テレビで見たスポーツでは圧倒的な人気を誇るサッカー
―実施率は低いサッカーですが、人気もないのでしょうか?
武長 表2の『直接観戦したスポーツ』はスポーツを直接スタジアムや競技場へ行って観戦したスポーツの割合を示しています。Jリーグやサッカー日本代表試合は、女子は男子に比べて少ないですが、表3の『直接観戦したいスポーツ』では女子全体の2割がサッカー日本代表の試合(五輪代表も含む)と答えています。なでしこジャパンも16.3%という他の種目に比べて高い割合です。さらに、表4『テレビで観戦したスポーツ』ではもっと明確です。サッカー日本代表試合は女子の52.7%がテレビで観戦したと回答しており、サッカーへの関心の高さがうかがえます。
【表2】直接観戦したスポーツ(全体・性別・学校期別:複数回答)
(%)
順位 |
種目 |
全体
(n=1,826) |
男子
(n=951) |
女子
(n=875) |
1 |
プロ野球(NPB) |
13.7 |
17.7 |
9.5 |
2 |
高校野球 |
7.9 |
9.8 |
5.9 |
3 |
Jリーグ(J1、J2) |
6.5 |
9.3 |
3.4 |
4 |
バスケットボール(高校、大学、JBLなど) |
3.8 |
2.6 |
5.1 |
5 |
サッカー(高校、大学、JFLなど) |
3.5 |
4.5 |
2.4 |
6 |
マラソン・駅伝 |
3.3 |
3.5 |
3.2 |
7 |
バレーボール(高校、大学、Vリーグなど) |
2.8 |
1.3 |
4.6 |
8 |
プロバスケットボール(bjリーグ) |
2.0 |
2.2 |
1.8 |
9 |
アマチュア野球(大学、社会人など) |
1.5 |
1.9 |
1.0 |
10 |
サッカー日本代表試合(五輪代表を含む) |
0.8 |
1.2 |
0.3 |
バレーボール(日本代表) |
0.8 |
0.5 |
1.1 |
資料:笹川スポーツ財団「10代のスポーツライフに関する調査」2013
【表3】直接観戦したいスポーツ(全体・性別・学校期別:複数回答)
(%)
順位 |
種目 |
全体 (n=1,826) |
男子 (n=951) |
女子 (n=875) |
1 |
サッカー日本代表試合(五輪代表を含む) |
25.8 |
29.4 |
21.8 |
2 |
プロ野球(NPB) |
23.0 |
28.8 |
16.5 |
3 |
海外のプロサッカー(ヨーロッパ、南米など) |
14.0 |
19.9 |
7.6 |
4 |
高校野球 |
13.8 |
16.4 |
11.0 |
5 |
フィギュアスケート |
13.4 |
3.7 |
24.1 |
6 |
サッカー日本女子代表試合(なでしこジャパン) |
13.2 |
10.5 |
16.3 |
7 |
Jリーグ |
12.8 |
18.0 |
7.1 |
8 |
メジャーリーグ(アメリカン大リーグ) |
11.8 |
17.4 |
5.7 |
9 |
バレーボール(日本代表試合) |
11.2 |
6.3 |
16.5 |
10 |
プロテニス |
9.5 |
9.8 |
9.2 |
資料:笹川スポーツ財団「10代のスポーツライフに関する調査」2013
【表4】テレビで観戦したスポーツ(全体・性別・学校期別:複数回答)
(%)
順位 |
種目 |
全体 (n=1,844) |
男子 (n=964) |
女子 (n=880) |
1 |
サッカー日本代表試合(五輪代表を含む) |
60.6 |
67.7 |
52.7 |
2 |
プロ野球(NPB) |
53.0 |
63.1 |
42.0 |
3 |
サッカー日本女子代表試合(なでしこジャパン) |
38.5 |
40.7 |
36.1 |
4 |
フィギュアスケート |
37.9 |
25.9 |
51.0 |
5 |
高校野球 |
37.0 |
45.4 |
27.8 |
6 |
マラソン・駅伝 |
29.6 |
30.4 |
28.8 |
7 |
バレーボール(日本代表試合) |
24.5 |
18.7 |
30.9 |
8 |
Jリーグ(J1、J2) |
21.9 |
31.6 |
11.1 |
9 |
海外のプロサッカー(ヨーロッパ、南米など) |
16.8 |
25.4 |
7.4 |
10 |
プロテニス |
16.1 |
18.7 |
13.3 |
資料:笹川スポーツ財団「10代のスポーツライフに関する調査」2013
問題点は―プレーする場、人数、指導者の不足
―なぜ実施率に結び付かないのでしょう?
武長 サッカーは人気があるのにプレーの回数は少ない。その原因のひとつは実施機会の少なさ、サッカー部の設置率の低さがあげられます。2014年度の日本中学校体育連盟が行った加盟生徒数の調査では、男子が7,003校に対し、女子は511校。同年、全国高等学校体育連盟が行った調査では、男子が4,154校に対し、女子は616校でした。ただ、そういった状況でも、熱心な“サッカー女子”は学校や地元に女子チームがなければ、男子チームに混ざって活動している場合もあると聞きます。そのため、女子チームがなくてもプレーしている生徒達は一定数いると思われます。
プレーヤーの人数、顧問や指導者が足りない
―実施機会が少ないという以外にも問題はありますか?
武長 たとえば、ひとりの女子生徒が「サッカーをやりたい!」と言っても、人数が揃わなければ部活動は行えません。試合に出場するとなれば、ゴールキーパーを入れて最低でも11人必要となりますが、3学年合わせても、その人数にいたらない場合もあります。改善策として3、4校が集まりひとつの女子チームを編成し、場所などは持ち回りで確保する、というような工夫をしている中学校もあります。ほかにも、新しく運動部を作る場合は顧問が必要です。部活動の顧問は教員が担当するケースがほとんどですが、指導が行き届かない場合もあります。近頃は、サッカー経験のある指導者確保という目的から、外部から指導者を招く例も多々あります。
「サッカーはしたいけど、できない…」が多くの女子の本音
―今後、どういった対応が必要でしょうか?
武長 小学校までサッカーをしていたけど、中学校に入ったらサッカー部がない。そのため、学校ではひとまずほかの運動部に入りつつ、クラブなどでサッカーを続けるという例もあります。これまでのデータからも、女子生徒達の間でサッカーが不人気であるとは言い切れないことは確かです。むしろ『本当はしたいのに、できない』女子が多いのではないかと感じます。さらにいえば、サッカーはまだまだ男子のスポーツというイメージが一般的に強いのかもしれません。女子サッカーの中学生年代の育成については、地域のクラブなどで、サッカーができる機会を増やしていくなどの取り組みが必要とされるでしょう。