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「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。

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日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。

スポーツが持つ価値の“持続性ある成長と発展”を改めて考える

SPORT POLICY INCUBATOR(13)

2022年3月16日
中村 考昭(クロススポーツマーケティング株式会社 代表取締役社長/ゼビオスポーツ総研 エグゼクティブフェロー/笹川スポーツ財団 理事)

 東京五輪が218月に終わり、その6か月後の222月より北京五輪が始まった。

 わずかその6か月の間に、国内では東京ヤクルトスワローズが日本シリーズで優勝し、川崎フロンターレがJリーグを連覇し、冬のスポーツに目を転じるとアイスホッケーでもひがし北海道クレインズが全日本選手権を連覇、年末年始にかけては全国高等学校バスケットボール選手権大会(通称ウインターカップ)や全国高等学校ラグビーフットボール大会(通称花園)が開催され高校年代の日本一が決まり、北京五輪閉会式7日後の227日には皇后杯決勝で日本女子サッカークラブの頂点が決まった。

 どの大会やイベントでもスポーツが持つ「価値」が全面にアピールされ、その正統性が強調される。

 そしてそのアピールされる「価値」は時と場合によって、余暇や楽しみの提供、健康増進、健康寿命の延伸といったことから、地域貢献、福利厚生、CSRSDGs、さらには一体感の醸成や国威発揚、国際交流や平和と友好の証、経済的側面から見た広告宣伝効果やスポーツ産業の推進発展等々と、多種多様な顔を見せる。

 それが故に、スポーツは社会から「特別な地位」が認められ、多額の税金や補助金が投入され、個人肖像が集団肖像利用という形で商業利用され、スポーツ特待生という名目で学業よりもスポーツ活動が優先されることも見受けられ、選手が自由に所属チームを選ぶことに制約がかかり、選手がチーム間を移籍するとその移籍に対して移籍金という名目の“人身売買”とも取られかねないお金が飛び交う。

 プロリーグという興行(商業)行為が公益とみなされ、国内競技統括団体は登録料という名目で競技を行う選手や指導者全員から毎年毎年お金を徴取する独占的な権益を持ち、国際競技統括団体は1か国に2つ以上のプロリーグが存在すると制裁をかけるようなことが、広く社会的に許容(黙認)されている。

 では、この「特別な地位」はいつまで許容(黙認)され続けるのだろうか?またその価値は今後さらに拡大していくのだろうか?

 見る角度を変えると、例えば音楽もスポーツと同様に価値を持つものだが、だからと言って例えば若いスポーツ選手が「将来は世界一、日本一のスポーツ選手になりたい」と願い目指せば、その練習活動や試合遠征等に対して支援を受けることが少なからずあり得る一方で、ロック歌手を目指す若者が「将来世界一のロック歌手になりたい」と言ったときに得られるであろう支援と比較すると、格段にスポーツのほうが恩恵を得やすい環境ではないだろうか。

 アイドルグループがコンサートをするために「アイドルグループ専用アリーナが必要だ。それがアイドルグループから求められているし、アイドルグループを存続させるための基準である」からといって、その「アイドルグループ基準」の専用施設が公的資金で建設されたという話はあまり聞いたことが無いが、スポーツ興行をするために「興行アリーナが必要だ。それがリーグ基準として定められている」と言えば、その「興行基準」を大前提とした多額の税金が投入された専用施設が建設されることはよく聞く話である。

 俳優を目指して一心不乱に取り組んだ結果、数年間は活躍できた俳優がその後は“鳴かず飛ばず”となったときに「俳優セカンドキャリア」を支援してくれる組織団体はあまり見ないが、数年間プロスポーツ選手を経験した選手に対する「アスリートセカンドキャリア」支援はそれと比してかなり充実している。

 社会が成熟し、ライフスタイルが多様化し、エンタテイメントの種類が増え、世界がボーダレス化していく中、このスポーツだけが持つ現在の「特別な地位」がいつまで社会から許容されていくのだろうか。

 現代のスポーツに関わる我々は、これまでの長い歴史の中で積み上げられてきたスポーツが持つ「特別な地位」が極めて“特別”であることを改めて捉えなおし、これまで先人たちが社会の中で積み上げ続けてきたその“現在の”「特別な地位」から得られる恩恵を、ただ使い尽くすだけでなく、その社会的な価値をより一層高め、次世代に向けて紡ぎ高めていく責務を負っているのではないだろうか。

 スポーツが持つ価値の“持続性ある成長と発展”を実現し続けるために、現在のスポーツ関係者はどうあるべきか、改めて考えたい。

  • 中村 考昭 中村 考昭    Takaaki Nakamura クロススポーツマーケティング株式会社 代表取締役社長/ゼビオスポーツ総研 エグゼクティブフェロー
    笹川スポーツ財団 理事
    リクルート、A.T. カーニー、スポーツマーケティング会社を経て、2010年5月ゼビオ入社。2011年4月クロススポーツマーケティング株式会社代表取締役社長、2015年10月ゼビオホールディングス株式会社副社長執行役員。Jリーグ東京ヴェルディ代表取締役社長、アジアリーグアイスホッケー東北フリーブレイズ代表取締役オーナー代行、3x3プロバスケリーグ3x3.EXE PREMIERコミッショナーも務める