2015.12.02
- 調査・研究
© 2020 SASAKAWA SPORTS FOUNDATION
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スポーツ政策研究所を組織し、Mission&Visionの達成に向けさまざまな研究調査活動を行います。客観的な分析・研究に基づく実現性のある政策提言につなげています。
自治体・スポーツ組織・企業・教育機関等と連携し、スポーツ推進計画の策定やスポーツ振興、地域課題の解決につながる取り組みを共同で実践しています。
「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。
日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。
2015.12.02
2015年11月29日。雨が降ったり、風が吹いたりの日曜日、2024年ハンブルク・オリンピック・パラリンピック大会の招致の是非を問う住民投票が行われた。
ドイツオリンピックスポーツ連盟(DOSB)会長のアルフォンス・ヘアマンが「ハンブルク市民多数の支援なしの招致は成功しない」と言うように、住民投票は招致の大前提であった。
16歳以上のハンブルク市民130万人と、キール市民19万8千人が投票を行った。投票率はハンブルクが50%、キールが31.7%であった。結果は賛成票が48.3%(キールでは65.6%)、反対票が51.7%。反対が賛成を上回り、招致活動は取りやめとなった。
一夜明け、関係者が結果についてコメントした。
オラーフ・ショルツ ハンブルク第一市長:
ハンブルクはオリンピック・パラリンピック招致に立候補はしない。私は違った結果を望んでいたが、結果を受け入れる。
アルフォンス・ヘアマンDOSB会長:
この結果はもちろんドイツのスポーツ界にとって失望を意味する。しかしこれは民主的な決定であり、なんとしても受け入れなければならない。ドイツのスポーツの発展を、地元でのオリンピック・パラリンピック開催という追い風を背に展開していくことはできなくなった。競技スポーツの改革や生涯スポーツの発展は、向かい風を受けながら進めていかねばならないが、しっかりとやっていく。DOSBはその社会的課題ともいえるチャレンジに取り組み続けるだけではなく、目的を定め確実に展開していく。
ミヒャエル・フェスパーDOSB専務理事長:
われわれは民主化された社会に生きている。そこでの決定は受け入れるしかない。しかしこの「ナイン(Nein:ドイツ語のNo)」の要因分析は必要だ。今後しばらく、ドイツでのオリンピック・パラリンピック招致はないと言われるであろう。しかしこれには再考の余地はある。言い訳はしたくないが、ドイツサッカー連盟のスキャンダル、FIFAの危機、陸上競技のドーピング問題、難民、テロなどの問題が、今回の結果に影響したかもしれない。いずれにせよ、結果は受け入れるしかない。
ヴォルフガング・メーニッヒ ソウルオリンピック・ボート競技金メダリスト、財政専門家:
パリのテロ事件が招致に悪影響したことは確かだ。人々は大きな集会を恐れている。また、国際的なスポーツ団体の腐敗やドーピングも逆宣伝だっただろう。しかし中心的な問題は、資金面であったと思う。オリンピック大会のためハンブルクが投資することになっていた12億ユーロについて、「もっと意味のある使い道があるのではないか」との質問へのより良い答えが必要だった。
ドイツへの五輪招致の足取りを振り返ると、1972年ミュンヘンで夏季大会を実施後、2000年の大会招致の際にはベルリンがシドニーに負けている。2018年冬季大会招致も平昌(韓国)に負け、2022年冬季大会のミュンヘンへの招致もやはり住民投票で挫折した。
DOSBは1年前の総会でドイツへのオリンピック招致をスポーツ界として推進することを決めると、今年3月の臨時総会で手を挙げたベルリンとハンブルクの2都市から、ハンブルクを招致都市に決めた。その後、総力をあげて招致活動に取り組んできた。
12月5日に行われるDOSB総会では、ハンブルクでの住民投票の結果分析や、オリンピックという追い風なしでのスポーツ振興の計画について議論が行われるだろう。
レポート執筆者
高橋 範子
Special Advisor, Sasakawa Sports Foundation