間違いありませんが、常に心と体の声に耳を傾け、そのバランスが崩れていないか注意を払うことも重要です。

 運動によるけがや事故の発生は少数であり、適切な運動内容であれば、大きなリスクはないことがわかっていますが、健康状態のチェックや運動前のセルフチェックリストを活用してみるのもよいでしょう4)。運動不足が常態化する多くの現代人にとって、アプリやゲーム等を通して楽しみながら運動やスポーツに取り組みやすくなっているとすれば非常に明るい変化です。テクノロジーの活用によって運動やスポーツの扉が軽くなり、得意な人・苦手な人それぞれがやりたいこと・やれることから始められる社会への期待が高まります。

【参考文献】

1)モバイル社会研究所「モバイル社会白書 2022年版」
https://www.moba-ken.jp/whitepaper/wp22.html

2)株式会社マクロミル「最新!ウェアラブルデバイス調査 ~未保有者の9割が「購入したい」、今後も市場拡大が予測される結果に~(マクロミル調べ)」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000602.000000624.html

3)横田匡俊(2022)「ITやテクノロジーはスポーツの新たな価値を生み出すか?」『スポーツライフ・データ2022 スポーツライフに関する調査報告書』笹川スポーツ財団, pp.47-51.

4)厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト(e-ヘルスネット)「安全に運動を行うために」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise-summaries/s-06

データの使用申請

最新の調査をはじめ、過去のスポーツライフ・データのローデータ(クロス集計結果を含む)を提供しています。

活用例

  1. 政策立案:所属自治体と全国の比較や調査設計に活用(年齢や性別、地域ごとの特徴を把握)
  2. 研究:研究の導入部分の資料や仮説を立てる際に活用(現状の把握、問題提起、仮説、序論)
  3. ビジネス:商品企画や営業の場面で活用(市場調査、データの裏付け、潜在的なニーズの発見)
テーマ

スポーツライフ・データ

キーワード
年度

2023年度

担当研究者