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「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。

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日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。

部活動の地域移行、教育的意義はどうなるのか

SPORT POLICY INCUBATOR(17)

2022年6月15日
中小路 徹(朝日新聞 編集委員)

 公立中学校の部活動の地域移行がいよいよ、「待ったなし」になった。

 スポーツ庁が開いた有識者による「運動部活動の地域移行に関する検討会議」で、改革の提言が固まった。休日の部活指導を民間スポーツ団体などの学校外に委ねる地域移行を、2023~25年度の3年間に集中して進める。そんな期間も設定された。

 少子化で学校単位のチームが成り立ちにくくなっており、それなら地域でまとまって活動する方が、中学生にとってのスポーツの場を担保できる。部の顧問を務める教員にとっての労働環境の改善からも、地域展開はもう避けられない。

 中高生世代のスポーツを根っこから支えてきた部活動にとっては、歴史的な転換期がやってくる。

 これまでも外部の指導員は導入されてきた。しかし、それはあくまでも外から学校の中に補助役として入ってくるものだった。それが今回は、部活動が学校の外に出ていく構図となる。

 初めてのスポーツ政策だけに、問題は山積みどころではない。指導者の確保、大会運営の在り方、部活指導に熱を持つ教員の待遇、生徒の側の費用負担の解決、移行に伴う財源をどうするか……。

 そもそも地域に部活動を受け入れるスポーツ団体があるのか。仮に総合型地域スポーツクラブがあっても、中学生を指導できる水準を確保する基盤を持っているのか。そんなところからして、地域によって事情が異なる。都市部と過疎地という違いもある。

 だから国は、これまで先行して実践されてきた地域展開のモデルケースは示せても、「カタチ」の共通解を示す術がない。状況が落ち着くまでの過渡期は長くなると予想している。逆に言えば、各地域がそれぞれの実情に合ったカタチを、学校、教育委員会、教員、そしてスポーツ団体、競技団体、スポーツ関係者が手を携えてつくっていく創造力が試される、ということだと思う。

 この大きな動きの中、特に気になるのは、今後の部活動の位置づけだ。

 2017年に改訂された現行の中学校学習指導要領では、「生徒の自主的、自発的な参加により行われる」「学校教育の一環として、教育課程との関連が図られるよう留意する」と位置づけられる。

 この部活動に関する規定は、学校で部活動が行われることを前提としている。しかし、その部活動が休日は学校外の地域で行われ、いずれは平日の移行も進められる方向にある。そこで、検討会議の提言では、学習指導要領での位置づけについて、今後、地域でスポーツ活動や文化活動に参加していく生徒が増えていくことが見込まれる状況に、合致したものにする必要性を指摘している。

 そして、求められる対応の一つとして、部活動の意義や位置づけについての記述を削除することを挙げている。

 さて、そうなるなら、「生徒の自主的、自発的な参加」という、教育的な意味合いはどうなるのだろう。

 多くの部活動で、「自主的、自発的」からかけ離れている運営実態はある。大会成績で上を目指すことに執心する顧問や指導者の下、生徒の主体性が大事にされず、「あれをやれ、これをやれ」式に命じる強圧的な雰囲気が、これまでも今も満ちてきたことは確かだ。

 それでも、学習指導要領に生徒の自治的な活動を促すものとしての位置づけが記述されていることは、極めて重要だった。中学生が自分たちのスポーツ活動や文化活動の計画をどう立案するのか、そのために自分たちが何をしていくべきなのか。「自主的、自発的」という記述には、そうした自治、自律を学んでいく「教育の一環」の役割の場、という意味も含まれるといえるからだ。

 その記載が消えるなら、生徒がスポーツ活動を通じて自治、自律を学習する場は、移行先の地域のスポーツ団体ということになる。総合型地域スポーツクラブであれ、単一競技の民間のスポーツクラブであれ、部活動を受け入れていく側が、ただ競技を指導すればいいわけではなく、中学生たちの自治、自律をはぐくむことも担っていく存在だということを、学習していくことも必要になるだろう。

 部活動の地域移行は、昨年度からモデル校を各都道府県に置き、課題を洗い出す実践研究が始まっており、私も何カ所かを取材した。取材の中で、中学生に競技を指導できる機会が増えたことを喜ぶ一方で、教育的な意味合いを引き受ける自覚がまだ十分ではないな、と思ってしまう事例もあった。

 もともとそういう意識に薄いことが、総合型地域スポーツクラブが根付かない背景にあったのかもしれない。部活動が学校外に出ても、教育的な意味合いをどう継続できるか。そんな議論が大切だと思う。

  • 中小路徹 中小路  徹   Toru Nakakouji 朝日新聞 編集委員 1991年朝日新聞入社。名古屋本社、大阪本社、東京本社のスポーツ部で主にサッカーを担当し、2002年のW杯日韓大会時はソウル支局員。スポーツ部デスクを経て、2015年から、「スポーツと社会」を担当する現職。部活動改革、子どものスポーツ環境、暴力的指導の根絶、スポーツにおける事故防止など、競技を横断的にとらえた課題解決型の取材を続ける。