2017年度第8回スポーツアカデミーが3月9日に開かれました。
今回は国士舘大学体育学部の田原 淳子 氏にご講義いただきました。
【当日の概要報告】
※以下の報告は、別掲の当日資料と合わせてご覧ください。
2017年度第8回スポーツアカデミーが3月9日に開かれました。
今回は国士舘大学体育学部の田原 淳子 氏にご講義いただきました。
※以下の報告は、別掲の当日資料と合わせてご覧ください。
田原 淳子 氏
オリンピックを創設したクーベルタンの意図から、国際オリンピック委員会(IOC)による最新のムーブメントまでを知り、オリンピックの理念やその価値を考える。
近代オリンピックの創始者、ピエール・ド・クーベルタンは教育の力によって母国フランスを戦争の痛手から立ち直らせようと考えた。
近代オリンピックのモデルとなった古代オリンピックは紀元前776年にギリシャではじまり、4年に1回のペースで休むことなく1200年続いた。この間は戦争をしていても休戦し、戦士が選手となり、敵国の選手とも友情を育んだ。近代オリンピックが「平和の祭典」と呼ばれるのは、古代オリンピックの精神を生かしているからだ。
また、クーベルタンはイギリスのパブリックスクールを視察した際、スポーツが広く人格形成・教育に役立てられていること、相互敬愛を促すことを知り、これを近代オリンピックの精神として取り入れた。
こうしてクーベルタンは、スポーツを通じて心身ともに調和のとれた若者を育成すること、異なる国や地域の人と交流することで、互いを尊重し、偏見をなくすこと、スポーツを通じて世界平和を構築すること─をオリンピズム(オリンピックの理念)とした。
IOCはオリンピズムを人々に理解してもらうために、クーベルタンの発案でさまざまなシンボルや標語をつくった。
オリンピックのシンボルである五輪マークは、五輪旗の背景となる白色を加えた6色を使えば世界のほとんどの国旗を描けることから「世界は一つ」という意味が込められている。
モットーの「より速く、より高く、より強く」は他人との比較ではなく、自分自身が日々向上することを意味している。
オリンピックの理想を示す言葉「参加することに意義がある」は、大事なのは結果よりも過程であるという意味で、結果はどうあれベストを尽くすことの大切さを述べている。
オリンピック憲章はオリンピックの憲法であり、1908年から存在し改定を重ねている。IOCの使命と役割という条項には、IOCはスポーツを通じた教育、フェアプレー、ドーピングの撲滅などを目指すとし、競技大会の開催以外にも数多くの使命と役割が明記されている。
オリンピズムを具現化していくのがオリンピック・ムーブメントであり、競技大会はムーブメントの中の一つに位置づけられる。
オリンピック・レガシーとは、オリンピックの開催を通じて、素晴らしい遺産を後世に遺すという考え方で、具体的には共生社会の実現、都市の整備、スポーツ人口の増加、自然環境の改善など。近年のオリンピックは、開催都市の財政負担、不正の横行など負の遺産が目立つようになり、レガシーの重要性が強調されるようになったという背景がある。
オリンピアン(オリンピックに参加した人)の情報発信力、社会に与える影響力は絶大なものがある。クーベルタンはオリンピアンに優れたロールモデル(人々のお手本)になることを求めた。IOCは教育・文化・スポーツを通じた開発と平和に貢献した人物に与える五輪栄誉賞を創設、2016年のリオデジャネイロ大会から表彰を始めた。
IOCがオリンピック・ムーブメントの未来に向けて作成した戦略的な工程表で、40の提言がなされている。この中で強調されたことの一つが「多様性」である。競技種目の多様化、多様なスポーツ競技大会との連携、国連をはじめとしたスポーツ以外の組織との連携などを目標に掲げ、競技だけではない多様な身体文化の発展に力を注ぐ決意を表明した。
(講師)ドーピング違反をゼロにするとIOCはずっと言い続けており、宣言に応じた対策を講じるべきと考える。先日の平昌大会を見て、一番課題に感じたのは競技時間の問題。夜の10時に開始するという競技もあり、アスリートへの配慮が欠けていると感じた。そうした点(アスリートの競技環境の向上)こそIOCが注力すべき部分だと考える。