私はプロ野球選手を引退したあと、オーストラリアで1年弱にわたって日本語の教師をしました。野球とは決別してまったく違う人生を歩むつもりでしたが、現地のスポーツクラブを中心にしたスポーツ環境が、私に新しいスポーツの魅力を教えてくれました。
私が勤めた学校でこんなことがありました。私をプロ野球の選手だと知った子どもたちが職員室に押しかけてきて「ミスターアオシマ、野球を教えろ」と言ってきました。仕方がなく野球を教えました。そして半年くらいたって私が学校を出ることになったとき、先生チームと試合をすることになりました。
町で初めての野球の試合です。我々のチームは15人。全校生徒800人が見守る中、上手な子を9人選んで、あとの6人は「申し訳ない、君たちはあとで出すから」と伝えて、さあいくぞと送り出しました。そうしたら元プロ野球選手が半年教えたにもかかわらず、全員守備についちゃった(笑)。待てと。野球は9人でやるもんだから戻ってこいと言いました。でも全然戻ってこないんです。やる気満々ですよ。最初はイライラしました。でも見ているうちに、ちょっと待てよ、これもアリだなと。ここは日本の高校野球の予選じゃない。そう思って守りから帰ってきた連中に15番まで打順をつけました。今日は打って打って打ちまくるぞ! それいけーと言ったら、先生チームは25人も守ってたんです(笑)。結局15人対25人で最後まで試合をすることになりました。