2017.03.01
- 調査・研究
© 2020 SASAKAWA SPORTS FOUNDATION
© 2020 SASAKAWA SPORTS FOUNDATION
スポーツ政策研究所を組織し、Mission&Visionの達成に向けさまざまな研究調査活動を行います。客観的な分析・研究に基づく実現性のある政策提言につなげています。
自治体・スポーツ組織・企業・教育機関等と連携し、スポーツ推進計画の策定やスポーツ振興、地域課題の解決につながる取り組みを共同で実践しています。
「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。
日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。
2017.03.01
image (Göttingen,Niedersachsen)
Mörfelden-Walldorf(メアフェルデン‐ヴァルドルフ)は、フランクフルトから16kmほど南に位置する人口約35,000の市である。フランクフルト空港からも10kmほどで、市民の多くはフランクフルト市内や空港で働いている。メアフェルデンとヴァルドルフの2つの自治体が合併して40年になるが、2つの町は2kmほど離れているので、別の町という感じはいまだにある。
市内には、スポーツなどの余暇活動を提供するスポーツクラブ、様々な趣味を同じくする人たちの団体、福祉団体、政治団体等多くのグループがある。豊かな市民生活には不可欠な要素である。
市は補助金の規定を設け、これらの団体の活動を支援している。補助を受ける条件としては、国や州などの統轄団体に登録していること、公益団体としての認定を受けていることである。このような市民の活動への支援は自治体の義務ではなく、支援の方法も市によって異なる。市の資料によると、メアフェルデン‐ヴァルドルフにはこうした市民団体が128ある。そのうちスポーツ関係団体は18である。また、市が補助金を支給している団体は40団体で、そのうち11団体がスポーツ関係である。
補助金の内容:
大型フィールド(芝) | 610ユーロ |
大型フィールド(人工芝) | 600ユーロ |
小型フィールド | 410ユーロ |
円形ランニングコース(4×400m タータン) | 400ユーロ |
円形ランニングコース(1×400m ) | 200ユーロ |
短距離ランニングコース(100m) | 150ユーロ |
テニスコート(アンツーカー) | 255ユーロ |
テニスコート(タータン) | 200ユーロ |
テニスコート(アスファルト) | 125ユーロ |
ペタンクコート | 130ユーロ |
ビーチコート(最小8×16m) | 4100ユーロ |
射撃場(1スタンドにつき) | 25.5ユーロ |
特別スポーツ施設(1施設につき) (例:クライミングフェンス) |
100ユーロ |
メアフェルデン‐ヴァルドルフ両地区にはそれぞれ大型スポーツクラブがある。この両クラブが、上記の市のスポーツ振興資金として2016年に受け取る補助金額は以下の通りである。
TGS1896ヴァルドルフ (会員数4,331人)116,277.11 ユーロ
SKV1879メアフェルデン(会員数4,251人) 83,130.11 ユーロ
市内クラブへの2016年の補助金合計は308,464.41ユーロになる。市はこれを直接補助金と呼ぶ。
市の5つのスポーツ施設、2つの市民ホールをスポーツクラブは無料でトレーニングや競技会に使うことができる。これらの施設管理運営維持費が790,000ユーロであり、長期にわたるクラブ独自の施設の整備、新築への補助金、器具購入など、直接補助金に含まれない、いわゆる間接補助金は合計で898,500ユーロとなる。これらにはスポーツクラブ以外の団体への補助金も含まれているので、スポーツクラブへの補助金で見てみると、合計1,100,000ユーロほどとなるが、その額は市の予算規模の約1.5%にあたる。
市の5つのスポーツ施設のうち2つの体育館は古く、取り壊して立て直しが必要となった。この事業を市は単独で行わず、施設を主に使っている2つのクラブ、TGS1896ヴァルドルフとSKV1879メアフェルデンがそれぞれ建設を引き受ける。この事業には、市と州から建設費への補助金が出るが、残りは各クラブが銀行のローンでまかなう。このようにして建設された施設は、クラブ独自の施設となる予定である。
ドイツには「助成の原則又は補完性の原則(Subsidiaritätsprinzip)」というものがあり、行政、社会、福祉などの分野において、できるだけ現場での実践やイニシアティブを尊重する。個人、家庭、諸団体が実施を引き受ける場合、行政は自主事業はせず、その代わり補助をする。現場での活動が十分でない場合に初めて、行政は自主事業を行うのである。欧州連合(European Union=EU)にもこの原則が適用されており、EU加盟各国で出来ることはEUは行わないのである。
市民のスポーツ活動・スポーツプログラムは市民団体である地域のスポーツクラブに任されている。だからクラブは社会の重要な要素になり、責任を意識し、頑張るのではないだろうか。しかしながら、現在市民のボランティア活動への意欲は衰退傾向であり、将来への不安はある。
Mörfelden-Walldorfによるクラブ助成資料及び2016年11月17日ヒアリング
レポート執筆者
高橋 範子
Special Advisor, Sasakawa Sports Foundation