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「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。

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日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。

パラスポーツ専用体育館「日本財団パラアリーナ」見学レポート

2018年6月1日にオープンしたパラスポーツ専用体育館「日本財団パラアリーナ」。パラスポーツ競技団体のトレーニング施設が不足する中、パラアスリートの練習環境整備を目的にお台場エリアの「船の科学館」に建設された。

※当財団では“Sports for Everyone”社会の実現を目指し、国民一人ひとりのスポーツライフを豊かにするために様々な研究や提言を行っている。パラスポーツ、障害者スポーツに関する研究も行っており今回の日本財団パラアリーナ見学にいたった。

パラスポーツ専用体育館「日本財団パラアリーナ」

写真提供:日本財団パラリンピックサポートセンター

2020年東京パラリンピック開幕まで約2年となったが、パラスポーツの大きな課題として"練習場所の不足"があげられる。特に体育館で行う車いす競技、車いすバスケットボールやウィルチェアラグビーなどは、床を傷つけてしまうなどの理由による利用の制限やバリアフリーの問題で、日常的な練習場所の確保が困難な状況となっている。また、昨今パラスポーツの普及啓発イベントの需要が増えているのに対し、そのような活動を実施できる体育館も不足している。

日本財団パラアリーナはそんな問題を解決し、2020年東京パラリンピックの強化拠点として、選手の心強い味方となるはずだ。

日本財団パラアリーナ・体育館

日本財団パラアリーナ・体育館

メインの体育館内は、選手のことを十分に考えたつくりで、ストレスなく思う存分練習に集中できる環境となっている。コートは2,035㎡と広く、車いすバスケットボール、ウィルチェアーラグビー、ボッチャ、ブラインドサッカーなど各種パラスポーツ用のコートラインがあり、すぐに競技を始めることができる。注目すべきは、コート表面の仕様。車いす競技は激しい動きが多く床へのダメージが大きい。そのため、コートは特殊なワックスを用いたコーティングを施し、床の損傷を防いでいる。

施設内は細部に選手のことを考えたつくり

施設内は細部に選手のことを考えたつくり

また、空調設備が8つあるのは、自身で体温調節ができない選手への配慮で、身体への影響を考え常に一定の温度を保っている。

通常「Aコート、Bコート」などとアルファベット順に付けられることが多いコート名称だが、パラアリーナでは「Gコート、Oコート、Lコート、Dコート」と呼ぶ。これは文字通り"GOLD=金"。2020年東京パラリンピックで、選手に金メダルを獲得してほしい、金メダルを目指して練習してほしい、という願いが込められている。それが、選手のモチベーションアップに繋がればという狙いもある。

施設内はユニバーサルデザインを採用。すべて段差のないフラットなつくりで、通路の壁面と床面の色の切り分け、コートラインを模したデザインにより空間認知をサポートしている。壁面は白色(体育館内の壁面は黒色)、床は黒色となっている。コートラインを模したデザインは、ラインがあることで衝突への一定の抑止力にもなるという。扉は幅の広いスライド扉で、競技用車いすでもスムーズな出入り、移動が可能となっている。

練習後、選手が一息つくロッカールームとシャワールームは、快適かつ安全な空間を実現。車いすでもスムーズに着替えなどができるように、ロッカーの下に車いすがそのまま入れる大きなスペースがある。シャワーバーや手すりは、半身まひなどの選手が使用しやすい方を選択できるように、左右両方に配置している。

他に、トレーニングルームには、車いすのままでも利用可能なマシンを導入。国際パラリンピック委員会(IPC)公認のベンチプレスも4台常設している。

選手がストレスなくスムーズに利用できるよう工夫されたロッカー、シャワー、トレーニングルーム

選手がストレスなくスムーズに利用できるよう工夫されたシャワー、ロッカー、トレーニングルーム

エントランスは、右手に香取慎吾さんが「i enjoy!」をテーマに描いた、日本財団パラリンピックサポートセンターの壁画(縦2.6m×横6.1m)を、レゴブロック約15万ピースを使用し同サイズで再現。「i enjoy!」「楽しむ人は強い!」というパワフルなメッセージとともに、選手にエールを送る。

香取慎吾さんが描いた壁画をレゴブロックで再現

香取慎吾さんが描いた壁画をレゴブロックで再現

アスリートファーストで画期的な「日本財団パラアリーナ」。2020年東京パラリンピックに向けパラアスリートの練習環境整備が目的だが、お台場エリアという土地柄、修学旅行などで訪れた小中学生を対象にパラスポーツの普及啓発イベントも実施する。

なお、日本財団パラアリーナの利用に関しては、パラリンピック競技団体が優先で、事前登録・予約制となっている。

笹川スポーツ財団 広報担当
清水健太

■施設概要

公式HP:日本財団パラアリーナHP https://www.parasapo.tokyo/paraarena/

所在地:〒135-0092 東京都品川区東八潮3-1

アクセス:ゆりかもめ「船の科学館駅」より徒歩すぐ/りんかい線「テレポート駅」より徒歩約12分 ※駐車場あり

開館時間:9:45~21:15(利用時間は10:00~21:00)

休館日:不定休

料金:無料

実施事業及び対象者:① パラリンピック競技団体/② パラリンピック競技団体所属のクラブチーム/③ パラリンピック競技団体所属の個人/④ 当センターが認めるパラスポーツの普及啓発に関する団体

障害児・者が日常的に運動スポーツを行える場所

パラスポーツ競技団体のトレーニング施設が不足する中、パラアスリートの練習環境整備を目的に建設された「日本財団パラアリーナ」。しかし、まだまだパラアスリート、そして障害児・者が日常的に運動スポーツを行える場所は、とても少ない。SSFの調査では、全国の障害者専用・優先スポーツ施設は150あることを公表している(2021年度)。施設数は、2010年:116、2012年:114、2015年:139、2018年:141と推移している。

▼詳細:https://www.ssf.or.jp/thinktank/disabled/2021_excerpt.html

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