會田 友紀 氏
主な講義内容
花咲徳栄高校食育実践科は、生徒がアスリート向けの食事「アスリートメシ(アスメシ)」を開発して生徒に提供するなど、食育に取り組んでいる。若い世代(高校生)が担い手となる同校の食育を紹介する。
會田 友紀 氏
花咲徳栄高校食育実践科は、生徒がアスリート向けの食事「アスリートメシ(アスメシ)」を開発して生徒に提供するなど、食育に取り組んでいる。若い世代(高校生)が担い手となる同校の食育を紹介する。
運動部活動が盛んで硬式野球部は第99回甲子園大会で優勝(2017年)。レスリング部やボクシング部も全国の強豪として知られる。2019度の生徒数は1,742人(普通科1,523人/ 食育実践科219人)。
食育実践科は調理師養成施設校に指定され、卒業と同時に調理師免許を取得。部活動参加率は80.7%(運動部61.6%、文化部19.1%)。
2014~2016年度の文科省「スーパー食育スクール」指定校。生活習慣アンケート、新体力テスト、骨密度・ヘモグロビンの計測を実施し、食育により体力テストや骨密度・ヘモグロビンの値がどう変化するかを検証した。
2017年度は文科省「つながる食育推進事業」のモデル校となった。4年連続で文科省の食育関連事業を受託したのは花咲徳栄高校のみである。
(1)生活習慣アンケート調査
生徒と保護者を対象に食に関する意識や行動の変化を調査した(生徒63項目/保護者42項目)。
食育指導に関しては「自分の健康を考えるようになった」「家族に感謝するようになった」「マナーを教えてもらえた」などの肯定的意見がある一方で「(食を改善しても)何か変化があるとは思えない」「現状を変えるのは難しい」といった否定的な意見もあった。
(2)新体力テスト
年2回の新体力テストを実施。食育によって体力がどれだけ向上するかを調べた。
テストの評価は上からA~Eの5段階。A~Cに入る人の割合が5%上昇することを目標とし、スタートで85%だったA~C割合は3年で90%まで上昇。学校全体で全国平均を5%上回った。
(3)骨密度・ヘモグロビンの測定
骨密度は平均を100とすると70~160までさまざまな生徒がいた。骨密度は30歳代まで蓄えられるので、高校生期が重要だと考えた。
ヘモグロビンはいわゆるスポーツ貧血の選手たちの対策を目指した。サプリメント頼りではなく、食品から摂取する努力を促した。
(1)アスメシ&スタメシ& CaFe(カフェ)メシ
アスメシはアスリート用に競技力向上が目的の食事。
強化栄養素はタンパク質、カルシウム、鉄分。スタメシ(スタディメシ)は学力向上(記憶力・集中力)を目指し、DHA、レシチン、カルシウム、鉄分を強化。魚をいかにして食べてもらうかを工夫した。
CaFe メシ(カフェメシ)は不足しがちなカルシウム(Ca)、鉄分(Fe)を強化栄養素にしたメニュー。
1食500円で年8回提供。食育実践科の生徒が仕込みから料理、片付けまで担当。アスメシは運動部を中心に好評だが、スタメシがなかなか伸びないのが課題。
(2)学科間連携
食育実践科の生徒が普通科の生徒に食育指導をする。ほかにも地元の小中学校と交流授業を行ったり、本校で園児とピザ作りをしたり、地域とも連携しながら食育を広めている。
高校3年生による食育指導の実践プレゼン
朝食の必要性と高校生期におけるスポーツ貧血の実態と予防法などについて、手作りの視覚教材を使用して紹介した。
5倍。朝食を抜くと体温が上がらず、体内時計が乱れてエネルギー消費力が減少する。
タンパク質+ 糖質。運動後30分以内に摂取するのがポイント。
実際に実習授業後にまとめる実習ノート
高校は中学までの学校給食がなくなり、遠方から通学する生徒も増え、孤食(一人で食べる)、好きなものしか食べないなどの問題が起こりがちだが、高校生期に食を学び実践することでこの問題は解決できる。
家族とのコミュニケーションも増える。食育は効果が出るのに時間がかかるからこそ、生徒・保護者に対して興味・関心を高めることが大切。
課題は約2割の無関心層へのアプローチ。高校生期が食育のキーポイントである。食育推進を途切れさせないように、ライフステージに応じた間断なき食育推進を今後も継続して行う。
そのためには、高校生期に知識を得て、保護者主体の「食」から自立すること。
食育を通じて、多くの人とつながるので、関係者全体がトータルウィンになることを目指している。
(講師)運動部生徒とそうでない生徒とで、データ上は顕著な差は出ていない。部活動ごとの指導で成果が見られるかもしれない。
(講師)夕食に影響がない程度のおにぎりが一番。空腹の時間を作らないことが大事。おにぎりは安くて手軽。炊飯器を買って自分たちで作っている部もある。