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「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。

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日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。

米国都市圏の健康・フィットネス・ランキング「ACSM American Fitness Index®」

2015.12.01

2008年5月、アメリカスポーツ医学会(American College of Sports Medicine、以降、ACSM)は、Anthem Foundationの支援のもと、ACSM American Fitness Index®(以下、AFI)を立ち上げ、それ以降、米国内の50の大都市圏における健康・フィットネスに関するデータ及びランキングを毎年発表している。ここでは、その内容と仕組み、特徴などを紹介する。

最新結果(2015年)

まずは実際に、どのようなランキング結果が出ているのか最新(2015年)のデータを見てみると、表1のとおりとなっている。

表1.2015年AFIランキング(抜粋)

順位 都市圏
1 ワシントンDC
2 ミネアポリス
3 サンディエゴ
4 サンフランシスコ
5 サクラメント
6 デンバー
7 ポートランド
8 シアトル
9 ボストン
10 サンノゼ
48 オクラホマ・シティー
49 メンフィス
50 インディアナポリス

ウェブサイトでは、地図上にランキングが表示されており、西海岸で順位が高く、南東部で低いという傾向が確認できる。これは、南東部で有病率が高い肥満や糖尿病の分布(参考:米国疾病予防管理センター)とよく似ている。

内容と仕組み

AFIは、米国の最も人口の集中する50都市圏(Metropolitan Statistical Areas: MSAs)を評価の対象としている。これは、中心都市と通勤・通学等でつながりの強い周辺の自治体・郡を含む圏域であり、他の類似したランキングであるCounty Health Rankings(郡レベル)(参考:ロバート・ウッド・ジョンソン財団)やAmerica's Health Rankings(州レベル)(参考:ユナイテッド・ヘルス財団)などとは異なる。また、AFIで評価している項目は表2のとおり、身体活動に関連する地域・環境指標が豊富に組み込まれている点が特徴である。

表2.ACSM American Fitness Index®の評価項目

分類 項目例
個人レベルの健康指標(Personal Health Indicators)
健康行動
  • 国のガイドラインである週に150分以上の有酸素身体活動を
    実施している人の割合
  • 喫煙者の割合
慢性的な健康状態
  • 肥満者の割合
  • 主観的健康感の高い人の割合
地域・環境指標(Community/Environmental Indicators)
構築環境(Built Environment)
  • WalkScore®(歩きやすさの指標)
  • 公共交通を利用して通勤する人の割合
レクリエーション施設
  • 人口1万人当たり公園の数
  • 人口1万人当たりテニス・コートの数
学校体育に関する政策
  • 州の学校体育の必要時間規定
公園・運動施設関連支出
  • 人口当たり公園・運動施設関連支出額

報告書では、ランキングだけでなく、これら各項目のデータが都市圏ごとに分かりやすくまとめられており、印刷すればA4で両面刷り1枚の、各都市圏の成績表のようなものが出来上がる。各州・郡・自治体の関係者や住民、専門家に、自分たちの住む地域を改善していくための基礎資料としてこのデータを活用してもらうことがAFIの狙いである。毎年、ACSMの年次総会(学会)前の時期に発表され、メディアを通したPR、市長や健康関連部署等を対象としたマーケティング活動も行われている。

トップになったワシントンDCと最下位のインディアナポリスの各項目を比べてみると、たとえば、ワシントンDCでは「歩いて10分以内に公園がある住民の割合」が95%なのに対して、インディアナポリスでは31%である。その他、学校体育に関する規定の充実や公園・運動施設関連支出なども含めて、多くの項目でワシントンDCがインディアナポリスを上回っている。ちなみにこのランキングを発行しているACSMの本部がある都市こそ、インディアナポリスである。

活用法

2008年の発表以来、ACSM本部のあるインディアナポリスが下位グループに常連として登場していたこともあってか、ACSMではランキングを発表するだけでなく、2011年から健康な都市づくりに向けた技術支援(Technical Assistance Program)を試行的に開始した。2011年から2012年は、インディアナポリスとオクラホマ・シティーが、2013年から2014年には、シンシナティとラスベガス、マイアミが支援を受けている。

AFIの諮問委員会で委員長を務めるWalter Thompson博士(Georgia State University)によると、AFIの技術支援チームでは、下記の流れで支援を行っている。

鍵となる関係者へのインタビュー、当該地域のメンバーを含めた会議、政策・システム・環境計画の立案、当該地域メンバー(行政、活動団体等)による計画の進捗確認の支援

とくに、発行開始から一貫して最下位にあったオクラホマ・シティーは、ACSMのサポートや他の取り組みもあってか、2014年にようやく最下位から脱出した。市長のMick Cornett氏は、TEDの講演会でも「肥満都市の100万ポンド減量法」として、市を挙げた取り組みを紹介している。

その他、AFIのウェブサイトでは、各地で取り組む際に参考となるCommunity Action Guideがダウンロード出来るほか、ランキングに掲載されていない地域向けにMy AFIという地域評価ツールを提供している。これらは、行政担当者が直接活用するだけでなく、住民や活動団体が行政に対して情報提供するためのツールとしても活用されている。

以上、ACSMによるAFIとそれを活用した取り組みを紹介してきた。日本においても、たとえばスポーツに関連する内容で、こうした地域評価支援のツールやランキングが作成されれば、各地域で幅広い観点に基づいてスポーツ振興の計画・実施・評価を進める参考になると思われる。

※本稿は、日本学術振興会海外特別研究員制度による研究の一環としてまとめたものである。

レポート執筆者

鎌田 真光  (2014年9月~2018年3月)

鎌田 真光  (2014年9月~2018年3月)

海外特別研究員
Research Fellow
Harvard T.H. Chan School of Public Health
Overseas Research Fellow, Sasakawa Sports Foundation (Sept. 2014~Mar. 2018)