歴史と沿革
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空を自由に飛ぶこと。かつては夢でしかなかったことを、ハンググライディングは現実のものとし、誰でも簡単に空を飛ぶことを可能にしました。
ハンググライディングは、アメリカのグライダー愛好者が宇宙船回収カイトのアイデアに着眼し、人力滑空機を作って飛んだのが始まりといわれています。日本でも1976年から本格的に楽しまれるようになり、現在、国内で約2000人の愛好者がいます。そのうち約2割が女性です。
ハンググライディングは、アルミ合金の骨組(フレーム)にポリエステルの布(セール)を張ったシンプルな翼「ハンググライダー」で滑空するスポーツです。ハーネス(装具)を身に付け、うつぶせになり機体にぶら下がる形で飛行します。腕の力で体重を支えるわけではないので、特別な筋力は必要ありません。斜面を走る体力があれば、年齢性別を問わず飛ぶことができます。体重40kg以上で一定の体力と理解力があれば小学校高学年からフライトできます。年齢の上限はありません。70代の現役パイロットもおり、老若男女誰でも楽しめるスポーツといえます。
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ハンググライダーには国際航空連盟が定める5つのクラスがあり、国内では体重移動のみで操縦するクラス1の機体(ブーメランにも似た三角形の翼)と、固定翼タイプでラダー等の空気力学的操縦装置が付いているクラス5の機体が飛んでいます。また、エンジン付きハンググライダーで飛ぶ人も少数ながらいます。
飛ぶためには
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本来翼を持たない「ヒト」が、鳥のように自由に空を飛ぶには、まず第一に飛行練習を繰り返し、空中での経験を積むこと、また、気象条件など自然のメカニズムを理解することが必要です。空気の流れ、いわゆる風を読む力がつけば、鳥と一緒に飛ぶことも夢ではありません。
ハンググライディングを始める人は、まず自分の責任を明確にするため、日本ハング・パラグライディング連盟(JHF)にフライヤー(飛行者)登録を行います(登録すると自動的に第三者損害賠償保険に加入となります)。登録は強制ではありませんが、未登録者は飛べないフライトエリア(飛行場所)がほとんどです。
また、ハンググライディングには自動車のような国が定める免許証はありませんが、安全に飛行するために、JHFの技能証制度があります。JHFに会員登録をしたフライヤーは、練習生A級→練習生B級→練習生C級→パイロット証と、4段階の技能証を順に取得しながら、自分自身の判断で空を飛ぶ力を身に付けていきます。パイロット証を取得したら一人前、教員の同伴なしで飛ぶことができます(パイロット技能証の発行は16歳以上が対象)。さらにクロスカントリー飛行やタンデム飛行などの技能証を取れば、飛ぶ楽しみがますます広がっていきます。
全国のハンググライディングスクールでは、JHF技能証規定のカリキュラムにそった指導をしているので、ひとつずつ着実に空を飛ぶ技術と知識を身に付けることができます。
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ハンググライダーは、風に向かって離着陸します。風が吹き上げてくる山の斜面を走ってテイクオフ。飛行中はどちらから風が吹いていても、スピードを維持していれば問題ありません。簡単な操作でコントロールできるので、行きたい方向へ飛ぶことができます。気象条件がよい時は、練習生でも上昇気流に乗って高度を上げ、長時間飛行することができます。
競技指向のフライヤーも多く、国内でも日本選手権をはじめ大小の競技会が開かれています。世界選手権は2年に1度開催され、ここで世界チャンピオンが決定されます。海外の大会に出場するには、パイロット証を取ってからかなりの経験を積む必要があり、また世界選手権や大陸選手権など国際航空連盟の公認大会に出場する場合は(財)日本航空協会発行のスポーティングライセンスが必要です。
高レベルの競技会では「いかに短時間でゴールまで飛ぶか」を競います。海外大会ではゴールまでの距離が100kmを超えることも珍しくありません。選手は地形や気象条件から上昇気流発生の時間と場所を予測し、効率のよいコースやスピード配分を考えます。小さな気流変化も見逃さず、五感を研ぎ澄まし、頭をフル回転させてゴールをめざすのです。初級者から参加でき「楽しむ」ための大会では、滞空時間の長さや正確さ、着地の正確さ等を競うこともあります。
空にとけ込み、空を飛ぶ開放感と浮遊感覚は、スカイスポーツ・ハンググライディングならではの醍醐味です。
お問い合わせ先
日本ハング・パラグライディング連盟
https://jhf.hangpara.or.jp