昨秋に公表した中央競技団体の資産と負債の状況および収支の状況に加え、4分野21指標を用いて財務分析を試みた。採用した指標には、民間企業の財務分析に使用するものもあり、全ての指標が公益法人の財務分析に適しているとは言えないが、公益法人における財務の短期流動性からみる健全性や、将来的な収益構造の変化を見据えた収益獲得能力など、チャレンジングな指標も含めて選定した。
一方、本研究では現状の財務諸表の形式を要因とする分析上の限界も感じている。たとえば団体によっては詳細の記載がなく経常収益・費用ともに合計額のみに記載が留まったり、経常収益における勘定科目の認識の違いから、ある団体では寄付金として計上してある収益が、別の団体では事業収益として計上されていたりするなど、財務諸表での取り扱いの不統一さがあった。この点は、中央競技団体の詳細な財務分析を進める上では弊害となりうるため、統括団体などが中心となりその解決策の協議が進められることが望まれる。
「スポーツ団体ガバナンスコード」では、中央競技団体の経営基盤強化の重要性が指摘され、その取り組みのひとつとして財務計画を策定し、資金源の確保、支出財源の特定、予算の執行など適切な処理の実施を求めている。また6月に閣議決定された成長戦略では、中央競技団体の財務基盤の確保を含む経営計画を促すための新たな支援の在り方を検討すると記された。これらはいずれも財務指標を用いた分析および評価が必要となる。本研究での財務指標がひとつでも参考になり、中央競技団体を統一的な財務指標で分析できる環境が整うことを願いたい。
笹川スポーツ財団 スポーツ政策研究所 政策ディレクター 吉田 智彦