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「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。

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2016年リオデジャネイロ大会のレガシー・プラン Vol.2

2016.04.11

2016年リオデジャネイロ大会のレガシー・プラン Vol.2

ブラジル連邦政府、リオデジャネイロ州、リオデジャネイロ市、リオデジャネイロ・オリンピック・パラリンピック組織委員会並びにオリンピック公共局(Autoridade Pública Olímpica=APO)は、2014年4月16日に「2016年オリンピック・パラリンピックの公共政策とレガシー」を発表し、約1年後の2015年4月24日、その内容を更新した。また、2015年7月25日、リオデジャネイロ市は「2016年オリンピック・パラリンピックのレガシー・プラン」を明らかにしている。

これらを総合すると、2016年オリンピックとパラリンピックのモットーは「リオデジャネイロがオリンピックに奉仕するのではなく、オリンピックがリオデジャネイロに奉仕する」。大会が開催都市にもたらすレガシーを強く意識している。

そのメインコンセプトとして、大会を機に建設、改修、整備された公共交通機関やインフラなどによって市民生活をより便利で快適で安全なものとし、大会のために建設、改修、導入されたスポーツ施設や用具を大会後も引き続き国際大会などで活用し、トップアスリートの強化と若手アスリートの強化・育成にも役立てるとともに、これまでスポーツやレジャーを楽しむ機会に恵まれなかった階層にもこれらの施設の一部を開放することを掲げている。

そのための具体的な取り組みとして、リオデジャネイロ市、リオデジャネイロ州、ブラジル連邦政府が民間からの投資も活用しながら計246億400万レアル(約7,135億1,600万円。うち43%は民間から)を用いて27のプロジェクトを行う。その内訳は、市主導が14(費用は全体の58%)、州主導が10(費用は全体の41%)、連邦政府主導が3(費用は全体の1%)である。

その主要プロジェクトを、国際オリンピック委員会が定めるスポーツ、社会、環境、都市、経済の5分野に照らして簡単に紹介する。

(5分野のうち、本Vol.2では、「スポーツ」「社会」「環境」の3分野を取り上げ、次回Vol.3で都市、経済を取り上げる)

スポーツ

※1 交通網と各地区を記載した地図はこちら

(1)競技施設の管理と維持

高いレベルの国際大会を開催することができるよう、オリンピックパーク(西部バーラ地区)、ラディカルパーク(北部デオドロ地区)などの主要競技施設を管理、維持する。

(2)アスリートの強化と育成

施設の一部を用いてトップアスリートを強化すると同時に、将来のトップアスリートを目指す若手アスリートを強化・育成する。

(3)スポーツ専門校の開設

バーラ地区のオリンピック・トレーニングセンターの第3ホール(オリンピックのフェンシングとテコンドー、パラリンピックの柔道の会場)を改修してスポーツ専門校(リオデジャネイロ市立)とし、柔道、卓球、バレーボール、バスケットボールなど10競技のトップアスリートを目指す若手アスリート約850人を鍛錬する。改修費用の額は未公表で、開校予定は2017年中頃。

(4)国立ドーピング研究所に最新機器を導入

2014年8月に設立された国立ドーピング研究所に最新機器を導入する。費用は1億8,800万レアル(約54億5,200万円)。

(5)トレーニング機器の有効利用

大会期間中に各国選手団が使用するために購入したトレーニング機器を、大会後もトップアスリートらが活用する。費用は7,600万レアル(約22億400万円)。

社会

(1)オリンピックパーク内に小学校4校を設立

オリンピックのハンドボール、パラリンピックのゴールボールが行われるオリンピックパーク内の施設を解体し、小学校4校を設立する。費用は3,120万レアル(約9億480万円)で、完成予定は2017年7~9月。

(2)ラディカルパーク(デオドロ地区)跡地を市民に開放

カヌー(スラローム)と自転車(BMX)の会場約50万m2を一般に開放し、地域住民約150万人にスポーツとレジャーを楽しむ機会を提供する。

(3)ゴルフ場をパブリックコースとして市民に開放

大会のため新設したゴルフ場を、大会後の20年間、市がブラジルゴルフ協会に管理を委託し、パブリックコースとして市民に開放する。(ブラジルゴルフ協会によると、詳細は未定ではあるものの、基本的に会員制とせず、使用料を払えば誰でも利用できるようにする考えとのこと)

環境

(1)西部ジャカレパグア地区の洪水対策

河川を埋め立てたり浚渫したりすることによって、この地区で頻発していた洪水への抜本的対策とする。費用は3億6,900万レアル(約107億10万円)で、2015年末に完了する予定。

(2)西部マランガ川の浄化と地域の下水道整備

マランガ川を浄化すると共に、この地域の下水道を整備する。費用は4億3,100万レアル(約124億9,900万円)で、完成予定は今年5月。

(3)北部グランジ・チジュカ地区の洪水対策

5つの地下貯水タンクを設置し、ジョアナ川の流れを変えることで、この地区で頻発していた洪水への抜本的対策とする。費用は5億9,000万レアル(約171億1,000万円)で、今年6月に完了する予定。

(4)グアナバラ湾とロドリゴ・デ・フレイタス湖の浄化

ヨットが行われるグアナラバラ湾、ボートとカヌーが行われるロドリゴ・デ・フレイタス湖で、浮遊するゴミを回収し、17の仕切りを設置して湾内、湖内のゴミの拡散を食い止めるとともに、地域の下水道を整備する。費用は9億2,900万レアル(約269億4,100万円)。

※文中、1レアル=約29円で換算

(次回のVol.3では、残り2つ「都市」「経済」の分野で予定しているレガシーの主要プロジェクトを紹介する)

参考文献

  1. http://www.brasil2016.gov.br/pt-br/legado/plano-de-politicas-publicas
    ブラジル連邦政府の2016年オリンピック・パラリンピック公式サイト
    「2016年オリンピック・パラリンピックの公共政策とレガシー」(改訂版) (2015年4月24日)
  2. http://www.rio.rj.gov.br/web/guest/exibeconteudo?id=5492328
    リオデジャネイロ市公式サイト
    「2016年オリンピック・パラリンピックのレガシー・プラン」(2015年7月25日)

レポート執筆者

沢田 啓明

沢田 啓明

Sports Journalist
Partner Fellow, Sasakawa Sports Foundation