オリンピック出場選手やプロスポーツ選手を数多く輩出する倉敷市は、古くからスポーツが盛んなまちだ。2011年1月には、生涯スポーツ社会の実現に向けたスポーツ振興基本計画を策定した。いつでも、どこでも、いつまでも、市民の誰もがスポーツに親しむことができるよう、地域に密着したさまざまな取り組みを行っている。
- 調査・研究
© 2020 SASAKAWA SPORTS FOUNDATION
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スポーツ政策研究所を組織し、Mission&Visionの達成に向けさまざまな研究調査活動を行います。客観的な分析・研究に基づく実現性のある政策提言につなげています。
自治体・スポーツ組織・企業・教育機関等と連携し、スポーツ推進計画の策定やスポーツ振興、地域課題の解決につながる取り組みを共同で実践しています。
「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。
日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。
オリンピック出場選手やプロスポーツ選手を数多く輩出する倉敷市は、古くからスポーツが盛んなまちだ。2011年1月には、生涯スポーツ社会の実現に向けたスポーツ振興基本計画を策定した。いつでも、どこでも、いつまでも、市民の誰もがスポーツに親しむことができるよう、地域に密着したさまざまな取り組みを行っている。
渡邉 市長として2期目を迎えられましたが、まず倉敷の魅力についてお話いただければと思います。
伊東 倉敷市には、白壁の町並みが美しい倉敷地区をはじめ、瀬戸大橋と国産ジーンズ発祥の地である児島地区、白桃の生産として知られる玉島地区、日本有数の水島コンビナート群を持つ水島地区、歴史に彩られた真備船穂地区など、さまざまな特色があります。多彩な個性が詰まっている、それこそが倉敷の魅力だと感じています。
渡邉 本当にたくさんの見所がありますね。市のホームページを拝見したのですが、こちらにはポッドキャスト(インターネット配信の音声)対応のFMラジオや動画による広報などもあり、ICT(情報通信技術)を上手く活用しているのも印象的でした。
伊東 ホームページは、なるべく分かりやすく、市民の皆さんが迅速に自分の必要な情報にたどり着けるよう工夫しています。記者会見の動画などでも、市の様子を感じていただければうれしいです。
渡邉 市民の皆さんと自由に意見交換を行う場としての市民ふれあいトークも、積極的に開催していらっしゃいますね。
伊東 私の方針として、市民の皆さんがどんな意見を持たれているのか、そして、今、何が重要だと思っておられるのか、それを現場で自分自身が感じながら仕事をしていきたいという思いがあります。現場主義、対話重視の姿勢をもって自分自身も納得したうえで市の方向性を決めていきたいと考えています。
渡邉 頭で考えるだけでなく、体感したことまで含めて総合的に判断をする。市民への説明にも、説得力が出てくるのではないでしょうか。
伊東 自分もしっかり納得できる施策だからこそ、市民の皆さんにも自信を持って説明できると思っています。
渡邉 先般開かれた市民ふれあいトークは、スポーツをテーマにしたまちづくりを題材に行われていますね。
伊東 昨年、倉敷市で初めてスポーツ振興基本計画を策定したこともあり、スポーツについて市民の皆さんがどういう考えを持っているのかを伺おうと、この機会を設けました。スポーツには、『する』、『見る』、『支える』という大きな3本柱がありますが、手軽にスポーツを楽しむ人、スポーツ観戦が好きな人、競技スポーツに取り組む人など、いろいろな立場からの意見を聞くことができました。その根底を流れているのは、やはりスポーツを通じて、健康で明るく元気に暮らしていきたいという思いであると、感じました。
渡邉 倉敷市は著名なスポーツ選手の輩出も多いまちです。市民の皆さんも、自然とスポーツに親しんでいるのではないでしょうか。
伊東 そうですね。プロ野球東北楽天ゴールデンイーグルスの星野仙一監督や、フィギュアスケートグランプリファイナルでも日本男子初優勝し、ソチオリンピックを目指す高橋大輔選手、ロンドンオリンピックで女子バレーボールチームのキャプテンを務めた荒木絵里香選手、プロ野球で今年の最優秀新人(新人王)に選ばれた広島東洋カープの野村祐輔投手など、倉敷市からは多くのスポーツ選手が出ています。市民の皆さんも、選手を応援したり、選手への憧れからスポーツに取り組んでみようと思ったり、そんな気持ちを持ってくださるみたいです。
渡邉 ヒーロー、ヒロインになるような選手が出てくると、その競技の競技者数がぐっと伸びますから、今後が楽しみですね。市民参加のスポーツイベントは、どのような内容のものを開催されているのですか。
伊東 倉敷国際トライアスロン大会や、瀬戸内倉敷ツーデーマーチというウオーキングイベントも開催しています。
また、平成17年に開催された「晴れの国おかやま国体」で本格的なプール施設(児島地区公園水泳場・愛称児島マリンプール)が整備されたので、それを機に水球にも力を入れています。さらに、2012年夏の甲子園(全国高等学校野球選手権大会)では倉敷商業高校野球部がベスト8に進出するなど、倉敷市は野球も盛んです。
渡邉 倉敷市には、野球場もたくさんあるそうですね。
伊東 この市は大きな3市が合併した経緯から、エリアごとに大きな総合スポーツ公園が整備されており、市内に11ヶ所の野球場がそれぞれ20~30分の距離にあります。スポーツ環境が整っていることもあり、野球を含めて大きなスポーツ大会が多数開催されています。特に野球は盛んで、シニア野球の全国大会や国際少年野球大会なども行われています。
渡邉 なるほど。倉敷市にとって、野球はまちの象徴となるスポーツと言えそうですね。
渡邉 倉敷国際トライアスロン大会は、どのような経緯でスタートしたのでしょうか。
伊東 瀬戸内海を望む山道、情緒あふれる白壁のまち並み、そして瀬戸大橋など、倉敷市にはトライアスロンのコースとなり得る場所に魅力的な環境があります。その資源を活用し、トライアスロンを通じて全国に倉敷市の魅力をPRしようと大会をスタートさせました。毎回、全国から700名近くの方に参加いただいています。
渡邉 県外からも多くの方が参加されていらっしゃるのですか。
伊東 瀬戸内の自然の風景や風光明媚な景色を楽しめるコースなので、県外から来た方に非常に喜んでいただけます。また、スイム会場が児島モーターボートレース場というのも珍しく、この大会の特徴の一つにもなっています。
さらに、約3,000人ものボランティアの方が参加してくださいます。市の広報紙に、選手の登録番号と氏名を記した表をはさみ込み全世帯に配布しています。そうすると、ボランティアの皆さんは、表とにらめっこしながら、「○○さん、がんばって!」と個々の選手の名前を呼びながら声援を送ってくれるんです。選手もそれに手を挙げて応えたりと、温かい雰囲気になり、選手にとってもボランティアの方にとっても思い出深い経験となります。実際、トライアスリートの間では、アットホームでボランティアの方を身近に感じる大会だと大変高い評価をいただいています。
渡邉 ボランティアの人数も、非常に多いですね。
伊東 選手に対して4倍ほどの人数になります。地元の自治体の方々をはじめ、中学生、高校生まで多くの方が協力してくださいます。なかには、学校単位で参加したり、地域の町内会が集まってくださったりと、団結して積極的に参加いただいています。
男性 | 女性 | 合計 | |
申込者数 | 554人 | 39人 | 593人 |
出場者数 | 510人 | 35人 | 545人 |
完走者数 | 485人 | 31人 | 516人 |
完走率94.7%
1組3名 | ||
申込者数 | 40組 | 120人 |
出場者数 | 39組 | 117人 |
完走者数 | 37組 | 111人 |
完走率94.9%
渡邉 『する』、『見る』、『支える』というスポーツの側面から考えると、ボランティアは支えるスポーツであり、さらに世代間交流も図ることができるスポーツ活動ですね。
伊東 ボランティアで参加したおじいちゃんおばあちゃんたちが、中高生にいろいろ教えてあげている、そんな交流の様子も見ることができました。
現場主義、対話重視をモットーとしている私にとっても、トライアスロン大会は市民の方、そして市外からいらっしゃった方と交流を図る大切な機会です。第1回大会の開会式で「フィニッシャーズタオルを持って、皆さんをゴールで待っていま~す!」と言ってしまったことがきっかけなのですが、早い選手がゴールする朝10時ごろから制限時間一杯の12時ぐらいまで、ゴールした方に完走の証のフィニッシャーズタオルをかけています。
ボランティアの方にもタオルをかける担当の方がいらっしゃいますから、私は11時ごろまでで終わろうと思っているのですが、トライアスリートの方が「いや~、市長がまだいた。タオルかけてもらえて良かった~。」と言ってくださって、すごく喜んでくださるものですので、ついつい最後の方までタオルかけを頑張ってしまいます。炎天下ですから、真っ黒に日焼けしますが、皆さんの笑顔を見ると私も嬉しいですから、今後もぜひ続けたいと思っています。
渡邉 市長にタオルをかけてもらうというのが、選手のモチベーションのひとつにもなっているんでしょうね。
屋外に50m、屋内に25mの公認プール(日本水泳連盟の競技規則に従って認可されたプール)を持つ、児島地区の本格的なプール施設。競技、訓練などでのみ使用される飛び込みプールも備えている。施設には、バリアフリーのシャワーや更衣室はもちろん、手すり、腰掛け付きのシャワー室を完備した障害者更衣室、水のなかでも使用できるプール用車椅子なども備えられ、誰もが水泳を楽しめるよう配慮されている。また、屋内の温水プールは通年利用が可能。目前に瀬戸内海が広がる絶好のロケーションに恵まれたこの施設は、利用料金が低価格なうえ、施設もきれいで充実していることから、多くの市民に親しまれている。