2016年度の第8回スポーツアカデミーが3月22日に開催されました。
今回は笹川スポーツ財団の藤岡 成美 研究員と山田 大輔 研究員が講師を務めました。
【当日の概要報告】
「スポーツ少年団現況調査の報告 -日本スポーツ少年団登録データの分析(2002年~2014年)-」
笹川スポーツ財団スポーツ政策研究所 研究員 藤岡 成美
※以下の報告は、『当日資料1(PDF)』と合わせてご覧ください。
2016年度の第8回スポーツアカデミーが3月22日に開催されました。
今回は笹川スポーツ財団の藤岡 成美 研究員と山田 大輔 研究員が講師を務めました。
※以下の報告は、『当日資料1(PDF)』と合わせてご覧ください。
笹川スポーツ財団 スポーツ政策研究所 研究員 藤岡 成美
2015年、日本体育協会日本スポーツ少年団と笹川スポーツ財団(SSF)は、子どもの地域スポーツの基盤強化とスポーツ少年団活動の活性化を図るための方策を検討することを念頭に、日本最大の青少年スポーツ団体である「スポーツ少年団」の状況について、団員数や団数などの基礎的データ(2002~2014年)を詳細に分析した。
同調査結果の概要を解説するとともに、結果から考察した今後の展望について、まとめとして報告する。
日本体育協会が保有するスポーツ少年団登録データ(2002年~2014年)を用いて、2002年を100%とした場合の団員数・団数の増減率を算出し、都道府県別、競技・種目別に分析。また、少子化との関連を検討するため、学校基本調査(2014)の小学生人口および小学校数との比較を行った。
(1)都道府県別 小学生人口と団員数の推移
2002年を100%とした場合、2014年の全国の団員数は741,797人(79.4%)まで減少。2014年の小学生人口は6,600,006人(91.2%)と、小学生人口を上回って団員数が減少している。都道府県別にみた場合も、各都道府県の小学生人口よりも団員数の増減率の方が低い都道府県が多い(33都道府県)。
(2)都道府県別 小学校数と団数の推移
2002年を100%とした場合、2014年の全国の団数は34,036団(97.2%)とわずかな減少にとどまり、2014年の小学校数20,852校(87.6%)よりも減少していない。都道府県別にみた場合も、各都道府県の小学校数よりも団数の増減率の方が高い都道府県が多い(36都道府県)。一方で、2002年から2014年にかけて、全ての都道府県で1団あたりの平均団員数は減少していた。
(3)都道府県×競技・種目別 団員数の推移
団員数が多いサッカー(89.9%)、軟式野球(79.8%)、バスケットボール(93.9%)、バレーボール(90.3%)は、2002年の団員数の約8~9割で推移。一方で、剣道(63.8%)のように2002年の6割近くまで減少した競技・種目があれば、陸上競技(136.8%)のように大幅に増加したものもあった。これらの競技・種目について都道府県別にみると、競技・種目全体としては団員数が減少したものの都道府県単位では増加したケース、さらに1都道府県内でも競技・種目によって増減傾向が異なるケースがみられた。
都道府県や競技・種目別で団員数の増減傾向が異なることから、改めて多様なスポーツ少年団の実態が確認された。増減率が特徴的な都道府県や競技・種目は一部ヒアリングを試みたものの、団員数が大きく増加(または減少)している実態を詳細に把握している人は限定されていた。
このような中で、1団あたりの規模の縮小は少子化の影響でさらに進む可能性があり、地域での子どものスポーツ活動の場が失われていくリスクがある。今後、子どものスポーツに関する適切な施策・事業が行われるべく、都道府県や市区町村レベルで子どものスポーツ活動全体の状況を把握する体制整備が必要である。
笹川スポーツ財団 スポーツ政策研究所 研究員 山田 大輔
※以下の報告は、『当日資料2(PDF)』と合わせてご覧ください。
2016年6月、スポーツ庁の鈴木大地長官により「第2期スポーツ基本計画」の策定がスポーツ審議会に諮問され、先般(3月1日)、答申が出された。また、2020年東京オリンピック・パラリンピックをはじめとする複数のメガスポーツイベントの開催も数年後に迫っており、これを好機としてスポーツを通じてさまざまな社会課題の解決を図ろうとする機運も盛り上がっている。
こうした中、笹川スポーツ財団は、スポーツ振興の担い手として、中長期にわたり国民のスポーツ環境が豊かになり、「スポーツ・フォー・エブリワン」社会が実現されるためにはどのような施策が必要なのかを検討し、4つのテーマ(「地域スポーツ」「子どものスポーツ」「スポーツの場」「障害者スポーツ」)における政策提言を「政策提言2017」として策定した。
本日はその中から、「子どものスポーツ」の提言内容を説明する。
子どものスポーツ活動の実施頻度(体育や運動会等の学校行事を除く)は、学年・学校期が進むにつれて、非実施群(0回/年)と低頻度群(年1回以上週3回未満)の割合が高まる。また、スポーツに対する態度や興味関心の度合いについて、スポーツ実施頻度と同様に学校期が進むにつれて、スポーツが「好き」と回答する子どもの割合が減り、「嫌い」と答える子どもの割合が増える。
(1)子どものスポーツの現状を市区町村単位で詳細に把握する
子どものスポーツ参加機会の充実に向けて、子ども、家庭、幼児教育・保育、学校教育、地域スポーツ、行政(市区町村・都道府県)に関する情報を目的に応じて集約し、市区町村レベルで子どものスポーツの現状を明らかにする必要がある。
(2)子どものスポーツライフを豊かにする新たな観点の創出と一体的な施策展開
地域に散在する複数の情報を整理し、さらに既存の情報と組み合わせて考えることによって、子どものスポーツライフを豊かにする新たな観点が創出される。その上で、家庭での余暇活動の充実、幼児期からのスポーツ活動の充実、学校体育・部活動の活性化、地域スポーツの活性化を柱とする一体的な取り組みが必要となる。
子どものスポーツを含む地域スポーツの現状と課題を明らかにするため、行政が独自に調査を行った事例。丸亀市では、国が実施する全国調査とあわせて、独自の調査内容に基づき地域課題の抽出・分析を行い、施策を展開している。
子どもたち一人ひとりの心身の健康とスポーツライフの豊かさや充実度を示す新たな観点や指標に基づくきめ細かな施策が求められる。すべての子どもがスポーツの価値を体感し、将来にわたってそれぞれが望むかたちでスポーツに親しむことができる社会の創出が望まれる。