一方、今大会で選手たちに用意された環境は、決して"快適"と言えるものではなく、コンディショニングは難しかった。高温・多湿である気候と食事面で体調を崩す選手も少なくなかったようだ。
今大会は、2カ月前に行われたアジア競技大会と同じ開催地で行われ、開会式・閉会式が行われたメインスタジアムをはじめ、一部を除く競技会場はアジア大会と同じ施設が使用された。選手たちが宿泊した選手村もアジア大会と同じだった。
しかし、選手たちの話によれば、部屋の衛生、食事、競技会場までの輸送については予想以上の苦労を強いられたという。水回りだけでなく、ベッドやタオルも不衛生で、日本人選手にとってはまさに"東南アジアの洗礼"。なかでも特に問題とされたのは、食事面だったようだ。
選手村の食堂には「東アジア」「西アジア」「インターナショナル」など、数種類のコーナーがあったが、どれも似たような味付けでたいした違いはなかったという。料理そのものに関しては「決して美味しくはなかったけれど、慣れれば大丈夫だった」と語る選手がほとんどだったが、最も問題だったのは準備のスピードが追いつかなかったのか、提供される食事が必要とされる量を下回ったことだ。そのために順番を待つ選手たちで長蛇の列ができていたという。
また、選手村と会場までの輸送においても、スムーズにはいかず、大会後半になると、循環用のバスが十分に手配されず、大幅に遅れたり、あるいは用意した選手用のバスに全員が乗り切ることができなかったこともあったと聞く。
食事面においては、日を追うごとに改善され、長蛇の列ができるようなことはなくなったようだが、実はこうした準備の遅れは、選手村に限ったことではなく、競技会場においても多々見受けられた。
例えば、入場する際には観客もメディアも同じゲートをくぐるようになっており、持ち物のセキュリティチェックが行われた。しかし、会場によっては大会初日にはセキュリティチェックが行われなかった。車いすバスケットボール会場においては、ゲートにはスタッフもまばらで、X線荷物検査装置はカバーがかけられたままだった。
大会2日目以降はその装置のカバーは外され、必ず荷物検査が行われていたものの、その検査自体も非常に怪しかった。大会期間中、セキュリティチェックに引っかかった人をついに一人も見ることがなかったのだ。