2015.02.23
- 調査・研究
© 2020 SASAKAWA SPORTS FOUNDATION
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スポーツ政策研究所を組織し、Mission&Visionの達成に向けさまざまな研究調査活動を行います。客観的な分析・研究に基づく実現性のある政策提言につなげています。
自治体・スポーツ組織・企業・教育機関等と連携し、スポーツ推進計画の策定やスポーツ振興、地域課題の解決につながる取り組みを共同で実践しています。
「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。
日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。
2015.02.23
今ヨーロッパは多くの挑戦と困難、戸惑いに直面している。
毎日流れ込んでくる避難民。100万人に達したとも発表された。メルケル首相は対応できるという姿勢を崩していないが、数の多さに心配する人たちも増えてきている。ガウク連邦大統領もクリスマスの談話で多くの市民が避難民の受け入れにボランティアとして活躍してくれたことに感謝した。そして暴力と憎しみではなく、話し合いで解決策を見つけていくよう提案した。
ドイツオリンピックスポーツ連盟(DOSB)のプレスリリース「DOSBプレッセ」2015年49号(12月1日発行)には、ベルリン州スポーツ連盟が総会で市当局に対してこれ以上体育館を避難民の宿舎にあてることを控えてもらいたい旨の決議をしたと、報じられている。トレーニングや試合ができず、クラブの運営がむずかしくなるという現実的影響がでてきているからだ。さらに「DOSBプレッセ」2016年1/2号(1月12日発行)によると、ベルリン州スポーツ連盟はオンライン陳情を立ち上げた。体育館を避難民の宿舎として使うことは一時的措置であるべきだという趣旨で、これに賛同する市民がネットで氏名、メールアドレス、加盟クラブ名、自分の意見を記入できるようになっている。1月7日から始まった陳情には最初の日に4,000人が記入した。2月15日現在、記入者は8,263人である。
ベルリン州スポーツ連盟のホームページに寄せられた、その市民たちの意見を紹介しよう。
例えば:「子どもたちにはスポーツが必要である。そのために体育館が必要なことも当たり前である。子どもたちが現在の政治の受難者になることは許しがたい。子どもたちは私たちの未来である。体育館を従来の目的のために使えるようにしてほしい」
少し揺らいで来たとはいえ、「歓迎文化」は消えてはいない。その理由のひとつには、70年前、第2次世界大戦が終わった時、沢山のドイツ人・ドイツ系の人たちが東方から避難または引き揚げてきたことがあげられる。当時、ドイツはひどく荒廃した状況だったにもかかわらず、そこで迎えられ新しい生活を始めた記憶の残っている市民がいまだに数多く存在しているのだ。また25年前、ベルリンの壁が崩壊する直前には、ハンガリー、オーストリア経由で東ドイツから西ドイツへ逃亡してきた人たちも多数いたのである。
あまりの数に戸惑っているとはいえ、スポーツはやってきた人たちのドイツ社会へのインテグレーションの手助けとなるはずである。アルフォンス・ヘアマンDOSB会長は、「スポーツこそが文化的違いを超えて人々を結びつけ、社会の結束を強める。DOSBには社会的責任がある。私たちはスポーツの持つインテグレーション(統合、融合)の力を使う。DOSBはスポーツによるスポーツでの避難民たちのインテグレーションを課題としていく」と述べている。
スポーツ界における最近の避難民への活動を紹介してみる。
スポーツも政治を素通りできない。人と人とを結びつけるというスポーツのもつ効力を最大限に発揮して、勝利文化だけでなく、歓迎文化の一翼を担い、社会的貢献を果たすべきである。
レポート執筆者
高橋 範子
Special Advisor, Sasakawa Sports Foundation