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「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。

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日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。

ドイツのスポーツクラブ

(1)大型スポーツクラブ連絡協議会 フライブルク・サークル(Freiburger Kreis)

2017.02.28

ドイツのスポーツクラブ(1)
大型スポーツクラブ連絡協議会 フライブルク・サークル(Freiburger Kreis)

image (Göttingen,Niedersachsen)

ドイツにある法人格をもった約90,240のスポーツクラブは、ドイツオリッピックスポーツ連盟(Deutscher Olympischer Sportbund=DOSB)の傘下に組織化されていることは先般述べた。
ハンブルクの体操クラブ(Hamburger Turnerschaft 1816)は1816年創立である。なんと200年の歴史を誇っている。ドイツには、ドイツ大統領府が、100年以上の歴史を持つスポーツクラブやスポーツ団体を表彰するという制度があり、1984年から現在までに約7,000以上のクラブや団体が表彰されている。
国内のクラブを規模別にみると、会員300人以下が63%、301~800人が21%、801~2,000人が12%、2,000人以上が4%となっている。
これらの地域のスポーツクラブが活動をする場についてであるが、独自のスポーツ施設を持つクラブは、2013/2014年度で45.8%である。言い換えると、半数以上のクラブが学校の体育施設を含めた公共スポーツ施設を利用して活動している。
クラブの運営においては、スポーツ活動の提供、その指導をするコーチの獲得、活動施設の確保、競技会への参加、クラブの催しもの、補助金確保を含めた財政等々、色々な課題がある。ドイツのスポーツクラブは、ボランティアの、つまり、無償でクラブのために活動する人たちによって運営されているが、中には、運営、スポーツ指導、技術・施設管理の部門などで有償の職員がいるクラブもあり、そのようなクラブは全体の約25%にのぼる。

特に大型クラブとなるとその運営は大変である。そして、大型クラブ共通の課題や問題もある。1972年、73年に当時のドイツスポーツ連盟(Deutscher Sportbund=DSB)が、大型クラブ特有のテーマを扱うセミナーを開催した。良い研修会だと好評であったため、参加者から継続が望まれたが、実施には至らなかった。そこで、1974年、23の大型クラブが合同で独自のセミナーの開催を決めた。大型クラブ特有の問題を扱う組織がなかったので、自分たちでやろうと、連絡協議会を立ち上げることになり、最初の立ち上げの地、フライブルク(Freiburg)にちなんで「フライブルク・サークル(Freiburger Kreis)」と命名された。年に2~3回セミナーを開催したり、月刊の情報誌により大型クラブ特有のテーマが扱われたりしている。現在170のクラブが参加し、これらのクラブの会員数合計は約80万人である。

フライブルク・サークルに参加できる条件は以下のとおり:

  1. 公益団体であること
  2. 会員数が2,500人以上いること
  3. 専従の職員を置いていること
  4. 独自のスポーツ施設を保有していること

このうち1~3は絶対条件である。

専従の職員はいるが、クラブの運営はボランティアの委員・指導者・関係者と有償のスタッフで行われ、専門的で革新的な運営が目指されている。ドイツでも最近、有償の専門職員を置く傾向が強くなってきているが、それでも、ドイツのスポーツは、無償で何らかのクラブの運営に携わる人たちによって成り立っていると言える。

  1. クラブ管理の現代化
  2. 会費の見直し
  3. スポーツ振興の改善
  4. 独自のスポーツ施設を持つクラブの財政改善
  5. 実技指導者養成の改善
  6. クラブの社会的活動に対する保険の問題

サークルでは、春季と秋季、年2回のセミナーを定期的に行う。このセミナーの主管は開催地のクラブが受け持つ。自分たちのクラブを例として紹介したり、会員同士の直接の情報交換が大切にされている。近年セミナーで扱われている分野は、スポーツの発展、スポーツ政策、スポーツ管理、スポーツに関連する法律、税法、経営学、教育関係政策、人事問題、クラブなど関係者の指導、コミュニケーションなどである。
また、フライブルク・サークルの目的の一つには子供・青少年の教育・育成があり、フェアプレー、寛容、リスペクトといった価値を青少年に伝えていくことを重要視している。
スポーツは社会の変化や、クラブでスポーツ活動する人たちのニーズに適応しなければならないのである。

将来のクラブ指導者の獲得も重要であるため、ジュニア指導者(26歳まで)対象のセミナーも並行して行われている。

2016年度に開催されたセミナーは以下のとおり:

2016年1月22日 一日セミナー「クラブ法や税法の最新情報」
2016年4月21-23日 春季セミナー「クラブ財政:従来の収入源と新しい収入の可能性」
2016年4月22日 ジュニアセミナー「オンライン・マーケティングに強くなろう」
2016年6月30日 一日セミナー「自己マネジメント」
ジュニア一日セミナー「時間マネジメントと仕事の処理方法」
2016年9月23日 一日セミナー「専門的に運営される事務局」
ジュニア一日セミナー「司会術」
2016年10月13-15日 秋季セミナー「スポーツクラブにおけるコンプライアンスとグッドガバナンス」
2016年10月14日 ジュニアセミナー「クラブ関係者の指導」

連絡協議会であるフライブルク・サークルは、お互いの情報や経験の交換を行う自助組織である。と同時に、前述したように、スポーツは時代・社会の動きに反応しなければならないので、そのスポーツを扱う大型スポーツクラブという視点から、いち早く時代の先を行くよう努める組織でもある。

出典:

Mörfelden-Walldorfによるクラブ助成資料及び2016年11月17日ヒアリング

レポート執筆者

高橋 範子

高橋 範子

Special Advisor, Sasakawa Sports Foundation