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「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。

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日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。

スポーツアカデミー2018 第1回

「大学スポーツはどう変わるか? ~日本版NCAAへの期待~」

江戸川大学 社会学部経営社会学科教授 小林 至 氏

江戸川大学 社会学部経営社会学科教授 小林 至 氏

2018年度第1回スポーツアカデミーが8月16日に開かれました。
今回は江戸川大学 社会学部経営社会学科教授の小林 至 氏にご講義いただきました。

【当日の概要報告】

※以下の報告は、別掲の当日資料と合わせてご覧ください。

主な講義内容

スポーツ庁では、大学スポーツの課題解決と価値向上を目的に、アメリカのNCAA(全米大学体育協会)のような、大学横断的・競技横断的統括組織の設置を目指している。アメリカのNCAAの現状も踏まえ、日本の大学スポーツにおける課題、日本版NCAAの創設意義を考える。

  1. 日本版NCAAとは
    日本版NCAAとは大学スポーツ振興のための業界団体で、運動部員(ステューデント・アスリート=SA)、指導者、所属大学、大学競技連盟などで構成される。さまざまな課題に対して共同で取り組むプラットフォームであり、ガバナンスやコンプライアンスの順守、帰属意識の向上、コミュニティーづくり、ひいては大学そのものの発展に寄与することを目指す。
  2. アメリカのNCAAとは
    大学対抗アメリカンフットボールで事故が多発したことを受けて1906年に創設。Academics(学業との両立)、Well-being(安全と健康)、Fairness(公正)という3つの理念を掲げている。現在は1123の大学が加盟し、SAは46万人、専任スタッフが500人。1000億円超の興行収入があり、加盟するSAの練習用具、遠征費用などはNCAAが負担。3つのディビジョンのうち、よりレベルの高いディビジョン1、2のSAは1日3食が保証されている。一方で取得単位が足りないなど、学業をおろそかにすると出場停止などの処分がくだされる。
  3. 日本版NCAA導入の過程
    2016年4月に「大学スポーツの振興に関する検討会議」が立ち上がり、17年9月から「日本版NCAA創設に向けた学産官連携協議会」がスタート。18年7月に「日本版NCAA設立準備委員会」が発足し、19年2月の創設を目指している。協議しているテーマは「学業充実」「安全安心・医科学」「事業・マーケティング」の3つ。
  4. 大学スポーツの可能性
    スポーツを通してスポーツマンシップを学び、目標に向かって努力する姿勢を養うなど、人格が形成され、優秀な人材を社会に輩出することができる。 スポーツが共通言語となり、大学の魅力を発信しやすく、ブランド価値の向上に貢献できる。また、スポーツが学内や卒業生、地域といったコミュニティーを作り出す核になる可能性を秘める。
  5. 大学スポーツの課題
    これまでの大学スポーツは学生による自主的な課外活動という位置づけで、指導者もOBがボランティアで行うケースが多く、大学の関与は限定的だった。こうした運営をしてきた結果、近年は事故や負傷の対応、不祥事が起きたときの責任、会計、指導者や活動資金の確保、SAの学力不足といった問題が浮かび上がっている。個別の大学や競技団体で素晴らしい取り組みをしている事例はあるが、それが共有されていないことも課題といえる。
  6. スポーツ局の設置
    大学内に学長直轄のスポーツ局を設置し、学内の運動部を統括する。日本版NCAAの規則を運用し、資金集めや指導者の確保なども行う。日本版NCAA設立準備委員会では、15大学をモデル校に選定。将来的には100大学でスポーツ局の設置を目標としている。

質疑応答

Q.(フロア)日本版NCAAの理想は素晴らしいが、具体的な財政基盤や人的な補償はどうするのか。独自の財源を構築するまでに時間がかかるのではないか。
A.

(講師)絶対に儲けられるのはデータベース・マーケティングだ。ステューデント・アスリート(SA)が日本に20万人いて、そのうち半分が日本版NCAAに加盟すると10万人。属性がこれだけはっきりしてる人たちのデータがあり、そのデータにアクセスできる、という権利は大きなお金を生み出す。

たとえばSAに会員証を発行し、会員証にクレジットカードの機能を持たせ、銀行口座も作ってもらう。そうすると一人当たり年間で5万円から10万円くらいの価値は十分にある。計算すると10万円×10万人で100億円。計算通りにいくわけではないが、大きな価値を生み出すのは間違いない。こうした仕組みを機能させるためには、行政の協力が必要だし、各大学がいかにコミットしてくれるかがポイントになる。

Q.(フロア)大学に日本版NCAAを作るなら、高体連とか中体連とか下の世代の組織につながるような、何か社会的な取り組みをしていくべきではないだろうか。
A.

(講師)そこはとても意義深いところ。大学スポーツが変わると高校スポーツは絶対に変わる。(たとえば一定の学力がなければ試合に出られないなどの)制度ができれば、小学校から学業をおろそかにしてスポーツだけに打ち込んできた、という人たちは通用しなくなるだろう。大学を卒業して社会に出たときに、社会常識や人間的な深みを身に着けなくてはならない、というメッセージを学生に発信できるようになり、とても大きな効果が生むのではないかと思う