第16回ASFAAコングレス2022が、10月19日から22日にかけて韓国のプサンで開催され、25の国と地域から約250人が参加しました。
本来は2020年に開催される予定であった今回のコングレスは、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行によって複数回の延期が発表されておりました。2018年中国香港大会以来の開催となった今回のコングレスでは、「アジアにおけるより良い社会づくりに向けたスポーツ・フォー・オールのアクション(Sport for All in Action for a Better World in Asia)」のメインテーマのもと、主にアジア各国からスポーツ・フォー・オールおよび身体活動の推進団体関係者や研究者が集い、講演やディスカッション、事例発表等を行いました。
1)Dr. Wan-shik Hong(ASFAAコングレス組織委員会会長(韓国))による開会挨拶
Dr. Wan-shik Hong ASFAAコングレス組織委員会会長の開会挨拶
本コングレスの組織委員会会長であるWan-shik Hong氏(TAFISA理事)より、世界的な新型コロナウイルス感染症の感染拡大が続く中で、このイベントを対面で開催できるようにサポートしてくれた関係者および参加者への謝辞が述べられました。
Hong氏は、ASFAAが昨年で創設30周年を迎えたことを祝いつつ「地球が直面する気候変動という危機と新型コロナウイルスによるパンデミックという新たな変化に対応し、人々の健康的な生活に向けた『ネットゼロ(温室効果ガス排出を正味ゼロにする取組)』のあり方と『スポーツ・フォー・オールの活性化』、およびその融合に関して活発な議論が展開されることを願う」と力強く話して開会挨拶を締めくくりました。
2)基調講演
最初の基調講演(収録ビデオでのメッセージ)ではTAFISA会長であるWolfgang Bauman氏より、TAFISAのビジョンやミッションなどTAFISAに関する簡単な紹介が行われました。同氏はその後、気候変動をはじめとするグローバルな課題の解決に向けて策定された戦略指針「TAFISA Mission 2030」が100以上の国々において活用されていることを紹介し、スポーツ・フォー・オールが世の中に及ぼす正の影響について強調して基調講演を終えました。
Jun-ho Ryu氏の基調講演
次の講演では韓国の環境部政策アドバイザリー委員(Policy Advisor of the Minister of Environment, Republic of Korea)であるJun-ho Ryu氏より、2030年までに炭素排出量を現在の40%まで減らすことを目標として韓国政府が取り組んでいる「ネットゼロ」の施策事例が紹介されました。最も効果的な施策として紹介されたのは、2016年から韓国政府が実施している、各家庭や施設にコンサルタントを派遣し、エネルギーの使い方についてアドバイスを提供するサービスでした。また、このような「ネットゼロ」の取組は環境改善に効果的であることはもちろん、韓国の経済成長にも繋がると述べていました。
基調講演1
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題名
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Stronger Together: The Power of the Global Sport for All Movement
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氏名
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Wolfgang Baumann
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役職
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TAFISA会長(ドイツ)
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基調講演2
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題名
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Korea’s Climate Change Response and Carbon Neutrality Practice
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氏名
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Dr. Jun-ho Ryu
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役職
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韓国環境部政策アドバイザリー委員(韓国)
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3)プレナリーセッション
全参加者が集まったプレナリーセッションでは、「Sport for All in Action for a Better World and Action for Net-Zero」をテーマに3つのスピーチが行われました。最初のスピーチは韓国体育大学のMi-ok Kim教授より行われ、炭素排出量削減に向けた韓国政府の政策的取り組みが紹介されました。二つ目のスピーチでは、「ネットゼロ」に向けて「ウォーキング」を増やすことのメリットについてTAFISA理事でもあるWan-shik Hong氏よりプレゼンテーションが行われました。最後のスピーチはTAFISA特別アドバイザーを務めるデンマークのFinn Berggren氏より行われ、自転車大国であるデンマークにおける自転車利用の実態が紹介され、自転車利用増加が炭素排出量削減に大きな役割を果たしていることが語られました。その後、上記のスピーカー3名に下記の専門家3名が加わり、Zubaidullo Ubaidulloev氏(タジキスタン)の進行によるパネルディスカッションが行われました。
- Herzel Hagay(イスラエル、TAFISA理事、ASFAA事務局長)
- Min-soo Kim(韓国、ASFAA理事)
- Dae-hee Kim(韓国、Bukyeong大学教授)
スピーチ1
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題名
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Sports Activity and Environment (Carbon Neutrality Contribution of Sports Facilities)
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氏名
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Prof. Mi-ok Kim
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役職
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韓国体育大学(韓国)
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スピーチ2
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題名
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Net-zero Walking Initiative
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氏名
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Dr. Wan-shik Hong
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役職
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ASFAAコングレス組織委員会会長、TAFISA理事(韓国)
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スピーチ3
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題名
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Net-zero Cycling in Europe
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氏名
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Dr. Finn Berggren
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役職
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元 Gerlev Sports Academy 代表(デンマーク)
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パネル ディスカッション
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題名
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Sport for All in Action for a Better World and Action for Net-Zero
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司会者
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Dr. Zubaidullo Ubaidulloev(タジキスタン)
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パネル人数
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6名
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Mi-ok Kim氏のスピーチ
Wan-shik Hong氏のスピーチ
Finn Berggren氏のスピーチ
パネルディスカッション
Dr. Ju-ho Chang TAFISA名誉会長とASFAA理事
4)玉澤常務理事のプレゼンテーション
玉澤正徳SSF常務理事(TAFISA理事)より、アクティブシティに関する日本の事例紹介が行われました。コングレス3日目に行われたプレナリーセッションのテーマである「Active Cities in Post-Pandemic Asia(Case Presentations of Asian Cities)」に合わせて、日本の社会課題の解決に向けてSSFが提唱している「地域スポーツ運営組織(RSMO)」のコンセプトと宮城県角田市での導入実践例を紹介しました。
玉澤正徳SSF常務理事(TAFISA理事)のプレゼンテーション
■ASFAA(Asia Sport for All Association)
1991年ソウル(韓国)でTAFISAの地域団体として設立されたアジア・オセアニア地域のスポーツ・フォー・オール推進組識です。2000年3月まで笹川スポーツ財団が事務局を務めました。現在はマカオが事務局を務めています。2017年、ソウルでのTAFISA総会において、TAFISAのオセアニア地域の推進組織がASFAAから独立することとなり、Asiania Sport for All AssociationからAsia Sport for All Associationに名称が変わりました。総会、コングレスの開催のほか、生涯スポーツ情報の収集及び提供を目的とし、アジア地域におけるネットワークの要としての役割を担っています。
■TAFISA(The Association For International Sport for All)
スポーツ・フォー・オール(生涯スポーツ、みんなのスポーツ)と身体活動の振興を通して、人々の生きる楽しみ、健康増進はもとより、社会統合や地域開発などの推進を目指すスポーツ・フォー・オール活動の国際統括機関(本部:ドイツのフランクフルト)です。世界170か国・地域に300を越える加盟団体があり、SSFは、1992年に設立されたTAFISA-JAPANへの参画を通じて加盟してまいりました。(2022年のTAFISA総会においてSSF単独での加盟も認められました)
■TAFISA Mission 2030
2017年にソウルで開催されたTAFISA総会において、TAFISA加盟団体の行動指針を示すTAFISA Mission 2030が採択されました。2030年までの行動指針として、「Sport for Allを通じて次世代に、より良い世界を継承する」を掲げ、12の目標を設定して取り組んでいます。