世界保健機関(以下、WHO)は、2010年にWHOが発表したガイドライン[i]を更新し、11月25日に新たなガイドライン「身体活動および座位行動に関するガイドライン(WHO Guidelines on physical activity and sedentary behaviour)」を発表しました。
本ガイドラインではすべての人が、年齢や能力を問わずアクティブになることは可能であること、そしてどんな小さなことでもすべての行動がアクティブになるために役に立つことを強調しています。
新たなガイドラインでは、一般的な成人に対して1週間で150分~300分の中強度[ii]の有酸素運動(もしくは75分~150分の高強度の有酸素運動)を行うことを奨めており、青少年に対しては、平均して1日に60分以上の運動実施を推奨しています。ガイドラインの中には、その他にも高齢者、妊娠中もしくは産後の女性、慢性疾患をもつ成人、障害者など、様々な人の状況に応じた運動実施に関する推奨事項が記されています。
WHOの統計によると世界では4人に1人の成人、そして5人に4人の青年が十分な運動を行っておらず、そのことによってグローバルで540億米ドルの医療費の増加と、生産性の低下により140億米ドルの損失が発生していると試算されています。
また定期的な運動の実施は、心疾患、2型糖尿病、がんなどの予防にもつながり、うつ症状や不安の軽減、認知力低下の防止、記憶力の向上といった効果も見込むことができるとWHOは発表しています。
WHOのテドロス事務局長は、本ガイドラインの発表とともに、
「運動不足を解消してアクティブでいることは健康と幸福のために非常に重要なことであり、より長い人生をもたらしてくれるとともに、人生に楽しみをもたらしてくれる。どのような小さなことでも良いから行動に移すことが重要である。特に新型コロナウイルス感染拡大に伴う様々な制限がある中では、我々は安全を保った上で、工夫を凝らして毎日運動を行っていく必要がある」
とコメントしています。
新たなガイドラインを通じてWHOは、運動実施はどのような形でも良く、仕事や移動の最中、スポーツやレジャー活動の中、ダンスや遊びの中、またガーデニングや掃除といった日常生活の中でも実施可能であるというメッセージを送っています。どのような運動でも何もしないよりは良く、またやればやるほど健康には良いとしています。特に仕事や学校で座っている時間が長い人は、そのネガティブな影響を埋めるためにも、より多くの運動を実施すべきであるとしています。
WHOは各国政府に対して、今回発表した新ガイドラインと2018年のWHO総会で採択された「身体活動に関する世界行動計画2018-2030(Global Action Plan on Physical Activity 2018-2030:GAPPA)」を参考にしながら、各国の政策の中で国民の健康のための運動実施促進策を織り込むことを望んでいるとのことです。