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「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。

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種目別(エクササイズ系と競技系)にみた運動・スポーツ実施状況 その1 「中高齢者のエクササイズ系種目実施率は増加」

-年1回以上実施者の傾向-

2019年1月23日

種目別にみた運動・スポーツ実施状況

はじめに

スポーツ庁は2017年3月に策定した第2期スポーツ基本計画の中で、4つの基本方針を掲げ、スポーツ参画人口を拡大し、「一億総スポーツ社会」の実現に取り組むことを示した。2019年のラグビーワールドカップをはじめ、2020年の東京オリンピック・パラリンピック、2021年の関西ワールドマスターズゲームズと、わが国はメガスポーツイベントの開催を控え、国内のスポーツに対する気運が高まっている。また、少子高齢化が進む現代において、生涯を通じた生きがいの創出や健康寿命の延伸という点で、運動・スポーツ実施率を向上させることは非常に重要な課題の1つである。このような状況の中、わが国の運動・スポーツ実施状況を詳細に把握するため、20歳以上の成人を対象にした「スポーツライフに関する調査」(2002年~2018年)の種目に着目し、二次分析を行った。

1. エクササイズ系種目と競技系種目の実施率の推移
(エクササイズ系種目とは?競技系種目とは?)
(2002年~2018年)

2018年に実施した「スポーツライフに関する調査」の結果の中で、年1回以上の実施率上位6種目であるウォーキング、筋力トレーニング、サイクリング、ジョギング・ランニング、水泳、体操(軽い体操、ラジオ体操など)をエクササイズ系種目例、サッカー、卓球、テニス(硬式テニス)、バドミントン、バレーボール、野球を競技系種目例に分類し、エクササイズ系種目および競技系種目それぞれ6種目のうち1種目でも実施した人の割合を図1に示した。あわせて、20歳以上の年1回以上の運動・スポーツ実施率を示した。
さまざまな種目を含めた全体の運動・スポーツ実施率は、2002年の68.0%から2018年の73.8%へと過去16年間で増加傾向にある。その中でエクササイズ系種目の実施率は、2002年の38.2%から2018年の47.9%と増加しているが、競技系種目の実施率は、2002年は17.9%、2018年は18.2%と横ばいで推移をしている。

図1 エクササイズ系種目※1と競技系種目※2の年1回以上の実施率 年次推移

図1 エクササイズ系種目と競技系種目の年1回以上の実施率 年次推移

注1)全体:過去1年間に何らかの運動・スポーツを実施した人の割合
注2)2018年調査の年1回以上の実施率上位6種目(下記参照)のいずれか1種目以上を実施した人の割合
※1 エクササイズ系種目:ウォーキング、筋力トレーニング、サイクリング、ジョギング・ランニング、水泳、体操(軽い体操、ラジオ体操など)を含む
※2 競技系種目:サッカー、卓球、テニス(硬式テニス)、バドミントン、バレーボール、野球を含む

2. 年代別にみたエクササイズ系種目の実施率の年次推移

中高齢者のエクササイズ系種目実施率は増加傾向、70歳以上の実施率は過去16年で2倍以上に!

年代別にエクササイズ系種目の実施率をみると、20歳代・30歳代では、年による増減はあるものの2002年から2018年にかけ横ばいで推移している(図2)。40歳代の実施率は39.5%(2002年)から44.4%(2018年)に増加しているが、2012年以降は減少傾向にある。50歳代の実施率は40.3%(2002年)から48.9%(2018年)へ増加した。2016年では最も実施率は低かったが、2018年に大きく増加し全年代の中で3番目に多い実施率となった。

特徴的な点は60歳代、70歳以上の実施率の増加である。60歳代の実施率は37.7%(2002年)から52.3%(2018年)へ大きく増加した。また、2010年以降は50%以上の実施率を維持し、他の年代よりも高い水準で推移している。70歳以上の実施率は22.2%(2002年)から54.2%(2018年)へ2倍以上増加した。2018年のエクササイズ系種目の実施率は70歳以上が54.2%、60歳代が52.3%、50歳代が48.9%と上位を占め、エクササイズ系種目の実施率は50歳以上の中高齢者がけん引していると考えられる。

図2 エクササイズ系種目の実施率の年次推移

 図2 エクササイズ系種目の実施率の年次推移

注1)エクササイズ系種目:ウォーキング、筋力トレーニング、サイクリング、ジョギング・ランニング、水泳、体操(軽い体操、ラジオ体操など)を含む
注2)n数は表1を参照

表1 各調査年の年代別n数
20歳代 30歳代 40歳代 50歳代 60歳代 70歳以上 合計
2002年 368 363 397 439 385 315 2,267
2004年 332 405 385 432 424 310 2,288
2006年 252 323 286 362 326 318 1,867
2008年 306 395 322 394 331 252 2,000
2010年 293 388 333 362 366 258 2,000
2012年 286 376 352 334 381 271 2,000
2014年 270 357 376 332 383 282 2,000
2016年 393 499 570 474 557 433 2,926
2018年 381 480 595 481 564 428 2,929

3. 年代別にみた競技系種目の実施率の年次推移

若い年代ほど実施率は高いが、減少傾向に。60歳以上は微増傾向。

図3に競技系種目の推移を年代別に示した。2002年から2018年にかけ、20歳代が最も高い割合で推移している。次いで30歳代、40歳代と続き、若い年代ほど実施率が高い。
しかし、20歳代の実施率は2002年の36.1%から2018年の29.4%に減少している。30歳代は26.2%(2002年)から27.7%(2018)、40歳代は21.9%(2002年)から25.0%(2018年)、50歳代は13.7%(2002年)から12.7%(2018年)と30~50歳代の実施率はほぼ横ばいで推移している。
一方、60歳代は5.7%(2002年)から9.0%(2018年)、70歳以上では2.5%(2002年)から6.1%(2018年)と60歳以上の年代の実施率は増加している。競技系種目の実施率は、過去16年間で50歳以下の年代では横ばい、または減少傾向にあるが、60歳以上の年代では増加の傾向がみられる。
エクササイズ系種目、競技系種目の年次推移を年代別に分析した結果、両種目で60歳以上の実施率が増加していることが明らかになった。一方で20歳代や30歳代といった若い世代の実施率は減少または横ばいである。全体の運動・スポーツ実施率を向上させるためには、それぞれの年代に合わせた対策を講じることが必要であると考えられる。

図3 競技系種目の実施率の年次推移

  図3 競技系種目の実施率の年次推移

注1)競技系種目:サッカー、卓球、テニス(硬式テニス)、バドミントン、バレーボール、野球
注2)n数は表1を参照

4. 種目ごとの特徴

①ウォーキング、筋力トレーニング、ジョギング・ランニングの実施人口は2002年から2018年にかけて増加傾向
②バドミントン、卓球、サッカーは2002年以降減少傾向にあったが、2018年調査では種目によっては回復の兆し

図4、図5に各種目の年1回以上の推計実施人口を示した。エクササイズ系種目は2002年の数値と比較すると、全ての種目で年1回以上の実施人口は増加している。その中で筋力トレーニングの実施人口が継続して増加している点が特徴である。
競技系種目では、卓球、サッカーの実施人口は2002年から2018年にかけて増加し、バドミントンは横ばいで推移。2018年には卓球の実施人口が競技系種目の中で最多となった。

(1) エクササイズ系種目(図4)

  • ウォーキング
    エクササイズ系種目の中でも最も実施人口が多く、人気の種目である。2002年の1,681万人から2018年の2,655万人へ約1,000万人増加している。今後も健康志向の高まりや、取り組みやすさという点からも実施人口は高い水準を維持すると考えられる。
  • 筋力トレーニング
    推計実施人口は2002年の856万人から2018年には1,566万人と約2倍に増加している。他の種目と違い、2006年以降、実施人口が一度も減少することなく継続して増加している。
  • ジョギング・ランニング
    2002年の483万人から2018年の964万人と増加傾向にある。2012年の1,009万人をピークに2016年には893万人まで減少したが、2018年には再び増加。

図4 年1回以上の種目別推計実施人口の年次推移(エクササイズ系種目)

 図4 年1回以上の種目別推計実施人口の年次推移(エクササイズ系種目)

注) 推計実施人口:表3の住民基本台帳人口(人)に表2の実施率(%)を乗じて推計

表2 ウォーキング、筋力トレーニング、ジョギング・ランニング年1回以上の実施率

(%)

2002
(n=2,267)
2004
(n=2,288)
2006
(n=1,867)
2008
(n=2,000)
2010
(n=2,000)
2012
(n=2,000)
2014
(n=2,000)
2016
(n=2,926)
2018
(n=2,929)
ウォーキング 16.7 21.6 19.7 22.4 24.5 25 25.7 23.7 25.6
筋力トレーニング 8.5 9.6 8.4 11.1 11.5 12.2 13.0 13.5 15.1
ジョギング・ランニング 4.8 6.6 5.9 7.3 8.5 9.7 9.5 8.6 9.3
表3 住民基本台帳人口

(人)

2002
(2001.3.31)
2004
(2003.3.31)
2006
(2005.3.31)
2008
(2007.3.31)
2010
(2009.3.31)
2012
(2011.3.31)
2014
(2013.3.31)
2016
(2015.1.1)
2018
(2017.1.1)
100,649,429 101,730,947 102,636,961 103,387,474 103,824,522 103,973,831 103,811,681 103,888,078 103,708,284

:2011年東日本大震災により人口を報告できなかった22市町村については、2010年3月31日現在の住民基本台帳人口を使用。
注) 各年の人口:( )内の日付現在の住民基本台帳による。
出典:総務省統計局ウェブサイト(住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯調査数)

(2) 競技系種目(図5)

  • バドミントン
    実施人口は2002年の554万人から2018年の518万人とほぼ横ばいで推移している。2010年には実施人口が706万人にまで増加した。その後減少したものの、500万人以上の実施人口を維持し、競技系種目の中でも人気の種目である。
  • 卓球
    2002年実施人口は564万人と競技系種目の中では最も多い種目であったが、その後は減少を続け2016年に447万人にまで減少した。しかし2018年には581万人と大きく増加し、再び競技系種目の中では実施者が最も多い種目となった。
  • サッカー
    実施人口は2002年の272万人から2018年では436万人に増加した。2012年に582万人まで増加したが、2016年にかけて減少傾向に。2018年には再び増加した。

図5 年1回以上の種目別推計実施人口の年次推移(競技系種目)

 図5 年1回以上の種目別推計実施人口の年次推移(競技系種目)

注)  推計実施人口:表3の住民基本台帳人口(人)に表4の実施率(%)を乗じて推計

表4 バドミントン、卓球、サッカーの年1回以上の実施率

(%)

2002
(n=2,267)
2004
(n=2,288)
2006
(n=1,867)
2008
(n=2,000)
2010
(n=2,000)
2012
(n=2,000)
2014
(n=2,000)
2016
(n=2,926)
2018
(n=2,929)
バドミントン 5.5 6.1 4.6 5.8 6.8 5.0 5.3 5.3 5.0
卓球 5.6 6.0 4.6 5.4 4.5 4.7 4.4 4.3 5.6
サッカー 2.7 3.7 3.4 4.4 4.6 5.6 4.0 3.4 4.2

5.まとめ

わが国の運動・スポーツ実施状況を種目別、年代別に分析したところ、以下の3つの特徴や傾向が明らかとなった。

  1. エクササイズ系種目、競技系種目ともに中高齢者の実施率が増加
  2. ウォーキングや筋力トレーニングなどのエクササイズ系種目の実施人口が大きく増加
  3. 2018年に卓球の実施人口が、競技系種目の中で最多となる

中高齢者の運動・スポーツ実施率が増加した背景には、健康志向の高まりや国・各自治体の運動・スポーツ実施率増加に向けた取り組みが関係していると考えられる。超高齢社会を迎えたわが国にとって、中高齢者の運動・スポーツ実施率の増加はさまざまな効果が期待できる。一方で、20歳代や30歳代の運動・スポーツ実施率は増加しておらず、今後は子育て世代や働く若い世代の実施率が増加するような取り組みが求められる。
今回分析を行った「スポーツライフに関する調査」は、わが国の運動・スポーツ実施状況を把握するための基礎資料となることを目的に継続的に行われている調査である。本レポートではこのデータを活用し、種目別、年代別にわが国の運動・スポーツ実施状況を明らかにした。
今後は、わが国の運動・スポーツ実施率を向上させる具体策を示すために、引き続き経年のデータを分析するとともに、さまざまな視点から「スポーツライフに関する調査」のデータを分析し、結果の要因を社会的な背景と照らし合わせながら明らかにしていきたい。

笹川スポーツ財団 スポーツ政策研究所研究員 鈴木 貴大

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活用例

  1. 政策立案:所属自治体と全国の比較や調査設計に活用(年齢や性別、地域ごとの特徴を把握)
  2. 研究:研究の導入部分の資料や仮説を立てる際に活用(現状の把握、問題提起、仮説、序論)
  3. ビジネス:商品企画や営業の場面で活用(市場調査、データの裏付け、潜在的なニーズの発見)
テーマ

スポーツライフ・データ

キーワード
年度

2018年度

担当研究者