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国際情報
International information

「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。

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日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。

スポーツアカデミー2019 第5回

女性の美とスポーツ「キレイはカラダでつくられる」
~資生堂S/PARK Studioの取り組み~

第5回スポーツアカデミーイメージ画像
講師
白土 真紀 氏(資生堂グローバルイノベーションセンター 主任研究員)
会場
笹川スポーツ財団(SSF)会議室

主な講義内容

資生堂は2019年4月、新研究開発拠点「資生堂グローバルイノベーションセンター(呼称「S/PARK エスパーク」)をオープンした。その1階にあり、アクティブビューティーをコンセプトとした「S/PARK Studio」の取り組みについて紹介する。

1.資生堂グローバルイノベーションセンター

2019年4月、横浜のみなとみらいにオープンした資生堂の新しいタイプの研究施設。都市型オープンラボとして、お取引先さまや国内外の外部研究機関とのコラボレーションを行う他、建物の1階と2階にあるコミュニケーションエリアでは、お客さまと研究員の交流を深めることで「多様な知と人の融合」を実現し、これまでにない価値を生み出すことを目指している。

コミュニケーションエリアでは、様々なコンテンツを提供している。美味しくて健康的な食事を提供する「S/PARK Cafe」、研究員がお客さまにカウンセリングをして、その人に合った商品を購入できたり、さまざまな化粧体験ができる「S/PARK BeautyBar」、研究所ならではの最先端技術を知ることができる体験型ミュージアム「S/PARK Museum」、オリジナルの運動プログラムを通じてさまざまなエクササイズを行ったり、長距離の実業団チームのOGがランニング指導する「S/PARK Studio」などがそろう。

2.S/PARK Studio

(1)アクティブビューティー
アクティブビューティーの研究は、「生き生きときれいな人」とはどういう人なのかという、研究員同志のブレインストーミングからスタートした。その後、お客さま調査等も加え、筋肉がしっかりしていて健康的な体、 心の状態が前向きで、静止像としてきれいなだけでなく、姿勢や動作までが美しいことをアクティブビューティーと結論付けた。
動作の美しさを科学的に裏付けるため、有識者やアスリート、茶道の先生などにインタビューを行い、歩く動作がすべての動作の基本という結論に至った。実際に歩く姿がきれいかを評価し、体重、体脂肪率、筋肉量など体の状態と質問紙を用いて心の状態を調べた。その結果、美しく歩ける人は体と心の状態も充実していることが分かった。逆に普段あまり運動をしていない人が、きれいに歩けるように練習をすると、体と心の状態も良くなっていくことも分かった。よくスポーツで使われる心技体の技の大切さを科学的に証明することができた。

S/PARK Studio 内観1

S/PARK Studio 内観1

S/PARK Studio 内観2

S/PARK Studio 内観2

(2)モーションビューティーメソッド
モーションビューティーメソッドのプログラムを試作して試験を重ねた。協力者に週1回のレッスンを受けてもらい、宿題も出し、1カ月間集中的にプログラムを行った。実験を重ねた結果、骨格筋の数値が上がった、体脂肪率が減った、という具体的な効果が表れた。
また、アンケート調査によると、体の動きが軽くなったと感じた人が90% 超、気持ちが前向きになった人が85%、美しくなったと感じた人が70% 弱、という結果が出た。現在提供しているプログラムは75分の内容。1回のプログラム効果を実感してもらえるような内容を心掛けている。

3.女性がスポーツを続けるためのコツ

(1)美しさにつながるという意味づけ
美しくなりたいという気持ちは男性より女性のほうが強い。スポーツをする際、「健康になる」だけでなく、「美しさにつながる」と考えられるとモチベーションがグッと上がる。女性が化粧をすることによって元気になるというエビデンスもある。

(2)オプションをつける
女性は欲張りでいろいろ楽しみたいと思う人が多い。体を動かすだけでなく、良い香りがする、素敵な音楽が流れる、照明を工夫するなど、五感を刺激したレッスンにする。

(3)効果が実感できる
女性に限らず運動を継続していく上で大事なポイント。1回の運動でもその前後で「体が軽くなった」などの効果を感じることができるとモチベーションを維持できる。家でも気軽にできる、普段着でもできるような工夫も必要。

(4)ライフステージに合わせる
女性は結婚や出産、子育てなどライフステージの変化によって自分に使える時間が限られるため、こうしたライフステージに配慮する。

(5)コミュニティーを作る
一人だと継続しにくいので、一緒に運動を楽しめる仲間、コミュニティーが作れる環境を用意する。

ディスカッション:主なやりとり

Q.(フロア) スポーツクラブに通っている女性は50歳以上が多い。20代、30代の女性に運動をしてもらえるような取り組みをしているのか。
A.

(講師)どこのスポーツクラブでも若い年代をどう取り込むかが課題になっている。「健康になります」、「やせます」だけでは、今の若い人は「じゃあ運動をしよう」ということにならない。運動は継続して効果が出るものなので、効果が出る前に飽きてやめてしまう人もいる。継続は理想だが、1回のレッスンでも感じられる効果をアピールすることも大事。すごく気持ちがよくなるとか、肩が楽になるとか、何らかの効果はあるはず。第三者が「顔色がよくなったね」など、声をかけて効果を教えてあげることも大事だ。SNS を上手に使ってアピールしていくことも一つの戦略だと考えている。
化粧品会社の資生堂が運動に取り組んでいることで、若い女性が運動に興味を持つきっかけになってくれたとしたらうれしい。

白土 真紀 氏